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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20ワ36851意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠
平成1行ケ129 判例 意匠
平成16ワ17501債務不存在確認請求事件 判例 意匠
昭和57行ケ115 判例 意匠
昭和59ワ7459 判例 意匠
関連ワード 意匠の創作 /  物品 /  形状 /  模様 /  機能美 /  意匠に係る物品 /  意匠の説明 /  意匠登録を受ける権利 /  先願 /  冒認出願(冒認) /  新規性 /  類似する意匠 /  物品の機能 /  意匠の同一 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  全体観察 /  ありふれた部分 /  本意匠 /  登録意匠 /  取引の実情 /  類似範囲 /  権利を専有 /  差止請求(差止) /  損害賠償 /  特許権 /  類似性(類否判断) /  混同を生じるおそれ(混同を生ずるおそれ) / 
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事件 平成 5年 (ワ) 8250号
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裁判所 大阪地方裁判所
判決言渡日 1994/07/19
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求の趣旨
一 被告は、別紙被告物件目録(三)及び(四)記載の各冷蔵庫用脱臭剤を製造し、販売してはならない。
二 被告は、その所有にかかる前項記載の各冷蔵庫用脱臭剤を廃棄せよ。
三 被告は原告に対し、金八〇〇〇万円及びこれに対する平成五年九月九日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。
事案の概要
一 原告の意匠権(争いがない)1 原告は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件登録意匠」という。)を有している。
(一) 出願日 昭和六二年二月一八日(二) 登録日 平成二年八月二七日(三) 登録番号 第八〇二四七一号(四) 意匠に係る物品 脱臭剤容器(五) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(1)」という。)及び本件意匠登録出願願書添付図面代用写真のとおり2 本件登録意匠には、次の(一)ないし(三)の類似意匠(以下順次「本件類似意匠1」「本件類似意匠2」「本件類似意匠3」といい、これらをまとめて「本件類似意匠」という。)が登録されている。
(一)(1) 出願日 平成元年一二月二九日(2) 登録日 平成四年一二月一〇日(3) 登録番号 第八〇二四七一号の類似第1号(4) 意匠に係る物品 脱臭剤容器(5) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(2)」という。)記載のとおり(二)(1) 出願日 平成元年一二月二九日(2) 登録日 平成四年一二月一〇日(3) 登録番号 第八〇二四七一号の類似第2号(4) 意匠に係る物品 脱臭剤容器(5) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(3)」という。)記載のとおり(三)(1) 出願日 平成元年一二月二九日(2) 登録日 平成四年一二月一〇日(3) 登録番号 第八〇二四七一号の類似第3号(4) 意匠に係る物品 脱臭剤容器(5) 登録意匠 別紙意匠公報(以下「公報(4)」という。)記載のとおり二 原告の冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」シリーズ商品の販売(甲三の1・2、六〜二八、三二〜七五、検甲二〜五、一一〜一五、検乙一〜六、一三、弁論の全趣旨)1 原告は、昭和五七年一〇月頃、別紙原告商品写真(一)の容器と同一意匠の容器本体に、緑色に着色した、冷蔵庫内の悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」を発売し(但し、別紙原告商品写真(一)の表面の包装ラベル表示は昭和六三年に商品名を「ニオイのみはり番 スーパー」に変更後のものである。)、その後そのシリーズ商品を左記のとおり順次発売した。なお、容器本体に充填する脱臭剤の着色は、彩度等については若干の変動があるものの(検乙第一号証と検乙第二号証、検乙第三号証と検乙第四号証、及び、検乙第五号証と検乙第六号証の各対比)、ほぼ緑色という点では当初から現在まで一貫している。
2 昭和五八年九月、別紙原告商品写真(二)の容器と同一意匠の容器を使用した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 ビッグ」(検甲第三号証)を発売した(但し、別紙原告商品写真(二)の表面の包装ラベル表示は、昭和六三年に商品名を「ニオイのみはり番 スーパービッグ」に変更後のものである。)。
3 昭和六一年三月、別紙原告商品写真(四)の載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 野菜室用」(検甲第四号証)を発売した。
4 昭和六二年二月、別紙原告商品写真(三)の載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 #4000」(検甲第五号証、検乙第三号証、第四号証)を発売した。
5 昭和六三年、別紙原告商品写真(一)の吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 スーパー」(検甲第二号証、検乙第一号証、第二号証)及び別紙原告商品写真(二)の吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番スーパービッグ」(検甲第三号証)を発売した(共に商品名の変更に伴い包装ラベル表示を変更したものにすぎず、容器の意匠は従前の「ニオイのみはり番」及び「ニオイのみはり番 ビッグ」と同一である。)。
6 平成四年、別紙原告商品写真(五)の「ニオイのみはり番 ハイパーS」(検乙第五号証、第六号証)及び別紙原告商品写真(六)の「ニオイのみはり番 ハイパーL」を発売した(但し、「ニオイのみはり番 ハイパーS」については平成五年に表面の包装ラベル表示を検乙第一三号証のものに変更した。)。
7 原告が現在発売中の「ニオイのみはり番」シリーズ商品は、「ニオイのみはり番 スーパー」、「ニオイのみはり番 スーパービッグ」、「ニオイのみはり番 野菜室用」、「ニオイのみはり番 #4000」、及び「ニオイのみはり番 ハイパーS(包装ラベル表示変更後のもの)」の五種類である(以下、過去に販売実績のあるものを含め、原告販売の前記各「ニオイのみはり番」シリーズ商品をまとめて「原告商品」と総称し、それらの商品に使用されている容器をまとめて「原告容器」と総称する。)。
三 原告商品の形態(別紙原告商品写真(一)〜(六)、検甲二〜五、検乙一〜六、一一、一三、一六) 原告商品の形態は、別紙原告商品写真(一)ないし(六)のとおりであるが、次のとおり分説するのが相当である。
1 多数の透孔(スリット)が穿設された白色不透明のかぶせ蓋と半透明の本体(但し、ハイパーLのみ本体の一部に白色不透明部分があり、その余が半透明部分となっている。)とからなり、蓋の上部に櫛の歯状の透孔(スリット)を多数穿設した原告容器を使用し、
2 原告容器本体に緑色に着色した、使用時日の経過に従い揮発して量が減少し、
悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した、
3 冷蔵庫用脱臭剤。
四 被告の行為(検甲九、検乙七〜一〇、一二、一四、一五、一八、弁論の全趣旨) 被告は、業として、
1 平成元年四月頃、中国・四国地方において、別紙被告物件目録(二)記載の容器(以下「被告容器(2)」という。)と同形の容器(但し、若干小振りであった。)を使用し、その内部に薄い黄緑色と薄い青色の中間色に着色した、使用時日の経過に従い揮発して量が減少し、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した載置型冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク小」(検乙第一八号証)を発売し、続いて同年一〇月同地方において、別紙被告物件目録(一)記載の容器(以下「被告容器(1)」といい、「被告容器(1)」と「被告容器(2)」をまとめて「被告容器」という。)を使用し、その内部に右と同じゲル状タイプの脱臭剤を充填した載置型冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク大」を試験的に発売し、
2 その後、右試験発売に際し消費者から寄せられた、脱臭剤の着色がトイレ洗浄剤の青色着色を連想させるとの意見などを参考にして、平成二年二月、被告容器(1)を使用しその内部に着色を緑色に変更したゲル状タイプの脱臭剤を充填した別紙被告物件目録(三)記載の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク ジャンボ」(以下「被告商品(1)」という。但し、容器表面の包装ラベル表示は、発売後、検乙第七号証→検甲第九号証・検乙第八号証→検乙第一四号証の順に順次変更しており、別紙被告物件写真(三)の正面図、背面図、右側面図及び左側面図に撮影の蓋部下部外周に貼付されて赤色帯状シール及び同正面図に撮影の蓋部正面上部に貼付された緑色シールの貼付態様は、平成四年春に変更後のもの〔検甲第九号証・検乙第八号証〕であり、発売当初は蓋部正面上部(透孔部分)に赤色のシールを貼付したもの〔検乙第七号証〕であった。)を本格発売するとともに、同時に、被告容器(2)を使用しその内部に右と同じゲル状タイプの脱臭剤を充填した別紙被告物件目録(四)記載の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク」(以下「被告商品(2)」という。但し、容器表面の包装ラベル表示は、発売後、検乙第九号証→検甲第八号証・検乙第一〇号証→検乙第一五号証の順に順次変更しており、別紙被告物件写真(四)の正面図、背面図、右側面図及び左側面図に撮影の蓋部下部外周に貼付された赤色帯状シール及び同正面図に撮影の蓋部正面上部に貼付された緑色シールの貼付態様は、平成四年春に変更後のもの〔検甲第八号証・検乙第一〇号証〕であり、
発売当初は蓋部正面上部(透孔部分)に赤色のシールを貼付したもの〔検乙第九号証〕であった。なお、以下では「被告商品(1)」と「被告商品(2)」をまとめて「被告商品」と指称する。)を本格発売し、
3 原告が平成四年春に被告商品と同様蓋部の正面に赤色のシールを貼付した「ニオイのみはり番 ハイパーS」(別紙原告商品写真(五)、検乙第五号証、第六号証)の販売を開始したため、被告は、その頃被告商品と原告商品との差異を明確にする目的で、それまで貼付してきた前記赤色シールの貼付を中止し、被告容器の蓋部下部の包装ラベル表示を赤色の帯状に変更した被告商品〔検乙第一〇号証〕を発売し、
4 その後、原告が原告商品の蓋部の頂面から正面及び裏面にかけて赤色シールを貼付した商品(検乙第一三号証)の販売を開始したため、被告は、被告商品と原告商品との差異の明確化をさらに図るため、被告商品の蓋部下部外周に貼付していた赤色帯状シールの正面上部に黄色横長の表示帯を挿入し、同所に「においがうつらない」と表示した商品(検乙第一四号証)を発売し、以後右商品を現在まで継続して製造販売している。
五 原告の請求の概要1 @被告容器の意匠(以下「被告意匠」といい、被告容器の意匠を個別に指称するときは「被告容器(1)意匠」「被告容器(2)意匠」という。)が本件登録意匠に類似すること、A原告商品の形態は、前記三の1ないし3記載の販売時の単なる外観形状の特徴点のみに限られず、商品として店頭に陳列されている際には、容器本体の半透明部分から内部を透かして緑色の脱臭剤が容器本体に一杯充填されている状態を看取することができ、使用を継続するにつれて、充填されていた緑色に着色した脱臭剤の量が次第に減少する様子が容器本体の半透明部分から内部を透かして見えるという、原告容器の機能的特徴点をも包含するものであり、そのような意味での原告商品の形態は、遅くとも昭和五九年頃には、不正競争防止法(平成五年法律第四七号、以下同じ)2条1項1号にいう「商品等表示」として、中間取引者である流通関係者及び最終需要者である消費者の間に広く認識されるに至ったこと、被告商品の形態は原告商品の形態と類似し、原告商品と混同を生じることを理由に、@意匠法37条一、二項及びA不正競争防止法3条に基づき、被告商品の製造、販売の停止及び被告所有の被告商品の廃棄を請求。
2 民法709条及び不正競争防止法4条に基づき、被告の本件意匠権侵害行為及び不正競争行為により原告に生じた損害八〇〇〇万円の賠償を請求。
六 主な争点1 被告意匠は本件登録意匠に類似するか。
2 原告商品の形態がいわゆる商品表示性及び周知性を取得したか。
3 被告商品の形態は原告商品の形態に類似するか。両商品に混同が生じるか。
4 原告の出所混同の主張は信義則上許容されないか。
5 被告の行為が不正競争行為に該当する場合、被告に故意又は過失があったか。
また、原告は営業上の利益を害されたか。
6 それらが肯定された場合、被告が賠償すべき原告に生じた損害の金額。
