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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ10097損害賠償請求控訴事件 判例 意匠
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平成17行ケ10135審決取消(意匠)請求事件 判例 意匠
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平成22行コ10004異議申立棄却決定取消請求控訴事件 判例 意匠
関連ワード 実施権の設定 /  許諾による実施 /  物品 /  意匠に係る物品 /  権利能力 /  一意匠一出願(7条) /  部品 /  本意匠 /  登録意匠 /  通常実施権 /  商標権 /  権利濫用(権利の濫用) /  契約の解除 / 
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事件 平成 13年 (ネ) 1307号 商標権等移転登録請求控訴事件
控訴人 有限会社小沢工業
訴訟代理人弁護士 田中平八
被控訴人 Y
訴訟代理人弁護士 加藤貞晴
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2002/01/31
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
事実及び理由
当事者の求めた裁判
1 控訴人 主文同旨 2 被控訴人 控訴人の控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事案の概要
本件は,控訴人が,株式会社ダイモン(以下「ダイモン」という。)から別紙意匠権等目録記載の意匠権及び商標権(以下,それぞれ「本件意匠権」,「本件商標権」といい,まとめて「本件意匠権等」という。)を後述の「株式会社ダイモン被害者の会」(以下「ダイモン被害者の会」という。)の代表者(代表幹事)として同会のために信託的に譲り受け,控訴人名義でその移転登録手続きを受けた後,被控訴人が,同会の代表幹事となって本件意匠権等についての信託的譲受人の地位を引き継いだ,として,被控訴人が,控訴人に対し,本件意匠権等の移転登録手続を求めた事案である。
1 前提となる事実(争いがない。) (1) ダイモンは,本件意匠権等を有していた。
(2) ダイモンは,本件意匠権の実施品である組立て屋根に本件商標権に係る登録商標を付して販売し(以下,この商品を「本件商品」という。),多数の業者との間で,本件商品について販売代理店契約を締結し,契約金を受領していた。しかし,ダイモンは,平成8年10月,銀行取引停止処分を受けて事実上倒産した。
(3) ダイモンに契約金を支払ったまま本件商品の供給を受けられなくなった上記業者らの一部は,平成8年11月,ダイモンに対する支払済みの契約金の回収,あるいは,クレジット契約により契約金を支払った者についてはクレジット会社に対するクレジット代金の支払停止等,及び,本件商品の安定供給等の実現を図って,ダイモン被害者の会を結成し,控訴人がその代表幹事となった。
(4) ダイモン被害者の会の結成のころ,既に,本件意匠権等は,東京国税局から差押えを受けており,また,複数の者が本件意匠権等につきダイモンから通常実施権の設定を受けていたので,本件商品を安定供給していくためには,ダイモン被害者の会あるいはそれに関係する誰かが,本件意匠権等をダイモンから譲り受け,上記差押えを解除し,上記通常実施権者との問題も解決することが,前提として必要な状況であった。
(5) 控訴人は,ダイモンとの間で,平成9年6月9日付けで,控訴人がダイモンから本件意匠権等を譲り受ける旨の契約書を作成した(以下同契約書による契約を「本件契約」という。)。そして,控訴人は,本件意匠権等についてダイモンからの移転登録の手続きを経て,本件意匠権等の登録名義人となった。
(6) 控訴人は,平成11年2月19日,ダイモン被害者の会の代表幹事を辞任した。
2 争点 (1) 控訴人がダイモンから本件意匠権等をダイモン被害者の会のために信託的に譲り受けたか。
(2) 被控訴人は,控訴人に対し,信託法50条1項の適用若しくは類推適用により,本件意匠権等の移転登録を請求できるか。
3 争点に関する当事者の主張の要点 【争点(1)について】 (1) 被控訴人の主張 (ア) 控訴人は,ダイモン被害者の会の代表幹事であったことから,本件商品を同会の会員に継続的に供給するという目的の下に,本件契約により,ダイモンから,同会ないしはその構成員全員から委託を受けた者の立場において,信託的に本件意匠権等を譲り受けたものである。
(イ) 控訴人は,本件意匠権等の譲受けについては,ダイモン被害者の会の名前ではその登録ができないため,信託的に控訴人名義で移転登録手続きをなしただけである。ダイモン被害者の会の会員は,A弁護士(以下「A弁護士」という。)に本件意匠権等の譲受けの件を委任しており,控訴人代表者は,本件意匠権等の上記信託的譲受けについては,A弁護士の承認を得ているから,同信託的譲受けについては,ダイモン被害者の会の個々の会員から黙示の授権があったということができる。ダイモン被害者の会は,本件契約締結後に,同会の会員に対し,本件意匠権等を「当方にて確保済みです。」と報告しており,同会と控訴人との間に信託関係が成立していることは,このことからも明らかである。
(ウ) 控訴人代表者は,平成11年2月19日付けの確認書(甲17)で,本件意匠権等がダイモン被害者の会に帰属することを認めている。
(エ) 控訴人は,控訴人が本件意匠権等を信託的に譲り受けたといえるためには,ダイモン被害者の会が本件意匠権等を譲り受けて,これを控訴人に対し信託的に譲渡しなければならないと主張する。しかし,ダイモン被害者の会又はその会員が本件意匠権等をダイモンからいったん譲り受けたことが,控訴人がダイモン被害者の会から信託的に本件意匠権等を譲り受けることの,必須の前提となるわけではない。被控訴人が主張しているのは,控訴人が,ダイモン被害者の会に本件商品を安定供給するという目的の下に,同会の意向を受けて譲り受けたとの趣旨であり,ダイモン被害者の会と控訴人との間で本件意匠権等についての信託関係が成立するには,これで十分であるというべきである。
(2) 控訴人の主張 本件において,被控訴人が主張する本件意匠権等の信託的譲渡が成立するためには,ダイモン被害者の会がダイモンから本件意匠権等を譲り受け,同時にこれを控訴人に信託する行為が必要である。しかし,次に述べるとおり,本件契約によりダイモンから本件意匠権等を譲り受けた者は,控訴人であり,ダイモン被害者の会がダイモンから本件契約の条件で本件意匠権等を譲り受けたということはあり得ないことである。上記譲渡が信託的なものであることはあり得ない。
(ア) 控訴人は,自ら本件意匠権等の取得費用を負担し,また,それを維持管理するために多額の支出をしている。被控訴人が主張するような信託関係が存在するのであれば,控訴人とダイモン被害者の会又はその会員との間で,控訴人が支出した本件意匠権等の取得費用,移転登録費用等についての弁済の約束がなされる必要があるにもかかわらず,このような合意は全く存在しない。ダイモン被害者の会の内部において,本件意匠権等の取得費用,移転登録費用の支払について会員に対し通知がなされたり,協議がなされたりしたこともない。同会にはその資金もない。
(イ) 被控訴人主張の信託関係が成立するためには,ダイモン被害者の会が,控訴人に対し,同会の会員への本件商品の安定供給という信託目的のために,本件意匠権等を信託譲渡したとの事実がなければならない。しかし,そのような事実は存在しない。控訴人は,本件契約において,ダイモン被害者の会の会員のみならず,同会員以外のダイモンの代理店や一般の顧客に対しても均等の販売条件で本件商品を販売することを約束し,これを条件として,ダイモンから本件意匠権等を譲り受けたものである。
(ウ) ダイモン被害者の会の目的は,@ダイモンのB社長ら全役員に対する民事上,刑事上の責任追及,Aダイモンとの代理店契約により支払った契約金の返還請求と,同契約金をクレジット契約により支払った者については,クレジット会社に対するクレジット代金の支払いの停止ないしその減額交渉,B同会の会員に対する商品供給の再開である。ダイモン被害者の会がこのようなものである以上,その会員が,ダイモン倒産により被害を受けた上,更に費用を支出して本件意匠権等を取得しようとするというようなことはあり得ない。また,本件契約には,本件意匠権等の権利に瑕疵があっても,譲受人は,契約の解除や代金減額請求をなし得ないとか,本件意匠権等の譲渡について,第三者から債権者取消の訴えが提起されてもすべて譲受人の責任で解決するとかという,不利益な特約が付されているが,ダイモン被害者の会がこのような不利益な特約が付されている本件契約を締結することはあり得ない。