争点に関する当事者の主張
一 争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似するか)1 原告主張(一) 本件登録意匠の構成 本件登録意匠の構成は次のとおりである。
(1) 本体を透明体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型の脱臭剤容器である。
(2) その基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直方体形状である。
(3) 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されており、平面視において、櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映る。
(二) 本件登録意匠の要部(類似意匠の参酌) 本件登録意匠の類似範囲を画するためには、その類似意匠の登録状況を参酌しなければならないが、本件登録意匠と被告意匠とを全体として観察すると、両意匠は、具体的構成態様の一部又は一部分につき本件類似意匠と本件登録意匠(本意匠)との間にも存する差異とほぼ同程度の、被告主張の左記TないしXの差異が認められるのみであり、被告意匠は全体として本件登録意匠に類似する。被告主張の各差異は、本件登録意匠の要部に関するものとはいえず、それが意匠の全体観察に占める比重は低いものと評価せざるを得ない。詳細は次のとおりである。すなわち、
T 被告は、本件登録意匠は、全体の形状が、頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体であるのに対し、被告意匠は、全体の形状が、横長の扁平小判型柱体で頂面左右両端を斜めに台形状に切り欠いた蓋部を有し、蓋部と本体の両端部は半円柱状の曲面を形成している点で相違する旨主張する(被告主張の相違点T)。しかしながら、被告は本件登録意匠の基本的形態を「横長の隅丸一〇面体」と表現しているが、右表現は不適切であり、「平面視において隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直方体」と表現すべきであり、被告意匠の基本的形態と本件登録意匠の基本的形態が類似することは、本件類似意匠の基本的形態が全て被告意匠と同様に被告の主張する「横長で扁平な小判型柱体」であることからも明らかである。
U 被告は、本件登録意匠は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さが高いのに対し、被告意匠は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・八五倍ないし〇・五六倍で、蓋部の高さが低い点で相違する旨主張する(被告主張の相違点U)。しかしながら、本件類似意匠1・2は蓋部の高さが本体の高さの約〇・七三倍となっており、看者に与える印象は被告意匠と共通していることからも、右被告主張の理由のないことは明らかである。
V 被告は、本件登録意匠は、蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔が各二二個と多数であるのに対し、被告意匠では、蓋部に縦にあけられた透孔は各一一個ないし六個で本件登録意匠に比べ数が少ない点で相違する旨主張する(被告主張の相違点V)。しかしながら、本件類似意匠では、蓋部の上方部分に正・背面の縦方向にあけられた櫛の歯状の透孔の数は一五個であり、その数は多少相違するとしても、いずれも蓋部頂面から正・背面中央部分にわたって櫛の歯状に穿設されている点では同じであり、看者に与える印象は被告意匠と共通していることからも、右被告主張の理由のないことは明らかである。
W 被告は、本件登録意匠は、透孔が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いのに対し、被告意匠では、透孔が少なく、蓋部左右に残った部分の幅が大変広い点で相違する旨主張する(被告主張の相違点W)。しかしながら、被告意匠の右特徴は本件類似意匠のいずれにも表わされている。
X 被告は、本件登録意匠は、蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔はあけられていないのに対し、被告意匠では、斜面に櫛の歯状の透孔が各七個ないし六個あけられている点で相違する旨主張する(被告主張の相違点X)。
しかしながら、本件類似意匠3では、蓋部の中央頂面左右両端(平面視)が、対称の幅の広い蒲鉾型の斜面を形成し、そこには櫛の歯状の透孔が各五個並列して設けられており、看者に与える印象は被告意匠と共通していることからも、右被告主張の理由のないことは明らかである。
(類似意匠に関する被告主張に対する反論) 被告は、原告が本件類似意匠権の侵害、すなわち被告意匠が本件類似意匠に類似する責任を追及している旨主張する。しかしながら、原告は、本件訴訟において当初から被告意匠が本件登録意匠(本意匠)に類似する旨主張しているのであって、
被告意匠が本件類似意匠に類似し、該意匠権を侵害する旨の主張は一切していない。被告の右主張は失当である。
被告は、類似意匠制度に関していわゆる確認説が正しいと主張しながら、その一方で、本件登録意匠の意匠登録出願後、本件類似意匠の出願前に被告意匠を使用した被告商品が販売されたから、本件類似意匠は、いずれも意匠法10条1項の「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」に該当せず、本件類似意匠の登録出願は本来拒絶されるべきものであり、登録された後は審判により無効とされるべきである旨主張する。しかしながら、被告のこの二つの主張は明らかに矛盾する。なんとなれば、確認説に立つならば、類似意匠登録は、単に本意匠の類似範囲を確認する登録にすぎず、それ自体には本意匠から独立した独自の類似範囲を認め得ないのであるから、意匠法10条1項の「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」という類似意匠の登録要件の審査に際しては、本意匠の出願時点を基準にして、当該類似意匠が本意匠以外の先願意匠や公知意匠に類似せず、本意匠にのみ類似するか否かを審査すれば足り、本意匠の意匠登録出願後、類似意匠の意匠登録出願との間に存在する先願意匠や公知意匠によって類似意匠の意匠登録出願を拒絶すべきものとすれば、結局は本意匠の類似範囲自体を確認することができなくなってしまい、類似意匠登録制度の趣旨そのものが没却されることになる。したがって、確認説に立つ限り、意匠法10条1項の「のみ」は、本意匠の出願時点を基準にして前記のように解釈すべきであり、類似意匠は、本意匠の類似範囲を確認する資料にすぎないから、本意匠の出願前に存在した公知意匠や先願意匠に類似するものであってはならないが、
本意匠の出願後類似意匠の出願前に発売された商品の意匠によって無効とされるべきいわれはない。
被告は、乙第三六号証(石鹸日用品新報・平成四年一一月一四日発行第四〇六五号の記事)に基づき、原告は、故意に被告意匠に酷似する意匠を意匠登録出願した事実は明らかであり、右意匠登録出願の時点で被告商品は既に市場で販売されていたから、この事実からしても、本件類似意匠の意匠登録出願は公知意匠(被告意匠)に酷似する意匠の冒認出願として無効とされるべきものである旨主張する。しかしながら、意匠法上、意匠権の効力については、「意匠権者は、業として登録意匠及びこれに類似する意匠を実施する権利を専有する。」(同法23条本文)と規定され、類似範囲を含めて単一の創作、単一の意匠、単一の権利として観念されており、そうであるからこそ、類似意匠の意匠登録がされた時点で、類似意匠の意匠権は本意匠の意匠権と合体する旨規定されているのである(同法22条)。したがって、類似意匠の意匠権が本意匠の意匠権と合体した時点で、類似意匠の意匠登録を受ける権利本意匠意匠登録を受ける権利と合体したとみるのが論理上当然のことであって、本件類似意匠が本件登録意匠(本意匠)に類似するものとして登録された以上、本件類似意匠は、本件登録意匠の創作と同一性を有するものとされたわけであるから、本件類似意匠の意匠登録出願が被告意匠の冒認出願となるはずはない。被告意匠を使用すること自体が本件登録意匠類似する意匠を原告に無断で実施する違法な行為であって、被告主張の公知事実(あるいは先願)の存在に新規性阻却事由としての地位(あるいは先願としての地位)を認めるべきものではない。
(公知意匠について) 被告は、本件登録意匠の出願前公知意匠として、乙第一号証ないし第九号証、第一三号証、第一九号証及び第二〇号証を提出援用し、それらの公知意匠との関係で、本件登録意匠の創作性の程度は相対的に低いものと評価すべきであって、本件登録意匠の要部は、被告主張の@ないしEの各点が一体となった本件登録意匠の具体的全体形状にある旨主張する。しかしながら、右主張は失当である。その詳細は次のとおりである。
(1) 意匠登録第六七六一七八号意匠公報(乙第一号証)及び第六七六二〇九号意匠公報(乙第二号証)に記載の脱臭剤容器の意匠の基本的形態は円柱体、意匠登録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器の意匠の基本的形態は平面視隅丸正方形の角柱体、意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容器の意匠の基本的形態は平面視三角おにぎり形の柱体、意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器の意匠の基本的形態は底部が開口する横長の扁平直方体の底部開口部に底板を嵌着したにすぎないものであって、いずれもその基本的形態において本件登録意匠と顕著に相違するものであり、本件登録意匠がそれらに類似しないことは一見して明白である。さらに、被告提出援用の乙第六号証ないし第九号証の各意匠公報に記載の各意匠は、いずれも本件登録意匠先願意匠ではあるけれども公知意匠ではなく、
右乙号各証記載の意匠に係る物品は、全て「ノンスメル」のような活性炭等の吸着剤によって臭い成分を吸着するタイプの脱臭剤用の容器であり、このような吸着タイプの脱臭剤用容器は、粒状の活性炭等を紙や不織布等の袋に入れた吸着剤をプラスチック製の容器本体内に封入する構造、すなわち、袋と容器の二重構造となっており、冷蔵庫内の空気と容器内の活性炭との接触性を高めるために、空気の流通孔を多くしておかないと脱臭効果は望めないものであり、容器本体の上面、正・背面、左右両側面、すなわち底面を除く容器の全周面に多数の櫛の歯状のスリット(透孔)が穿設されているところにその特徴がある。したがって、それらの意匠が本件登録意匠と共通する点は、単に蓋部に櫛の歯状の透孔を有するという部分的、
抽象的な点にすぎず、両者は基本的構成態様を全く異にしている。したがって、右被告主張の先願例は、本件登録意匠の権利範囲を解釈する上では何の参考にもならない。
(2)被告は、乙第一三号証(国立国会図書館昭和五七年一二月一七日受入の「モーターファン」第三七巻第二号〔昭和五八年一月臨時増刊号〕)、乙第一九号証(「JohnsonジャーナルNo.349」・一九八一年四月三〇日号二八頁)及び乙第二〇号証(乙第一九号証の掲載写真のネガに基づき改めて現像焼き付けし直した写真)に掲載のジョンソン株式会社発売の自動車用液体消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠を公知意匠例として挙示し、右容器の意匠は、A 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、B その形状は、縦薄型の隅丸直方体であること、C 蓋の上辺側壁には櫛の歯状の透孔が穿設されていること、という原告主張の本件登録意匠の要部の構成を全部具備しているから、右AないしCの構成は本件登録意匠の要部とはいえない旨主張する。確かに、右「グレード カーフレッシュ」容器は、液状芳香剤が収納される容器本体と蓋とからなり、容器本体は、横幅対奥行対高さの比率が約四対三対二の割合の隅丸直方体形状(但し、前後両側面は若干曲面をなしているが、
概ね直方体形状と称してよい。)の上部に徐々に搾まるテーパー面と円筒状の口金部とからなるインク壜形状であり、蓋は、容器本体の口金部に螺子止めされる中壜と、その中壜にさらに被せられる外壜とからなり、外壜は、容器本体よりも大きな直方体形状で左右両側肩部に大きなアールが付されており、頂面から前後左右の各側面にわたって多数の櫛の歯状のスリット(蒸散孔)が開設されているが、頂面のフラット部におけるスリットは透孔ではなく凹みにすぎず、アール面から以下が透孔となっている。そして、外蓋が被せられた全体形状が若干縦長で奥行が横幅の約三分の二もある安定感のある隅丸直方体形状の容器である。そして、全体形状が隅丸直方体形状の載置型であり、かつ、容器本体に蓋が被せられた基本的形状を有する点において、右「グレード カーフレッシュ」容器の意匠は、前掲乙第一号証ないし第九号証の各意匠公報記載の意匠とは異なり、本件登録意匠の基本的形態に近い形態を備えているから、本件登録意匠の権利範囲を解釈するうえで参酌に値する唯一の意匠ということができる。しかしながら、この「グレード カーフレッシュ」容器の意匠の基本的形態は、左記の点で本件登録意匠の基本的形態とは大きく相違している。すなわち、