さらに,権利能力なき社団の実体がないダイモン被害者の会の役員が,ダイモン被害者の会の構成員全員からこのような不利益な条件で本件契約を締結する代理権を取得していたなどということもあり得ず,現に,同会の役員が,本件契約の具体的な内容や条件などを同会の構成員に連絡したということもないのである。ダイモン被害者の会は,本件契約締結後の平成9年12月26日付けの会員に対する報告書においても,ダイモンの役員に対する民事上,刑事上の責任を追及することを確認している。これは,ダイモン被害者の会が本件意匠権等を上記のような不利益な条件で譲り受けることとは到底相容れない事実である。
(エ) 被控訴人らダイモン被害者の会の現役員は,本件意匠権等がダイモン被害者の会に帰属すると主張しているものの,その会員に対して,控訴人が本件意匠権等を信託的に取得した経緯,控訴人がその取得費等を支払った経緯,控訴人から被控訴人が本件意匠権等を取得した経緯等について通知や連絡をしてはいない。平成8年10月にダイモンが倒産して以来4年半以上が経過しており,ダイモン被害者の会は,現在,既に事実上消滅している。
(オ) 本件意匠権等が信託財産であるとすると,必ずその信託の登録をしていたはずである。しかし,そのような登録はされていない。
【争点2について】 (1) 被控訴人の主張 (ア) 控訴人は,平成11年2月19日,ダイモン被害者の会の代表幹事を辞任し,被控訴人が同会の代表幹事となった。これに伴い,被控訴人は,信託法50条1項の規定の適用若しくは類推適用又は同項の趣旨により,本件意匠権等の受託者の地位を引き継いだ。そうである以上,控訴人は,被控訴人への本件意匠権等の移転登録の手続をすべきである。
(イ) 予備的主張(同時履行の抗弁)について 本件意匠権等の取得等に要した費用の精算時期,方法は,関係者の意思を合理的に探求して決めるべきである。すなわち,上記費用は,本件意匠権等の実施許諾による実施料を原資に長期的に補填していくというのが関係当事者の意思であったとみるべきである。
(2) 控訴人の主張 (ア) 被控訴人は,ダイモン被害者の会の会員総会で選任された者ではないから,同会を代表する権限を有していない。
(イ) 予備的主張(同時履行の抗弁) 仮に,本件意匠権等がダイモン被害者の会又は同会の構成員全員に帰属し,かつ,被控訴人がダイモン被害者の会を代表する権限を有しているとすれば,被控訴人は,控訴人に対し,本件意匠権等の移転登録手続と引き換えに,控訴人が支払った本件意匠権等の取得費用153万4200円,同移転登録手続費用41万1075円,ダイモン被害者の会のために負担した諸費用小計362万3553円の合計556万8828円を支払うべきである。控訴人は,被控訴人が上記金員を支払うまで,本件意匠権等の移転登録手続の履行を拒絶する。
(ウ) 権利の濫用 ダイモン被害者の会又は同会の会員は,控訴人に対し本件意匠権等の取得費用,移転登録費用を一切支払っていないこと,ダイモン被害者の会の会員から本件商品の注文がほとんどないこと,本件意匠権等の実施料などから本件意匠権等の取得代金等を回収できる可能性が全くないことなどからすれば,本件意匠権等の取得について1円の支出もしていない被控訴人が控訴人に対しなしている本訴請求は,権利の濫用に当たるものというべきである。
当裁判所の判断
1 争点1(信託関係の成否)について (1) 前記前提となる事実,並びに,証拠(乙31及び控訴人代表者並びに後記括弧内記載の各証拠)によれば,次の事実が認められる。
(ア) ダイモンは,平成8年10月に事実上倒産した。ダイモン倒産当時,ダイモンと本件商品について代理店契約を締結し,既に契約金を支払っていた業者が多数存在していた。これらの業者にとっては,ダイモンに支払った契約金の回収,あるいは,クレジット契約によりこれを支払った業者については,クレジット会社に対するクレジット債務の支払停止あるいはその減額,及び,本件商品の安定した供給の各実現を図ることが大きな問題となった。このような状況の中で,ダイモン被害者の会の集会が平成8年11月6日に開催され,多数の被害者が参加したその集会において,控訴人と被控訴人を含む6名の幹事と事務局担当幹事1名,会計係1名が選任され,代表幹事として,控訴人が選任された。また,ダイモン被害者の会の目的として,前記の代理店契約によりダイモンに支払った契約金の回収,クレジット債務の支払停止あるいはその減額,及び,本件商品の安定した供給の各実現を図ること,並びに,ダイモンの代表者等の役員に対する民事・刑事上の責任の追及をすることが決定され,また,これらをA弁護士に委任することと,被害者の会に加入する者は会費として1人3万円を支払うこと等が決定された。(甲3,甲20,乙1) (イ) A弁護士は,ダイモン被害者の会に委任されて,ダイモンから委任されたC弁護士と,本件意匠権等の譲り受けについても交渉をしたものの,ダイモン被害者の会が,ダイモンの代表者B(以下「B」という。)について民事・刑事上の個人責任を追及する方針であり,平成8年12月2日にはダイモン(代表者B)に対して通告書を送付し,また,平成9年1月には代理店契約締結後に倒産したダイモンには詐欺的行為があったとして,ダイモンの役員であるBらに対し集団訴訟を提起することを,同年3月にはダイモンの代表者のBを刑事告訴することを,それぞれA弁護士と相談していたこともあって,同年5月になっても,本件意匠権等の譲渡交渉は進展しなかった。(甲24,乙17ないし乙20) (ウ) Bは,ダイモン被害者の会がBらの個人責任を追及する方針であったことから,同会に対して本件意匠権等を譲渡する意思はなかったものの,控訴人に対してであれば,これを譲渡する可能性があったため,その後,Bと控訴人の代表者のD(以下「D」という。)とが譲渡のための交渉を数回行った。
(エ) ダイモンの代表者のBと控訴人の代表者のDは,平成9年6月9日,ダイモンが本件意匠権等を控訴人に譲渡するとの本件契約を締結した。その際,本件意匠権等の譲渡金額については,本件意匠権等について国税滞納による差押えがなされていたため,その差押えを解除するために国税として支払うべき金額とすることが合意された。E弁理士は,平成9年6月17日,国税庁の定める算定方式により本件意匠権等を153万4200円と算定評価した。東京国税局は,同金額の支払を受けることで本件意匠権等の差押えの登録を抹消することに同意したため,控訴人は,その後,東京国税局に対し同額をダイモンの代理人として支払い,差押えの登録の抹消を受け,本件意匠権等のダイモンからの移転登録手続も完了した。ダイモンの代表者のBは,平成9年6月27日,本件意匠権等の譲渡代金153万4200円を受領したとの領収証を控訴人代表者に交付し,その際,ダイモン被害者の会との関係を考慮して,領収証の宛先の「(有)小沢工業」と記載した部分の右上に「(被害者の会代表)」との文言を追記した。(甲1,甲2,甲11,乙2の1・2,乙11,乙21,乙30) ダイモンは,本件契約により,控訴人に対し,本件意匠権等を上記金額で譲渡するに当たり,@控訴人は,本件意匠権等に瑕疵があっても,本件契約の解除や代金減額の請求をしないこと,A控訴人は,ダイモンと取り引きしていた代理店の要望があれば,本件商品を生産し供給すること,B控訴人への本件意匠権等の譲渡について,控訴人が第三者から訴訟を起こされても,控訴人の責任において解決し,ダイモンに対し迷惑をかけないことを,特約として付することを要求し,控訴人はこれを了承した。(甲10,11) (オ) 控訴人が上記のような条件で本件意匠権等を譲り受けるに際し,ダイモン被害者の会においては,その幹事会として控訴人との間で何らかの話合いをしたり,上記譲受けを了承したりしたことはなく,本件意匠権等の上記譲渡代金をダイモン被害者の会が将来において負担するなどということも,本件契約締結当時全く話題にはなっていなかった。控訴人代表者のDは,本件契約締結前に,本件契約の契約書(甲11)と確認書(甲10)をダイモン被害者の会から委任されていたA弁護士に示し,法的助言を求めたが,同弁護士は,上記のような譲受人にとって不利益な特約条項については,特に説明せず,また,控訴人がこのまま本件契約を締結することについて特に異議を述べることもしなかった。
(カ) ダイモン被害者の会は,最終的にその125名の会員から各3万円の会費の振込を受け,入金額の合計は375万円となった。しかし,その支出も,A弁護士に対し,平成8年における報酬及び費用として219万7610円(乙15の1ないし5),ダイモン被害者の会の事務局幹事であったFに対する平成8年11月から平成9年6月までの月額15万円の手当120万円その他の事務局の経費等の支出があり,本件契約が成立した平成9年6月当時,同会の会員から新たに会費を徴収しない限り,本件意匠権等の譲渡代金を支払う資力は全くなく,新たに会費を徴収する計画も,その見通しも,あったわけではなかった。