(イ) 別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真(検甲第一号証)とその登録意匠である意匠登録第六〇八五〇一号意匠公報(甲第三〇号証)に示されているとおり、「グレード カーフレッシュ」容器の基本的形態は、奥行が横幅の約三分の二もある、ずんぐりむっくり型の隅丸直方体であって(その名が示すとおり、自動車のダッシュボード上に載置して車内の消臭芳香を目的とする商品に使用される容器であるから、走行中の振動によっても倒れることのないように十分な奥行寸法をとっている。)、冷蔵庫内の棚の側壁に沿って立てかけて使用される、本件登録意匠に係る物品である冷蔵庫用脱臭剤容器の基本的形態である「平面視において隅角部に大きなアールが付された横長の扁平な直方体」形状とは顕著な差異がある。
(ロ) 本件意匠登録出願願書添付図面代用写真を見れば本件登録意匠の容器本体が透明体であることは容易に分る。これに対し、「グレード カーフレッシュ」容器は本体も蓋も不透明体であって(別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真〔検甲第一号証〕を見ると、濃緑色に着色されていて、内容物として薬液が入っていることはよく見れば分るが、その薬液の色までは判別できないので、不透明体と言っても過言ではなかろう。)、本件登録意匠のように、透明体の本体に不透明体の蓋を被着したものではない。
(ハ)蓋に穿設された櫛の歯状の透孔も、本件登録意匠では、蓋の頂面から正・背面の中央部にかけてスリット状の透孔が穿設されているが、「グレード カーフレッシュ」容器の意匠では、別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真〔検甲第一号証〕及び意匠登録第六〇八五〇一号意匠公報〔甲第三〇号証〕のAーA断面図に示されるように、頂面のフラット部では透孔ではなくて凹みとなっており、頂面と正・背面とのコーナー部から下が透孔となっている点で本件登録意匠とは差異がある。また、本件登録意匠では、平面視において櫛の歯状のスリット(透孔)が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映るのに対し、「グレード カーフレッシュ」容器の意匠では、中央部の大きな長方形状の残余部と四隅のアール部における小さな四つの残余部として看者の目に映り、蓋部の頂面の形状が看者に与える印象が大きく相違している。
(要部についての結論) 以上を総合考慮すると、被告が本件登録意匠の出願前公知意匠として主張するもののうち、本件登録意匠の構成に近い構成態様を含み、本件登録意匠の要部を画する上で参酌に値する意匠は、乙第一三号証、第一九号証及び第二〇号証に記載のジョンソン株式会社販売の消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠(その正確な意匠態様は別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真〔検甲第一号証〕とその登録意匠である意匠登録第六〇八五〇一号意匠公報〔甲第三〇号証〕に示すとおりである。)のみであり、他は全て参酌に値しない。右「グレード カーフレッシュ」容器の意匠と本件登録意匠を対比すると、先行意匠にはない本件登録意匠独自の創作のポイントであり、かつ、本件登録意匠と本件類似意匠のいずれにも共通する形状の特徴である、本件登録意匠の要部は、A 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、B その基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直方体形状であること、C 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されており、平面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映る構成を採った点にあるものといわなければならない。
(三) 被告意匠と本件登録意匠の類否 そこで、本件登録意匠の右要部AないしCについて、被告意匠と本件登録意匠を全体として対比観察すると、被告意匠は、右本件登録意匠の要部の特徴を悉く備えるとともに、前記したとおり、被告主張の両意匠の差異は本件登録意匠と本件類似意匠との間にもほぼ同程度の差異が存するのであるから、それらの差異は本件登録意匠の要部に関する差異とはいえず、被告意匠が本件登録意匠に類似することは明らかである。
2 被告主張(一) 本件登録意匠の構成本件登録意匠の構成は次のとおり分説するのが相当である。
(1) 基本的構成態様 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体(頂面、底面、蓋部正・背面、蓋部左右側面、本体正・背面、本体左右側面)である。その上部は横長な隅丸四角錘体の底面を開口部とした蓋部を形成し、下部は隅丸逆四角錘体の頂面を開口部とした本体を形成し、当該蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成している。
(2) 具体的構成態様 蓋部を本体に被着させて一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・二一二対〇・四三九で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体(蓋部が被着され外部から見えなくなる部分は除く。以下同じ。)の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、
ほぼ一対〇・六〇対〇・三九三であり、蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍であって、蓋部及び本体の具体的形状は左記のとおりである。
@ 蓋部の具体的形状a 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・九〇〇対二・〇〇とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している台形である。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。台形下方部分は、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている。蓋部の高さと帯体の高さの比率は、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四二五である。この帯体の内側に本体の口縁上部を嵌め込ませて蓋部と本体を一体に形成している。台形上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列させてあけてある。台形上方部分の長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、台形上方部分の長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・八一二五である。
b 蓋部平面の形状は、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形である。その横幅(長手方向)と奥行の比率は、横幅を一とした場合、ほぼ一対〇・三六七であり、左右両端と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺(平面図に即して上・下をいう。したがって、下は正面側、上は背面側となる。以下同じ。)から横長帯体まで、上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列させてあけてある。横幅と透孔が配列された部分の幅(長手方向)の比率は、横幅を一とした場合、ほぼ一対〇・八一二五である。
c 蓋部左右両側面の形状は、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・六〇〇対〇・七二五とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している台形である。その頂辺左右両端は小さい隅丸となっている。
台形下方部分は、正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている。
台形上方部分は、ごく僅か内方へ傾く滑らかな傾斜面である。
2 本体の具体的形状a 本体の正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対二・九二対二・八八四とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している逆台形であり、その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋を廻らしている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二六分の一である。
b 本体左・右側面の形状は、本体の高さ、頂辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・九六一対〇・九二三とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している逆台形である。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左・右側面は、ごく僅か外方へ傾く滑らかな前傾斜面である。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)は、正・背面と同様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二六分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
c 本体底面の形状は、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形で、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。
頂辺外周縁の横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ二・九四二対〇・九六一対一である。本体底面中央には細長い矩形が表れている。
d 本体は一色無模様である。
(二) 本件登録意匠の要部 公知意匠にない新規な部分であって、かつ見る者の注意を強く惹く部分にこそ当該意匠の要部ないし特徴があるものといわねばならない。したがって、意匠の要部ないし特徴がどこにあるかをみる場合、まず、当該意匠をその意匠登録出願前の公知意匠と対比して考察する必要がある。また、以上のことは、当該意匠と先願意匠との関係についても同様にいうことができる。何故ならば、先願意匠があるにもかかわらず当該意匠が意匠登録されたということは、当該意匠が先願意匠と同一又は類似しないものと特許庁審査官によって認定判断されたことを示すものにほかならないからである。そこで、以下では本件登録意匠とその意匠登録出願前に存在した公知意匠及び先願意匠とを対比しつつ、本件登録意匠の要部が(一)で述べた本件登録意匠の構成のどこにあるかを検討する。
(公知意匠及び先願意匠)(1) 公知意匠 本件登録意匠の出願当時、次の公知意匠が存在していた。
@ 意匠登録第六七六一七八号意匠公報(乙第一号証)及び同第六七六二〇九号意匠公報(乙第二号証)に記載の脱臭剤容器の意匠 右各意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 全体が円柱体であり、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 蓋部下方部分全体を帯状に残し、
(ニ) 正・背面は、左右両端面も残し、
(ホ) その間に頂面から帯状上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に八個又は一二個並列させてあけてある、
(ヘ) 脱臭剤容器。
A 意匠登録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器の意匠 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 全体が角柱体で、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成し、
(ニ) 本体上方部分にごく僅か外側へ膨出した帯体が廻らされ、
(ホ) 正面には左右両端を少し幅広に残し、
(ヘ) その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある、
(ト) 脱臭剤放散用容器。
B 意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容器の意匠 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 全体が隅丸三角柱体で、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成し、
(ニ) 左右側面には頂面から蓋部下方部分まで櫛の歯状の透孔を縦に五個並列させてあけてある、
(ホ) 冷蔵庫用脱臭剤容器。
C 意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器の意匠 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 隅丸の横長扁平で、底部に向かってやや広がっている直方体で、
(ロ) 上・下面が互いに平行し、
(ハ) 正面には頂面から中央部分まで櫛の歯状の透孔を縦に三一個並列させてあけてある、
(ニ) 防臭剤用容器。
D 乙第一三号証(国立国会図書館昭和五七年一二月一七日受入「モーターファン」第三七巻第二号〔昭和五八年一月臨時増刊号〕一一八頁)、同第一九号証〔「JohnsonジャーナルNo.349」一九八一年四月三〇日号)及び同第二〇号証(乙第一九号証の掲載写真のネガに基づき再度現像焼き付けをし直した写真)に示されたジョンソン株式会社が昭和五六年四月二五日に発売した自動車用液体消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠 右意匠の構成は次のとおりである。
(イ) 平面視において隅角部に大きなアールが付された、
(ロ) 縦薄型の隅丸直方体であり、
(ハ) 透明体の本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であり、
(ニ) その形状は、正面視した場合、縦(高さ)と横(長辺)と奥行(短辺)の比率が、縦(高さ)を一とした場合、ほぼ一対〇・八五対〇・六四であり、
(ホ) 蓋の正・背面には上端から中央部分まで櫛の歯状の透孔(スリット)を縦に七個並列させ、その左右両側面には頂面から中央部分まで櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある、
(ヘ) 自動車用液体消臭芳香剤容器。
右「グレード カーフレッシュ」容器の意匠の構成と本件登録意匠の構成を、原告主張の本件登録意匠の要部について比較すると、両意匠は、A 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であり、B その形状は縦薄型の隅丸直方体であり、C 蓋の上辺の側壁には櫛の歯状の透孔が穿設されている点において共通している。また、「グレード カーフレッシュ」容器の場合、正面視における縦(高さ)、横(長辺)及び奥行(短辺)の比率は正確には不明であるけれども、本件登録意匠のそれと大差ないことは別添「グレード カーフレッシュ」容器の実物の写真(検甲第一号証)からも一見して明白である。
(2) 先願意匠 本件登録意匠の出願当時、次の先願意匠が存在していた。
@ 意匠登録第七一四四一三号意匠公報(乙第六号証)に記載の防臭剤用容器の意匠A 意匠登録第七一四四一四号意匠公報(乙第七号証)に記載の防臭剤用容器の意匠B 意匠登録第七一四四三七号意匠公報(乙第八号証)に記載の脱臭剤用容器の意匠C 意匠登録第七一四四三八号意匠公報(乙第九号証)に記載の脱臭剤用容器の意匠 これら@〜Cの先願意匠には、蓋部に櫛の歯状の多数のスリットを穿設した意匠が開示されている。
(要部についての結論) そこで、以上の公知意匠や先願意匠と本件登録意匠を対比して検討すると(特に乙第一号証に記載の脱臭剤容器の公知意匠(意匠権者原告)と本件登録意匠とを比較すると)、両意匠は、本件登録意匠にあっては、右公知意匠の蓋部分の突起物(フック)がない点(この種容器において蓋部分に突起物〔フック〕を設けるのは通常のありふれた構成であり、その点に特別な意匠の要部があるとは考えられない。)、右公知意匠では全体の形状が円柱体形状であるのに対し、本件登録意匠にあっては、全体の形状が頂面と底面が互いに平行している横長の隅丸一〇面体である点、及び、右公知意匠の本体の表面には斑点状の模様があるのに対し、本件登録意匠の本体は一色無模様である点において差異があるにすぎず、本件登録意匠の創作性の程度は低いものと評価せざるを得ず、結局、本件登録意匠の特徴は、@ 全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体であること、A 蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高いこと、B 蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔の個数が各二二個と多数であること、C そのように透孔の個数が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いこと、D 蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔があけられていないこと、E したがって、蓋部の平面視において、左右両端部分及び中央部分において、櫛の歯状の透孔が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状となっている点にあり、それらの特徴点が一体となった全体形状の具体的構成態様が、意匠の類否判断の要部になるものというべきであるが、前記乙第一三号証の「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠に照し、本件登録意匠の右各特徴点のうち、特に、B(蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔の個数)とD(蓋部頂面左右部分〔平面視〕の形状)の二点が看者の注意を惹く要部として重視されるべきである。
(要部に関する原告主張に対する反論) 原告は、本件登録意匠の要部ないし特徴が次のAないしCの三点、すなわち、A 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器である点、B その基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直方体形状である点、及び、C 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔が穿設されており、平面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映る点にあり、前記「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠は、本体も蓋も不透明体である点において、透明体の本体に不透明体の蓋を被着してなる本件登録意匠の右Aの特徴点を具備していない旨主張する。しかしながら、原告の右主張はいずれも失当である。a まず、本件登録意匠が「透明体を本体」とする旨の原告主張は事実に反する。なんとなれば、原告は、本件意匠登録出願願書添付図面代用写真(甲二九)を見れば本件登録意匠の本体が透明体であることが分かる旨強弁するが、右図面代用写真を精査しても、本件登録意匠の本体が透明体であることはどこにも示されておらず(本体が透明体であれば、右図面代用写真の底面図において、蓋部に設けられた櫛の歯状の透孔〔スリット〕が透けて見えているはずであるが、これが見えていないという一事をもってしても本件登録意匠の容器本体が透明体でないことは明白である。)、かろうじて透光性が若干存在する可能性を認め得るにすぎず、決して「にごりがなく、すきとおっている」という意味の透明とは見えないからである。
そのうえ、当該意匠に係る物品の全部又は一部が透明であるものとして意匠登録を受けるためには、その旨を願書に記載しなければならないところ、本件意匠登録出願願書の意匠に係る物品の説明欄及び添付図面代用写真の意匠の説明欄にも本件登録意匠の本体が透明である旨の説明は全くないから、本件登録意匠の本体が透明体であると解する余地はない。すなわち、意匠法6条8項は、当該意匠に係る物品の全部又は一部が透明であるときは、その旨を願書に記載しなければならない旨規定しており、これを受けて、同法施行規則1条1項は、願書は、様式第一により作成しなければならない旨規定し、様式第1の〔備考24〕は、「意匠法第6条第8項に規定する場合は、『意匠の説明』の欄に同項の規定により記載すべき事項を記載する。」と規定しているのであるから、本件登録意匠の意匠登録出願について、意匠の説明の欄に本体を透明体とする旨の記載がない以上、意匠法6条8項の規定により記載すべき事項(透明)の記載がないものといわざるを得ない。次に、前記「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠の本体が不透明体である旨の原告主張も事実に反する。すなわち、乙第二〇号証に撮影の「グレード カーフレッシュ」容器を見ると、甲第三〇号証(意匠登録第六〇八五〇一号の消臭芳香剤用容器〔「グレードカーフレシュ」容器〕の意匠公報)に記載のAーA線断面図に示されるノズルが透けて見えており、右容器が透明体を本体としていることは明らかである。b また、原告が本件登録意匠の基本的形態として主張する「隅角部に大きなアールが付された」との表現も本件登録意匠の基本的形態を示すものとしては不適切である。なんとなれば、確かに本件登録意匠の隅角部(平面視)にはアールが付されているが、それは全体の寸法に比して「大きな」アールとは到底いえず、そのような小さなアールについては「隅丸」と表現すべきものである。のみならず、
「扁平な直方体形状」との表現も適切ではない。本件登録意匠では中央部が幅広になる(台形と逆台形の結合)形状になっているのであるから、被告主張のように、
「横長の隅丸一〇面体」と表現すべきである。c さらに、本件登録意匠は、平面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状を呈してはいるが、それは、特に前記「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠と対比して考えると、平面視左右両端部に櫛の歯状のスリットが穿設されていない特徴と併せて本件登録意匠の要部となっているものというべきである。したがって、以上の諸事実を総合考慮すると、本件登録意匠も前記「グレード カーフレッシュ」容器の公知意匠も、半透明体ないし透明体を本体とし、該本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、その形状が縦薄型の隅丸直方体であること、及び、蓋の上辺の側壁に櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されているという構成において何ら差異はない。
してみれば、原告主張の前記AないしCの本件登録意匠の構成は、前記公知意匠ないし先願意匠の構成に全て採用されており、本件登録意匠の要部がこれらの構成にのみ存すると解するときは、本件登録意匠は右公知意匠ないし先願意匠に類似し、無効事由を有することになるから、そのように解することはできない。
(三) 本件類似意匠について 本件類似意匠の意匠登録出願日はいずれも平成元年一二月二九日であるが、被告意匠を使用した被告商品「においパクパク」は同年四月頃から製造販売されていたのであり、本件類似意匠は被告意匠と類似するものであるから、本件類似意匠の意匠登録出願は出願前の公知意匠である被告意匠の存在によって新規性のないものとして本来拒絶されるべきものであり、登録された後は審判により無効とされなければならない。したがって、本件意匠権侵害の成否を判断する際には、本件類似意匠の意匠登録を考慮せずに、あくまでも被告意匠と本件登録意匠(本意匠)だけを対比観察すべきである。すなわち、乙第三六号証(石鹸日用品新報・平成四年一一月一四日発行第四〇六五号の記事)によれば、原告は、故意に被告商品の意匠(被告意匠)に酷似する意匠をデザインして本件類似意匠の意匠登録出願をした事実は明らかである。右類似意匠登録出願の時点で被告商品は既に市場で販売されていたのであるから、この事実だけからしても、本件類似意匠の意匠登録出願は出願前の公知意匠(被告意匠)に酷似する意匠の出願として無効とされるべきである。さらに、右記事中にもあるように、被告商品のデザインが原告の意匠登録出願中であった原告商品「ニオイのみはり番 #4000」の意匠の意匠権の類似範囲に包摂されるかどうかを確かめるために、それと酷似したデザインのものを類似意匠登録出願したものであり、そうだとすれば、本件類似意匠の創作者は被告というべきであるから、右類似意匠登録出願が冒認出願として無効であることは論を待たない。したがって、いずれにしても被告意匠と本件類似意匠を対比観察することによって、
被告意匠と本件登録意匠の類否を判断することは許されない。
(類似意匠に関する原告主張に対する反論) 原告は、類似意匠は、本意匠の類似範囲を確認する資料にすぎないから、本意匠の意匠登録出願前に存在した公知意匠や先願意匠に類似するものであってはならないが、本意匠の出願後類似意匠の意匠登録出願前に発売された商品の意匠によって無効とされるべきいわれはない旨主張するが、右主張は理由がない。なんとなれば、類似意匠であっても、その登録要件については意匠法3条の適用があるから、
本意匠の出願後類似意匠の意匠登録出願前に販売された商品の意匠が類似意匠と同一又は類似のものであれば、右商品の意匠の存在によって当該類似意匠の登録は無効とされるべきであるからである。
原告は、確認説に立脚する被告主張と本意匠出願後類似意匠の意匠登録出願前に存在する先願意匠や公知意匠により類似意匠登録出願を拒絶(登録された後は無効に)すべきものとする被告主張は明らかに矛盾する旨主張し、その根拠として、本意匠の意匠登録出願後、類似意匠の意匠登録出願前に存在する先願意匠や公知意匠によって類似意匠の意匠登録出願を拒絶(登録された後は無効に)すれば、結局は本意匠の類似範囲を確認することができなくなってしまい、類似意匠登録制度の趣旨そのものが没却されることになるからである旨主張する。しかしながら、右のような原告の確認説の理解は皮相にすぎ、類似意匠登録制度の趣旨に関する確認説と類似意匠の新規性判断基準日を本意匠の出願時点とすることとの間には、原告主張のような関連性はない。意匠法10条1項にいう「自己の登録意匠にのみ類似する意匠」とは、自己の登録意匠以外のものに類似する場合を全部排除する趣旨であって、自己の登録意匠にも類似するが、同時に他人の登録意匠、他人が公知にした意匠、及び他人の先願意匠にも類似する意匠は、類似意匠の登録はできないものといわなければならない(審査基準一〇ー一〇〇〇)。したがって、これと前提を異にする原告の右主張は失当である。