A弁護士に対する報酬及び経費は,同弁護士による,ダイモン被害者の会の会員のクレジット債務の減額交渉等や,ダイモンの役員であるBらに対する民事・刑事上の責任追及の準備等の活動のために必要なものであったし,事務局幹事のFに対する手当も,同人が事務局の事務のみならず,本件商品の安定供給のための部品メーカーとの折衝や商品の材料供給の確保等の活動を行うのに必要とされた手当であった。
(キ) 控訴人は,平成9年8月25日には,株式会社和孝に対し,本件意匠権等につき,通常実施権を許諾する契約を締結し,同社をして本件商品を生産させた。しかし,本件商品は,部品数が多いため取付工事費が1台当たり4万5000円と高く,販売価格も1台当たり45万円程度と競争品である乾燥機より高かったため,売上げが伸びず(全体で65台程度),ダイモンの代理店からの注文に限ってみると,ダイモン被害者の会の会員からのものも含め,数台にすぎなかった。
(甲9,甲12) (ク) 控訴人代表者のDは,平成10年8月ころ以来,被控訴人やG(以下「G」という。)らから,本件商品の取付工事を独占しているなどの批判を受けるようになり,平成11年2月19日には,A弁護士事務所において開催されたダイモン被害者の会の幹事会において,Gらから,控訴人代表者が本件商品の取付工事を独占しているとか,ダイモン被害者の会を私物化しているとかの非難を受け,ダイモン被害者の会の代表幹事を辞任するように要求された(Gは,ダイモンの被害者ではないが,平成11年2月14日のダイモン被害者の会の幹事会において,ダイモン被害者の会に入会すること及びその幹事となることを承認されたものである。)。控訴人代表者のDは,Gらから長時間にわたって非難されたことと,本件商品の売行きが全く期待はずれであったことなどから,ダイモン被害者の会の代表幹事を辞任すること,及び,相当の対価をもって本件意匠権等を譲渡することを決意し,後日,平成11年2月19日付けで,控訴人が代表幹事を辞任し,被控訴人が就任する旨の代表幹事交代確認書,及び,本件意匠権等がダイモン被害者の会に属するものであることを認める旨の確認書にそれぞれ署名押印した。(甲16,甲17,甲30,甲65,証人G) (ケ) しかし,控訴人代表者のDは,平成11年4月ころには,被控訴人から,ダイモン被害者の会は,本件意匠権等の譲渡代金を支払う資力がないことを告げられたため,同人に対し,本件意匠権等を譲渡しない旨を口頭で伝え,その後平成11年7月2日付け内容証明郵便により,本件意匠権等を譲渡しない旨を被控訴人に対し正式に回答した。(甲52,乙7の1・2) (2) 上記に認定したところによれば,次のようにいうことができる。
(ア) ダイモン被害者の会は,控訴人が本件契約により本件意匠権等を譲り受けるに当たって,同会あるいはその幹事会等において,この譲受けについて相談したことも,何らかの合意をしたこともない。
(イ) ダイモン被害者の会には,当時本件意匠権等を購入する資力もなく,これを購入するとなると新たに会員から会費を徴収する必要があったのに,会員に対し,本件意匠権等を購入することやそのための新たな出費を要することについて意見を聴取したことすらない。
(ウ) そもそも,ダイモン被害者の会の会員は,ダイモンに対する契約金の回収あるいはクレジット会社に対するクレジット債務の減額等を求めて交渉中であり,また,ダイモンの役員の個人責任を追及するための準備をしていたものであり,本件意匠権等を取得するために,ダイモンに対し新たに金員を支払うことについて会員から合意を得ることは,事実上不可能といい得る状況にあった。
(エ) 控訴人は,上記のような状況下で,本件意匠権等の取得等に要した費用をダイモン被害者の会に請求することなどは全く考えておらず,これを自己の責任と負担において購入したものである。
(オ) 本件契約の内容を検討すると,上記のとおり,本件意匠権等の権利に瑕疵があってもダイモンに対し何も請求できないことや,本件譲渡に関し第三者から訴訟が提起されても(詐害行為取消の訴え等が考えられる。),譲受人はダイモンに対し何らの請求もできないこと等の不利益な条項があり,これらの条項は,当時ダイモンの役員らの個人責任を追及するための準備をしていたダイモン被害者の会の会員が了解し得る内容とはかけ離れている。