原告は、本件類似意匠の意匠登録出願が被告意匠の冒認出願である旨の被告主張に対して、原告の本件類似意匠が本件登録意匠(本意匠)に類似するものとして類似意匠登録された以上、本件類似意匠は、本件登録意匠の創作と同一性を有するものと特許庁審査官によって認定判断されたのであるから、被告意匠の冒認出願であるはずがない旨主張する。しかしながら、冒認出願であるか否かは事実問題であり、特許庁が本件類似意匠の意匠登録をしたからといって、この冒認出願の事実が消滅することはない。原告が、ことさらに被告意匠と酷似させた意匠を自らの創作に係る意匠として意匠登録出願をし登録査定を受けたことは、いわば特許庁を欺罔して意匠登録を受けたというに等しく、そのようにして取得した本件類似意匠と被告意匠とを対比観察して、本件意匠権侵害の成否を論じることは許されない。
(四) 本件登録意匠と被告意匠の対比(被告意匠の構成) 被告意匠の構成は次のとおりである。
【被告容器(1)意匠の構成】 被告容器(1)意匠の構成は次のとおりである。
(1) 被告容器(1)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(1)の構成態様@ 基本的構成態様 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体である。その上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成し、下部は横長な扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成し、蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成している。
A 具体的な構成態様 蓋部に本体を嵌め込んで一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇五対〇・四六九で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四五九対〇・五四一であり、蓋部と本体の具体的形状は左記のとおりである。
Bイ 蓋部の具体的形状(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・四〇対二・二八九とし、中央頂辺と底辺とは、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。七面形の下方部分には、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている。蓋部の高さと帯体の高さの比率は、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四六七である。蓋の上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から帯体上辺近くまでに櫛の歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。七面形の長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、七面形の長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・四八である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺を平行する直線とした横長な小判型で、帯体外周縁のごく僅か内側に蓋部上面外周縁が平行して表われている。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜面は、かまぼこ形で、
頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字状(右側はコの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから帯体の左右円弧状の縁まで、
左右対称に櫛の歯状の透孔を横に各七個並列させてあけてある。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・九六対一・〇四四とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している矩形状(矩形に極めて近似した台形)に表われている。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。矩形状下方部分は、正・背面と同様な、ごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている。矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺のごく近くから帯体上辺近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある。上方にかまぼこ形斜面の外縁が凹弧に表われている。
ロ 本体の具体的形状(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ(蓋部に被着されて見えなくなる部分を除く。以下同じ)、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・九四三対一・八八七とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状(横長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長矩形状本体の上辺(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二四分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・七七三対〇・七一七とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)に表われている。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左右両側面は、ごく僅か外方へ傾く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、
正・背面と同様なごく僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二四分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判型で、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。頂辺外周縁の横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・九四三対〇・八一一対一である。
(d) 本体は透明であるが、その正面に別紙被告物件写真(一)の正面図のとおり模様が付されている。
【被告容器(2)意匠の構成】被告容器(2)意匠の構成は次のとおりである。
(1) 被告容器(2)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(2)の構成態様@ 基本的構成態様 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体である。その上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成し、下部は横長な扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成し、当該蓋部に本体を嵌め込ませて一体に形成している。
A 具体的構成態様 蓋部に本体を嵌め込んで一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇七対〇・五七で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・三六対〇・六四であり、各部の具体的形状は左記のとおりである。
Bイ 蓋部の具体的形状(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・四八対二・九六とし、中央頂辺と底辺とは、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。蓋の上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から蓋部中央部近くまでに櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。七面形の長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、七面形の長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・三三である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺を平行する直線とした横長な小判形である。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部分をH字状に残し、その横中央部分の上・下辺から蓋部上・下辺(平面視)まで、
上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜面は、かまぼこ形で、頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字状(右側はコの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから左右円弧状の縁まで、左右対称に櫛の歯状の透孔を横に六個並列させてあけてある。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・六三対一・七四とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している矩形状(矩形に極めて近似した台形)に表われている。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺近くから蓋部中央部近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。上方にかまぼこ形斜面の外縁が凹弧に表われている。
ロ 本体の具体的形状(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・五六対一・五二とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状(横長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長矩形状本体の上辺(蓋部の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二四分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・八一対〇・七七とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)に表われている。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左・右両側面は、ごく僅か外方へ傾く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部の下辺の下)は、正・背面と同様なごく僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ二四分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判形で、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。頂辺外周縁の横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・五六対〇・七九対一である。
(d) 本体は透明であるが、その正面に別紙被告物件写真(二)の正面図のとおり模様が付されている。
(被告意匠と本件登録意匠の相違点)【被告容器(1)意匠について】 本件登録意匠と被告容器(1)意匠は、本件登録意匠の要部である前記@ないしDの具体的構成態様に関して次のとおり差異がある。すなわち、
T @の全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体である点について 被告容器(1)は、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体で、その上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成しており、蓋部上面中央の頂面のみを底面と平行するにすぎず、その頂面の左右が斜面を形成していること、及び、蓋部及び本体の両端部は半円柱状の曲面により構成されていることから、本件登録意匠の特徴@を備えていない。
U Aの蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高い点について 被告容器(1)は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・八五倍で、蓋部の高さは大変に低いことから、本件登録意匠の特徴Aを備えていない。
V Bの蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔が各二二個と多数である点について 被告容器(1)は、蓋部の上方部分に縦にあけられた透孔は各一一個で数が本件登録意匠に比べ少ないことから、本件登録意匠の特徴Bを備えていない。
W Cの透孔が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭い点について 被告容器(1)は、透孔が少なく、蓋部左右に残った部分の幅が大変広いことから、本件登録意匠の特徴Cを備えていない。
X Dの蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔はあけられていない点について 被告容器(1)は、蓋部の中央頂面左右両端(平面視)が、対称の幅の広いかまぼこ形の斜面で、その斜面には櫛の歯状の透孔が横に七個並列させてあけられていることから、本件登録意匠の特徴Dを備えていない。
【被告容器(2)意匠について】 本件登録意匠と被告容器(2)意匠は、本件登録意匠の要部である前記@ないしDの具体的構成態様に関して次のとおり差異がある。すなわち、
T @の全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体である点について 被告容器(2)は、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体で、その上部は、横長な扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成しており、蓋部上面中央の頂面のみを底面と平行するにすぎず、その頂面の左右が斜面を形成していること、及び、蓋部及び本体の両端部は半円柱状の曲面により構成されていることから、本件登録意匠の特徴@を備えていない。
U Aの蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高い点について 被告容器(2)は、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・五六倍で、蓋部の高さは大変に低いことから、本件登録意匠の特徴Aを備えていない。
V Bの蓋部頂面から正・背面中央部分にあけられた櫛の歯状の透孔が各二二個と多数である点について 被告容器(2)は、蓋部の上方部分の正・背面に縦にあけられた櫛の歯状の透孔は各六個で、数が本件登録意匠に比べ少ないことから、本件登録意匠の特徴Bを備えていない。
W Cの透孔が多数であるため、透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭い点について 被告容器(2)は、透孔の数が少なく、蓋部左右に残った部分の幅が大変広いことから、本件登録意匠の特徴Cを備えていない。
X Dの蓋部頂面左右部分(平面視)が、幅の狭い平坦面で、透孔はあけられていない点について 被告容器(2)は、蓋部の中央頂面左右両端(平面視)が、対称の幅の広いかまぼこ形の斜面で、
その斜面には櫛の歯状の透孔が横に六個並列させてあけられていることから、本件登録意匠の特徴Dを備えていない。
【その余の相違点について】 本件登録意匠の本体と被告容器の本体を対比すると、本件登録意匠にあっては、
本体は一色無模様であるのに対し、被告容器の本体は透明であり、その正面部に別紙被告物件写真(一)又は(二)のとおり模様が付されており、この模様は特徴的であって、その点で特に本件登録意匠と相違する。
なお、被告容器の全体形状が横長な扁平小判型柱体で、両側面が弧面を形成している点及び頂面左右両端の斜面に櫛の歯状の透孔が各七個ないし六個並列されている点は単なる形状の変更ではなく、被告容器を脱臭剤容器として冷蔵庫内に入れて使用する場合に、脱臭剤容器の周囲又は上に食品などが詰められたとき、脱臭効力が低下するのを防ぐ作用効果を生じることを意図したものである。すなわち、左右に物が並んでも左右両側面が弧面を形成しているため、また、蓋部の頂面に物が積み重なっても、左右両端が斜面であるため、そこに隙間があき、その上、斜面から両側面にかけて透孔があけられているので、正・背面及び頂面が塞がれても、脱臭効力を損うことがない。この点は、他の意匠に見られない被告容器の特徴ある態様であって、被告の創作した意匠である。また、被告容器の正面部に別紙被告物件写真(一)(二)に撮影の模様が付されている点は大変に特徴的であり、視覚的印象は本件登録意匠のそれと著しく異なる。
(原告の主張に対する反論) 原告は、右各相違点について、被告意匠と本件類似意匠を対比し、被告が被告意匠の特徴として主張するところは、いずれも本件類似意匠の中に表わされている旨主張するが、右対比自体失当である。被告意匠が本件類似意匠と同一でない以上、
そのような対比は、類似意匠との類否判断とならざるを得ないからである。原告は、本件訴訟において、被告が本件登録意匠と被告意匠の相違点として主張する点は、いずれも本件登録意匠と本件類似意匠との間にも存在する相違点であるから、
それらは本件登録意匠の要部に関しない相違点であり、意匠の全体観察上、その比重は低いものとして評価すべきであると主張しているのであり、被告に対し、あくまでも本件登録意匠の意匠権の侵害を追及しているのであって、本件類似意匠の意匠権の侵害を追及しているものではない旨主張するが、その実質が本件類似意匠の意匠権の侵害を追及している結果となっていることは前記したところから明らかというべきである。
(類否についての結論) 本件登録意匠と被告意匠を全体的に観察した場合、両者に若干の共通点はあるとしても、それらは全てこの種物品にありふれた形態であり、本件登録意匠の要部である前記@ないしDの特徴点が一体となった全体形状の具体的構成態様に関する両意匠の相違点は顕著であり、両意匠は、全体として看者に別異な印象を与えるものであって、視覚を通じての美感を全く異にするから互いに類似していない。
二 争点2(原告商品の形態がいわゆる商品表示性及び周知性を取得したか)1 原告主張(一) 原告商品の形態 原告が現在までに発売した冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」シリーズ商品の各形態は次のとおりである。
(1) 昭和五七年一〇月発売の、容器外形が別紙原告商品写真(一)の容器を使用し、右容器に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番」(検甲第二号証) 右商品の形態は、縦に細長い有底円柱体状の透明容器本体内に緑色に着色した、
悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填し、その本体にかぶせ蓋式の白色不透明で頂面から前後両側面にかけて櫛の歯状の透孔を多数穿設し、かつ、フックを突設した蓋を被着せしめてあり、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状の透孔を有する蓋がかぶせられているように見え、使用中に本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得るものである。
(2) 昭和五八年九月発売の、容器外形が別紙原告商品写真(二)の容器を使用し、右容器に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した吊り下げ型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 ビック」(検甲第三号証) 右商品の形態は、(1)の商品と比べ、縦寸法が小さく(約一〇分の九)、直径が大きい太い円柱体(約一・六倍)であるだけで、他は(1)の商品と同一である。
(3) 昭和六一年三月発売の、別紙原告商品写真(四)の容器を使用し、右容器に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 野菜室用」(検甲第四号証) 右商品の形態は、(1)の商品と比べ、縦寸法が小さく(約一〇分の六)、直径が大きく(約一・二四倍)、かつ、蓋の上面が球面を呈し、フックを有しないだけで、他は(1)の商品と同一である。
(4) 昭和六二年二月発売の、別紙原告商品写真(三)の容器を使用し、右容器に緑色に着色した、悪臭を化学的に分解、中和するゲル状タイプの脱臭剤を充填した、載置型冷蔵庫用脱臭剤「ニオイのみはり番 #4000」(検甲第五号証) 右商品の形態は、蓋にフックがなく、容器本体も蓋も隅角部に大きなアールが付された横長の扁平な直方体であるが、他は(1)の商品と同一である。
(二) 「ニオイのみはり番」シリーズ商品の形態の特徴、及びその商品表示性及び周知性の取得 「ニオイのみはり番」シリーズ商品には、(一)で述べたとおり、細長い円柱体、太い円柱体、横長の扁平な直方体というように、種々の容器のものがあったが、いずれも、商品の形態において次の四つの特徴点すなわち、@ 内部に収容された脱臭剤の着色が外部から透けて見える透明体を本体とし、該本体にかぶせ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用いていること、A 蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状の透孔を多数穿設していること、B 透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状透孔を有する蓋がかぶせられているように見えること、C 使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得ることの四つの特徴点を全て備えている。
そして、原告は、この「ニオイのみはり番」シリーズ商品の発売開始以来、その宣伝広告活動を精力的に展開し、特に全国的に放映したスポットテレビCMの広告投下量は、近畿地方で六六〇〇GRP、関東地方で五八〇〇GRP、中部地方で五一〇〇GRPに達するなど、広告到達度及び頻度とも一般に周知たらしめるに充分な量であり、この間に製作したテレビCMフィルムは全部で一七本(製作費約一億五〇〇〇万円)にものぼり、右テレビCMフィルムの放映費用は約一三億円にも達している。また、新聞広告については、昭和五七年一〇月から昭和五八年一二月までの間に、全国主要新聞の東京、大阪、名古屋及び九州版などの各地区版に、七段通し又は一〇段通しの大きなスペースを割いた広告を延べ二四回にわたって掲載し、その掲載費用は総額約一億七〇〇万円にも達し、その他、小さなスペースを割いた広告をスーパーマーケットやチェーンストア等量販店向けの業界誌及び販促資料等への広告量もかなりの量に及んでいる。そして、原告は、昭和五八年に社会行動研究所に委託して「ニオイのみはり番」の認知率について大阪地区で消費者調査を実施したが、この調査では、@ 「ニオイのみはり番」の認知経路はテレビCMが九二%と圧倒的であり、A 認知率は約半年の間に七二%にも達し、B コマーシャルの訴求点である「中身が見えて取り替え時期が分かる」という点は良く理解され(七一%)、特に「効き目が見える」という言葉に特化してこれを理解している人は全体の四六%にも達しているという結果が出ている。以上のように原告がたゆまぬ営業活動及び宣伝広告活動を積み重ねた結果、「ニオイのみはり番」シリーズ商品の販売量は、販売個数で総計約四〇〇〇万個、売上高(定価ベース)で約一六〇億円に達し、昭和六一年から昭和六三年までの三年間の脱臭剤の市場分野における同シリーズ商品のシェアは、従来の活性炭吸着タイプの「キムコ」及び「ノンスメル」のそれに迫る二〇%内外にまで上昇し、「活性炭を使うキムコ、ノンスメルの二ブランドがマーケットシェアの大半を占める時期が、’80年始めまで続いたが、’82年(全国発売は’83年)に積水化学工業が、従来の活性炭ではなく、薬液剤を使った商品「ニオイのみはり番」を上市、液剤であるため中身の減少によって取り替えの時期がすぐわかるなど、活性炭タイプの商品の欠点を克服した点や量販店主体のルート展開などが主婦を中心とした消費層に受け入れられ、キムコ、ノンスメルと並ぶブランドとなった。」(甲第七五証の一一〇頁「マーケットシェア」の表及び一〇七頁の記事A項参照)と評されるまでに至った。したがって、前記@ないしCの四つの特徴点の結合が不正競争防止法2条1項1号の「他人の商品等表示」(改正前の不正競争防止法1条1項1号の「商品ノ容器包装其ノ他他人ノ商品タルコトヲ示ス表示」)に該当することは明らかであり、右商品等表示は、遅くとも被告が被告商品「においパクパク大」の発売を開始した平成元年四月頃には、日本全国の脱臭剤の取引者・需要者の間において、原告販売の脱臭剤の商品表示として広く認識されるに至り、その状態は現在も変ってはいない。特に、右周知性取得の過程で原告が用いた「効き目が見える」というキャッチ・フレーズ(コピー)は、効果の持続性が一目で分ることを端的に表現するために原告が案出した独創的なものであり、商品カタログやテレビCM等の中で盛んに活用してこれを一般に広く知らしめ、右テレビCMは全日本CM協議会のACC賞も受賞し、
「効き目が見える」のキャッチ・フレーズ(コピー)は、原告商品の特徴を示すものとして著名になっている。