(カ) 本件意匠権等の譲受人は,本件商品をダイモン被害者の会の会員以外のダイモンの取引先に対しても供給する義務があり,このような条項も,ダイモン被害者の会が新たに金員を支出して本件意匠権等を取得するとすれば,考えにくい条項である。
(キ) 以上の諸事情によれば,ダイモン被害者の会が上記のような条件で本件意匠権等を譲り受けることはあり得ない,といわざるを得ず,本件意匠権等は,本件契約の契約書の文言のとおり,控訴人が自らの負担においてこれを買い受けたものであり,ダイモン被害者の会が実質的にも形式的にもこの譲渡に関与したものとみることはできない。
(3) 被控訴人は,控訴人は,ダイモン被害者の会の代表幹事であったことから,本件商品を上記被害者の会の会員に継続的に供給するという目的の下に,本件契約により,ダイモンから,ダイモン被害者の会ないしはその構成員全員の受託者の立場において,信託的に本件意匠権等を譲り受けたものである,と主張する。しかし,ダイモン被害者の会が実質上本件意匠権等を取得し,これを控訴人に信託したと認めることができないことは上記のとおりである。
被控訴人は,ダイモン被害者の会の会員は,A弁護士に本件意匠権等の譲受けの件を委任しており,控訴人代表者は,本件意匠権等の上記信託的譲受けについては,A弁護士の承認を得ているから,同信託的譲受けについては,ダイモン被害者の会の個々の会員から黙示の授権があったということができる,と主張する。
確かに,控訴人代表者は,本件契約締結前に,A弁護士に対し,その契約書等を示して法的助言を求め,同弁護士は,これについて何も異議を述べず,積極的に法的な助言をしなかったことは上記認定のとおりである。しかしながら,このことを,同弁護士が,ダイモン被害者の会の個々の会員からの黙示の授権の下に,ダイモン被害者の会が本件意匠権等を本件契約の条件の下に譲り受けるとの趣旨の承認をしたとみることは,同弁護士が,本件契約の具体的な内容や条件について,ダイモン被害者の会の会員に何も知らせておらず,また,金銭の追加的な支出について会員から何の了解も得ておらず,上記のとおり,そもそも同会の会員に対し追加的な支出を求めることが事実上不可能な状況の下においては,到底できないことである。
A弁護士は,控訴人が本件契約により本件意匠権等を取得することは,本件商品の安定供給につながることであるから,ダイモン被害者の会の会員の利益にもなることとして,控訴人が本件契約を締結し,本件意匠権等を取得することを黙認したにすぎない,とみる以外にないのである。すなわち,控訴人は,ダイモン被害者の会の代表幹事でもあり,本件意匠権等を取得した以上,同会の会員に対して,本件商品を安定供給すべき約束をした者として,その義務を負うことになったということになるであろうし,また,ダイモン被害者の会の会員としても,ダイモンに対する契約金の回収,クレジット会社に対するクレジット債務の支払停止あるいは減額交渉,Bら役員の個人責任の追及等をA弁護士に委任し,その手続きが進展することを期待していたものの,本件意匠権等については,本件商品の安定供給を受けることができればよかったのであり,安定供給が受けられる状況が生まれる以上,これを無償で取得するのであれば格別,追加的な支出をした上で,前記のような不利益な条件でこれを取得する必要はなかったのである。被控訴人の上記主張は採用することができない。
控訴人代表者のDは,平成11年2月19日付けの確認書で,本件意匠権等がダイモン被害者の会に帰属することを記載した確認書に署名をしている。しかし,この確認書は,前記のような経緯で作成されたものであり,同人は,本件意匠権等の取得等に要した費用の支払を受ける前提で,ダイモン被害者の会又はその指定された者に対し,本件意匠権等を譲渡する旨を約束したものであり,その後,本件意匠権等の取得等に要した費用の支払いを得られないことが明確になったため,本件意匠権等を譲渡しないとの意思を明確に表示したものである。このような確認書作成前後の経緯及び上記に認定したところによれば,上記のような確認書が存在するからといって,控訴人がダイモン被害者の会のために本件意匠権等を信託的に譲り受けたとの事実を推認することはできない。