(被告主張に対する反論)(一) 被告は、原告主張の原告商品表示の前記@ないしCの四つの特徴点は、いずれも一般的なものであって、特別顕著なものではない旨主張し、その根拠として、@ 原告商品の「ニオイのみはり番」シリーズ商品には、細長い円柱体、太い円柱体、横長で扁平な直方体等種々の容器形状のものが存在すること自体からしても、右容器形状には格別の特徴ないし独自性がない、A 本体が透明であることも、蓋が白色であることも極めて一般的な形態である、B 蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状のスリットが多数穿設されていることは、この種の脱臭剤容器にあっては、機能的な面から当然設けられるべき必須の構成であり、原告主張の右各特徴点は、乙第三号証ないし第九号証掲載の意匠においても採用されている一般的な構成であり、他人の商品と区別されるような特別顕著なものではない旨主張する。しかしながら、@の原告容器の形状については、被告主張のように原告商品の中にも種々の容器形状の異なる商品があり、それ単独では原告商品の特徴とはいえず、また、A及びBの「透明容器」「白色の蓋」「蓋に穿設された櫛の歯状のスリット」などの構成を個々別々に分離して取り上げれば、それらは原告商品の商品表示とはいえないかもしれないが、@「透明容器と白色の大きな蓋」A「蓋に穿設された櫛の歯状の透孔」B「透明容器内の緑色のゲル状タイプの脱臭剤が外部から看取され、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状の透孔を有する蓋がかぶせられているように見えること」C「使用中に本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得ること」の四つの特徴を全部備えた原告商品の形態は、原告商品と自他商品を識別する上で顕著な機能を果たしているものであり、原告商品の容器形状に種々のものが存在するとしても、全ての商品が右の四つの特徴点を具備していることから、一度原告商品を購入した需要者は、右の四つの特徴点を具備している限り、その商品を原告商品と同種の商品として認識し、安心して購入する動機付けとなることには疑いをいれる余地がない。したがって、被告の右主張は失当というべきである。
(二) 被告は、透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤が充填されているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状の透孔を有するように見え、使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが見えるという原告商品の商品形態の特徴は、換言すれば「外部から充填されていた脱臭剤が徐々に減少することが見える」という商品コンセプトを示すものにすぎず、そもそも透光性があるか又は透明な容器であれば、その中身が外部から見えるのは当然であり、そこに何らかの意味があるとすれば、冷蔵庫用脱臭剤において、使用中に脱臭剤が揮発し、外部からその減り具合が見えるということにあると考えられるが、原告が原告商品「ニオイのみはり番」の発売を開始した昭和五七年一〇月よりはるか以前に商品名「ホワイト」なる冷蔵庫用消臭剤が既に発売されており、右商品は、原告主張の使用中に緑色に着色されたゲル状タイプの脱臭剤が揮発し、透明な容器本体の外部からその減り具合が見えるという特徴を有していた旨主張し、乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.3)中の、「……類似品は既に’80年に家庭用品メーカーのファストリビング社から「ホワイト」というブランドが発売されている。」との記載を援用する。しかしながら、株式会社富士経済が逐年発行している、この「トイレタリーグッヅマーケティング要覧」中の「ホワイト」に関する記事はこれだけであり、その前後の同要覧には一切記載がみられない。また、右乙第二六号証の三七頁の「マーケットシェア」の項及び同三八頁の「ブランドシェア」の項(甲第七四号証)には、「ホワイト」のシェアに関する記述は全くない。さらに、被告指摘の「ホワイト」に関する広告も昭和五五年中に発行された雑誌「ミセス」に掲載されたもののみであり、その後の宣伝広告活動や販売状況を示す証拠資料は一切ない。したがって、以上の事実からすると、「ホワイト」は、極めて短期間に市場から消え、その販売数量も市場調査のシェア欄では取り上げられない程の微々たるものであったことは明らかである。のみならず、「ホワイト」の容器形状は、メンソレータムのような単純な円柱形状の瓶に白色の蓋をかぶせただけの何の変哲もないものであり、前記原告商品の四つの特徴点を具備するものではなく、それが日本国内において広く認識されたものとは到底いうことができない。前記原告商品の四つの特徴点は、原告が莫大な宣伝広告費を投下するなどたゆまぬ営業努力の結果獲得したものであり、仮に「ホワイト」の容器形状が原告容器形状に類似するとしても、それは単に販売者のファーストリビング社が不正競争防止法2条1項4号にいう「善意の類似表示の使用者」に該当するだけのことであって、原告商品形態の商品表示性に影響を及ぼすものではない。
なお、被告提出の乙第二六号証ないし第三一号証には、却って原告商品の特異性、話題性及び著名性を裏付ける左記の記載があるので、原告は、それらを原告商品形態の商品表示性及び周知性取得に関する立証資料として有利に援用する。
(1) 乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.3三四頁)の、「(アメリカンドラッグコーポレーションと白元の)二社によってほぼ独占されてきたような脱臭剤市場であるが、’82年末には積水化学から「ニオイのみはり番」という新製品が発売され、’83年中には一〇%近いシェアを獲得するのではないかと業界の注目を集めている。「キムコ」、「ノンスメル」が活性炭製品であるのに対し、「ニオイの見張り番」は緑色の薬液剤である点で根本的に違っている。液剤がなくなっていくことにより、効果が目に見え、商品のエンドポイントがはっきりわかることをメインに訴求しているもので……よって、’83年以降の市場については、このニュータイプ脱臭剤がどの程度市場で受け入れられるかに最大のポイントが置かれている。強力二社の独占市場に第三者が入り込めることになれば、脱臭剤市場は新しい時代を迎えることになる。」との記載。
(2) 乙第二七号証(同「’86トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.2一二二頁)の、「脱臭剤市場は、積水化学の参入によって市場は大きく変動しており、アメリカンドラッグコーポレーション、白元の上位二社による寡占化からシェア分散型市場となっている。……積水化学は、ニオイの見張り番によってシェア第三位に進出を果したのみならず、八五年以降は、二位、一位をターゲットとして狙えるポジションを確立させた。
ニオイの見張り番の成功は、使用期間がゲル状の薬液剤を起用したことで、視覚で判断できることがあげられ、従来の活性炭製品にないコンセプトによって消費者の支持を得るに至った。」との記載。
(3) 乙第二九号証(同「’91トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.3六〇頁〜六一頁)の、「積水化学工業は、関西圏の地場で強力な勢力をもっており、三位メーカーの地位を確保している。……においの見張り番は、安定した推移をたどっており、’90年で九億円程度となっている。」との記載。
(4) 乙第三〇号証(株式会社矢野経済研究所発行「芳香消臭・脱臭産業白書’89」四四頁)の、「一九八三年に取り替え時を示唆したにおいの見張り番で冷蔵庫用脱臭剤市場に新風を吹き込んだ積水化学工業は、脱臭効果に加え酸化防止剤を混入した脱臭剤を上市。大型化や部位別(冷凍庫、野菜室など)の用途展開がほぼ出尽くしたことから機能アップにより、差別化を図っている。」との記載。
(三) 被告は、原告主張の原告商品形態は、「透光性のある本体の外部から中身が見え、減り具合が分かる」といった程度のものであり、そもそもそれは出所表示機能を発揮せず、仮に出所表示機能があるとしても、それは極めて低レベルのものであるから、強力な出所表示機能を有する商標によってその大半の機能が発揮されている以上、全体観察として、「透光性のある本体の外部から中身が見え、減り具合が分かる」といった程度の原告主張の商品表示機能は否定されるべきである旨主張する。しかしながら、原告商品は、「透光性のある本体の外部から中身が見え、
減り具合が分かる」点のみではなく、前記@ないしCの特徴を全て具備していることによって商品表示性を取得しているのであるから、右被告主張はその前提において既に誤っているというべきである。
2 被告主張 原告は、原告商品の形態、@ 内部に収容された脱臭剤の着色が外部から透けて見える透明体を本体とし、該本体にかぶせ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用いていること、A 蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)を多数穿設していること、B 透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状透孔(スリット)を有する蓋がかぶせせられているように見えること、C 使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得ることの四つの特徴があり、この特徴全てを具備していることが原告商品の商品表示である旨主張する。
しかしながら、右原告主張を認めることはできない。すなわち、第一に原告商品の容器本体は別紙原告商品写真(一)ないし(六)からも明らかなように、いずれも透光性はあるものの透明ではなく、乳白色の不透明なものである。特に、別紙原告商品写真(六)の原告商品は、本体が乳白色の透光性のある部分と白色不透明な部分とからなり、原告主張の@の特徴を具備していない。第二に別紙原告商品写真(四)の原告商品の蓋部分は曲面によって構成されており、透孔(スリット)の存在は認められるものの、それが側壁に穿設されているものとは認められず、それを櫛の歯状といい得るかも大いに疑問である。さらに、別紙原告商品写真(六)の原告商品の蓋部分には、側壁に透孔(スリット)が存在しない。
商品の容器包装が「他人の商品たることを示す表示」であるためには、当該容器包装が、通常の形と異なる特徴ある形とか包装紙の模様によって他人の商品と区別されるにいたったような特別顕著なものである必要がある(【A】編著「注解不正競争防止法」一一七頁)。
原告は、原告商品「ニオイのみはり番」シリーズ商品の容器形状には、細長い円柱体、太い円柱体、横長で扁平な直方体等の種々のものが存在する旨主張しているのであるから、右原告主張自体に照らしても、右容器形状には特徴ないし独自性はないものといわなければならない。
原告は、内部に収容された脱臭剤の着色が外部から透けて見える透明体を本体とし、該本体にかぶせ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用いていることが原告商品の特徴である旨主張する。しかしながら、原告商品の容器本体は、前記したようにいずれも透明ではなく、透光性はあるものの、乳白色の不透明なものである。また、その点を暫く措くとしても、原告主張は、換言すれば「本体が透明で(透光性がある)蓋が白色である容器」をいうにすぎないが、本体が透明であることも、蓋が白色であることも極めて一般的に使用されている構成であり、そのような構成を採用した容器に様々なものがあることも多言を要しない。
原告は、蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)を多数穿設していることが、原告商品の商品表示の特徴である旨主張する。しかしながら、透孔(スリット)の存在は、この種の脱臭剤容器にあっては機能的な面から当然設けられるべき必須の構成とさえいえるのであり、原告主張の特徴は、意匠登録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器、意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容器、意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器、意匠登録第七一四四一三号意匠公報(乙第六号証)に記載の防臭剤容器、意匠登録第七一四四一四号意匠公報(乙第七号証)に記載の防臭剤容器、意匠登録第七一四四三七号意匠公報(乙第八号証)に記載の脱臭剤用容器及び意匠登録第七一四四三八号意匠公報(乙第九号証)に記載の脱臭剤用容器の各意匠に共通してみられる構成であり、この種商品の容器には極めて一般的な構成であって、それは他人の商品と区別されるような特別顕著なものではない。
原告は、透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状スリットを有する蓋がかぶせられているように見えること及び使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得ることが原告商品の商品表示の特徴である旨主張する。しかしながら、右各特徴は、換言すれば要するに「外部から充填されていた脱臭剤が徐々に減少することが見える」というものにすぎない。これは、単なる商品コンセプト又は商品自体の特性にほかならない。透光性があるか又は透明な容器であれば、外部から中身が透けて見えるのは当然のことであり、そこに何らかの意味を見出すとすれば、冷蔵庫用脱臭剤において、使用中に脱臭剤が揮発し、外部からその減り具合が見えるということにあるものと考えられる。しかし、原告が原告商品「ニオイのみはり番」の発売を開始した昭和五七年一〇月よりはるか以前に既に商品名「ホワイト」なる冷蔵庫用消臭剤が発売されており、右商品は、原告主張のように使用中に緑色に着色されたゲル状タイプの脱臭剤が揮発し、透明な容器本体の外部からその減り具合が見えるという特徴を具備していた。