被控訴人は,ダイモン被害者の会又はその会員が本件意匠権等をダイモンからいったん譲り受けたことが,控訴人がダイモン被害者の会から信託的に本件意匠権等を譲り受けることの,必須の前提となるわけではない,被控訴人が主張しているのは,控訴人が,ダイモン被害者の会に本件商品を安定供給するという目的の下に,同会の意向を受けて譲り受けたとの趣旨であり,ダイモン被害者の会と控訴人との間で本件意匠権等についての信託関係が成立するには,これで十分であるというべきである,と主張する。確かに,ダイモンとの関係において本件意匠権等の譲渡を受けたのが控訴人であったとしても,そのことは,ダイモン被害者の会を本件意匠権等の保有者とし,同会を信託者,控訴人を受託者として,本件意匠権等を信託財産とする信託関係が,両者の間に成立することの妨げとなるものではない(控訴人は,ダイモンから取得した本件意匠権等を直ちにダイモン被害者の会に譲渡し,それと同時に同会からこれらの信託を受けた,と考えれば,理解しやすいであろう。)。この限度では,被控訴人の主張は正当である。しかし,控訴人によるダイモンからの本件意匠権等の譲受けが,ダイモン被害者の会の会員に本件商品を安定供給するという目的の下に行われたことであり,同会の意向を受けてのことであったとしても,そのことは,被控訴人主張の信託関係の成立を根拠付けるに足りる事由となるものではない。
ダイモン被害者の会の会員に本件商品を安定供給するという目的を実現する方法の一つとして,同会自体による本件意匠権等の取得が考えられるのは事実である。しかし,上記目的を実現する方法は,これに限られるわけではなく,本件意匠権等をダイモンから取得してその権利者となるのを控訴人としつつ,控訴人に安定供給の義務を負わせるという方法も十分考えられるところである。そして,本件意匠権等の取得者となるということは,事が好ましく進行すればそこから大きな利益が得られるということでもある反面,とりあえずは,まず,取得の対価を負担しなければならないということであり,しかも,対価の回収ができるか否かの危険を自らが負担するということでもあるのである。そうだとすれば,控訴人によるダイモンからの本件意匠権等の譲受けが,ダイモン被害者の会の会員に本件商品を安定供給するという目的の下に行われたことであり,同会の意向を受けてのことであったとしても,ダイモンとの関係で譲受人となっているのが控訴人であり,譲受けに伴う一切の負担をしているのも控訴人である以上,反対の結論に導く特別の事情が認められない限り,控訴人は,単に,本件意匠権等を行使するに当たって,ダイモン被害者の会の会員に本件商品を安定供給するとの債務を負って本件意匠権等を取得したということになるにすぎないとするのが,合理的な認定となるというべきである。ところが,本件全証拠を検討しても上記特別事情に該当すべきものを認めることはできない(前認定の事実関係の下で,ダイモン被害者の会に,上記のような対価や危険を負担する能力や意思があったことを認めることは,困難という以外にない。ダイモン被害者の会と控訴人との間で,控訴人がダイモンに支払うべき対価の負担につき何らの取り決めもなされていないことも前認定のとおりである。)。
被控訴人の主張は,結局のところ,ダイモン被害者の会自体が本件意匠権等の権利者となることが,その会員に本件商品を安定供給するという目的を実現するための,唯一の手段であるという誤った前提に立たなければ成り立たないものであり,失当という以外にない。
(4) 以上のとおりであるから,控訴人がダイモン被害者の会のために信託的に本件意匠権等を譲り受けたとの被控訴人の主張事実を認めることはできない。
2 結論 1によれば,被控訴人の本訴請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がないことが明らかである。そこで,被控訴人の本訴請求を認めた原判決を取り消し,被控訴人の本訴請求を棄却することとし,訴訟費用の負担については,民事訴訟法67条2項,61条を適用して,主文のとおり判決する。
追加
別紙意匠権等目録1意匠権(1)本意匠出願平成元年9月18日登録平成4年3月27日登録番号第0840906号意匠に係る物品組立て屋根登録意匠別紙1意匠公報記載のとおり(2)類似意匠出願平成元年9月18日登録平成4年4月13日登録番号第0840906号の類似1意匠に係る物品組立て屋根登録意匠別紙2意匠公報記載のとおり2商標権出願平成元年4月14日登録平成4年3月31日登録番号第2388388号指定商品屋外装置品、家具、畳類、建具、屋内装置品(書画および彫刻を除く)、記念カツプ類登録商標別紙3商標公報記載のとおり
裁判長裁判官 山下和明
裁判官 設樂隆一
裁判官 宍戸充
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