原告は、この「ホワイト」について、昭和五五年のごく一時期、僅かに販売されたにすぎない旨主張するが、乙第二二号証ないし第二五号証に記載されているように、伊勢丹、小田急、京王、西武、そごう、大丸、高島屋、東急、東武、松坂屋、
阪急、阪神、松屋など全国の一流デパートでも販売されていたものであって、ごく一時期、僅かに販売されていたものにすぎないなどとは到底いえない。また、脱臭剤と産業上の利用分野が類似する商品である自動車用液体消臭芳香剤については、
例えば、ジョンソン株式会社製の「グレード カーフレッシュ」は、透明体を容器本体としているため、芳香剤が揮発し外部からその減り具合が見えるものであり、
そのような商品コンセプトに基づく商品が他にも種々数限りなく存在することは公知の事実というべきである。そもそも商品コンセプトや商品の特性それ自体は、商品等表示とはなり得ない。すなわち、商品コンセプトは、商品の特性それ自体であって、これを商品等表示として認め、同様の商品コンセプトを有する商品の販売等を不正競争行為として差止めることを認めるならば、それは商品自体を保護することに帰着するからである。不正競争防止法2条1項1号は、商品の販売自体を禁じる趣旨の規定ではなく、複数の出所が存在することを前提に、その間に誤認混同を生ぜしめる出所識別表示が付されることを禁じる趣旨の規定である。例えば、仮にこれまでにない新規な機能を持つ製品が開発され、その新規な機能自体(ここでは商品の形態を除いて考える。)が周知性を獲得した場合であっても、その新規な機能を独占するためには、特許権その他の工業所有権によらなければならないのであって、不正競争防止法は、その新規な機能自体を出所識別表示機能として保護することまで意図していない。したがって、そのような見地からすると、原告主張の原告商品表示の特徴は、ことごとく特別顕著な商品表示とはいえず、この種商品においてはごく一般的でありふれたものというべきである。
以上のとおり、原告が原告商品表示の特徴として主張するところは、いずれも特別変ったものではなく、この種商品の容器としてはごく一般的な態様であり、そのような構成態様の原告容器が、「他人の商品たることを示す表示」として他人の商品と区別されるにいたったとすることはできない。仮に何らかの理由により、原告主張の商品形態の前記特徴の一部に識別力があるとしても、それはごく低レベルのものであり、原告商品において、自他識別力を有し、看者に特別の印象を与えるものは、原告商品に大きく表示されている「ニオイのみはり番」及び原告の商標である「SEKISUI」である。
三 争点3(被告商品の形態は原告商品の形態に酷似し、かつ、両商品の出所の混同を生じるか)1 原告主張 被告商品は、容器形状において、検甲第二号証ないし第四号証の原告商品(「ニオイのみはり番 スーパー」「ニオイのみはり番 スーパービッグ」「ニオイのみはり番 野菜室用」)とは異なるものの、検甲第五号証の原告商品(ニオイのみはり番 #4000)とは酷似し、かつ、原告商品の前記四つの特徴を全て具備しており、「効果(中身が減ること)が見えるから、取り替え時期が分かる。」という原告商品と同一の商品コンセプトを採用した商品であり、しかも「効き目が見える」というキャッチ・フレーズ(コピー)を使用して販売している。そのうえ、被告商品は、実際にスーパーマーケット等の小売店舗の売場の同一コーナーに、甲第二八号証に撮影のような陳列態様で、種々の容器形状を有する原告商品と隣り合わせに並べて販売されているから、需要者は、容器形状や包装形態の差異よりも、蓋の白色と本体の緑色の組み合わせの特徴点の方がすぐに目につき、被告商品を原告販売の「ニオイのみはり番」シリーズ商品中の一種類の商品として認識し、その結果、両商品の出所に混同を生じることは必定である。また、たとえ両商品が別々のコーナーで陳列され販売されたとしても、同様に出所の誤認混同は避け難く、事実既にそのような誤認混同事例の発生が報告されている(甲第四号証、第二八号証)。被告商品の形態が原告商品の形態に類似し、両商品の間に出所の混同を生じることは明らかである。
(被告主張に対する反論) 被告は、原告が多大の宣伝広告をしたと主張する対象商品は、全体形状が細長い円柱体形状の「ニオイのみはり番」(検乙第一号証)であるから、被告商品の形態が原告商品の形態に類似し、両商品の間に出所の混同を生じるか否かは、この円柱体形状の「ニオイのみはり番」と被告商品とを対比観察して判断すべきである、原告商品には、「ニオイのみはり番」の商品名及び「SEKISUI」の商標が付されており、原告商品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与えるものはこれらの商品名及び商標であり、一方、被告商品には、その登録商標である「においパクパク」の商標(乙第一〇号証)及び関西ペイントグループ各社の共通商標として著名な「アレスコ(ALESCO)」の商標が付され、かつ、特徴的なカバの図柄も付されているから、被告商品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与えるものはそれらの商標及び図柄であって、需要者は、それらの商標及び図柄を基準にして各冷蔵庫用脱臭剤の商品出所を判断するのであり、「充填されていた脱臭剤が徐々に減少することが外部から見える」といった、冷蔵庫用脱臭剤の商品特性ないし商品コンセプトによって商品出所を判断するものでないことは明白であるから、原告商品と被告商品との間に商品出所の混同を生じることはない旨主張する。しかしながら、商標が自他識別力を有することは当然のことであり、被告の主張は、両商品に異なる商標さえ付しておけば、たとえそれらの容器包装等が外観上酷似していたとしても何等問題を生じないとの主張に帰着せざるを得ないが、右主張が妥当でないことは種々論じるまでもない。特異な容器、包装及び商品形態は、市場における使用の継続によって、商標と同様に第二義的に自他商品の識別力を有するに至る場合がある。したがって、たとえ異別の商標や図柄等の平面的なデザインが同時に付されていたとしても、容器、包装及び商品形態のいずれかによって需要者が商品を選択購入するよすがとする場合が多々存することは、不正競争防止法2条1項1号(改正前の不正競争防止法1条1項1号)の規定に照らし明らかである。一度原告商品を購入した需要者は、被告商品が原告商品の前記四つの特徴のうち@ないしBを有しておれば、残りの特徴C、すなわち、使用中に容器本体内の緑色に着色した脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくことが外部から確認し得るタイプの原告商品であると認識し、スーパーマーケット等の小売店舗の店頭の同一の陳列棚に前記四つの特徴を有することにおいて共通する原告商品と被告商品が並べて販売されれば、需要者が被告商品を原告商品の一種と見間違うことは明らかである。したがって、被告の右主張は失当といわなければならない。
2 被告主張 不正競争防止法2条1項1号3条が適用されるためには他人の商品と混同を生じさせる必要があるから、商品表示性の有無も当該商品の出所につき取引者・需要者に誤認混同を生じさせる虞があるか否かによって決すべきである。それには、当該商品に使用された表示が、その外観、称呼、観念等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきものであり、しかも、具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである。したがって、商品に複数の商品等表示が存在するか否かは、これを全体として観察し、取引者・需要者の注意を特に強く惹き、これを同一又は類似のものと認識するのが通常であるか否かによって決すべきである。そのような見地からすると、本件において原告が多大の宣伝広告をした旨主張する商品は、いずれも全体形状が円柱体形状の「ニオイのみはり番」(検乙第一号証)である。したがって、被告商品の形態が原告商品の形態に類似し、両商品の間に出所の混同を生じるか否かは、この円柱体形状の「ニオイのみはり番」と被告商品を対比観察して判断すべきである。ところが、原告商品には、「ニオイのみはり番」の商品名及び著名な「SEKISUI」の商標が付されているから、原告商品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与えるものはこれらの商品名・商標である。一方、被告商品には、その登録商標である「においパクパク」及び関西ペイントグループ各社の共通商標として著名な「アレスコ(ALESCO)」の商標が付され、かつ、特徴的なカバの図柄が付されているから、被告商品の全体観察から自他識別力を有し、看者に特別な印象を与えるものはこれらの商標及び図柄である。特に一般需要者はこれらの商標又は図柄を基準にして各冷蔵庫用脱臭剤の商品出所を判断するのであって、「充填されていた緑色に着色した脱臭剤が徐々に減少することが外部から見えること」といった、冷蔵庫用脱臭剤の商品特性ないし商品コンセプトによって商品出所を判断するものでないことは明白であるから、原告商品と被告商品との間に出所の混同は生じないものといわなければならない。
(原告主張に対する反論) 原告は、商標が自他識別力を有することは当然のことであり、被告の主張は、両者異なる商標さえ付されていれば、たとえ商品の容器包装等が外観上酷似していたとしても何等問題がないとの主張に帰着するが、右主張が妥当でないことは種々論じるまでもない旨主張する。しかしながら、右原告主張は、「類似性の判断」と「混同の判断」との混乱に起因するものであり失当である。すなわち、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為は、他人の商品等表示を用いて商品の出所混同を惹起する行為であるが、その際まず判断の対象となるのは行為者と他人のそれぞれの商品等表示の内容である。つまり、実質的な判断とならざるを得ない混同の要件の検討に入る前に、形式的・定型的に判断が可能な両商品の商品等表示の類似性の有無をまず判断して、その段階で類似性の認められない商品等表示は同号の判断対象から除外し、しかる後に当該商品について取引の実態を踏まえた混同惹起の有無を判断するのである。したがって、たとえ両商品の商品等表示としての容器包装等が酷似していたとしても、更に取引の実態を踏まえて判断した結果混同性が否定される場合のあり得ることは論を待たないから、原告主張は失当である。
四 争点4(原告の出所混同の主張は信義則上許容されないか)1 被告主張 仮に原告商品と被告商品の間に商品出所の混同を生じるおそれがあるとしても、
左記の諸事情に照すと、それは原告が自ら招来した結果というべきものであって、
原告が両商品の出所混同を主張することは信義則上許されない。
(一) 原告主張の原告商品形態と類似の先行商品の存在 乙第二二号証(昭和五五年六月七日発行の雑誌「ミセス」)、乙第二三号証(同年七月七日発行の同誌)、乙第二四号証(同年八月七日発行の同誌)、乙第二五号証(同年一二月七日発行の同誌)には、(a) 上が白色、下が透明で内容物である緑色に着色したゲル状タイプの溶剤が透けて見える円筒型容器を使用し、(b) 右容器本体が透明体であるので、それを透かして内部に充填された緑色に着色したゲル状タイプの消臭剤の減り具合が観察できるという機能を有し、(c) 容器の蓋の上面にはスリットが穿設されていることを特徴とする冷蔵庫用消臭剤(商品名は「ホワイト」、製造元は株式会社ファーストリビング)が示されており、そこには「ホワイト」が当時全国の主要な百貨店等の多数の小売店舗で販売されていたことが記載されている。この「ホワイト」の販売時期は、原告が原告商品「ニオイのみはり番」の発売を開始した昭和五七年一〇月よりはるか以前であるから、原告主張の商品形態は、原告商品の発売開始時点でこの種商品の分野において既にごく一般的でありふれたものとなっていたものといわなければならない。また、乙第二二号証には、「ホワイト」について、「消臭効果が目でわかります」「緑色の溶剤がある間は消臭中」「ホワイトは消臭成分が蒸発し、活躍しているのが一目でわかります。緑色の溶剤が無くなったらお取り換え下さい」との記載が、乙第二三号証及び第二四号証には、「緑色の溶剤がある間は消臭中」「ホワイトは消臭効果が外からひと目でわかります。緑色の溶剤がある間は消臭能力がある証拠ですから安心してお使いいただけます」との記載が、乙第二五号証には、「特に溶剤が外からひと目でご覧いただけます。」「緑色の溶剤がある間は消臭力がある証拠ですから最後まで安心してお使いいただけます」との記載がある。右各記載に照らせば、原告主張の「効き目が見える」という原告商品のキャッチ・フレーズも「ホワイト」の宣伝広告におけるキャッチ・フレーズの二番煎じであることは明らかである。さらに、乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.3三四頁)には、「(原告商品「ニオイのみはり番」の)類似品は既に’80に家庭用品メーカーのフアストリビング社から『ホワイト』というブランドが発売されている」との記載があり、原告商品の商品形態が「ホワイト」のそれと類似することは明らかであるから、原告は、「ホワイト」の著名性に只乗りしたと評されてもやむを得ない。
(二) 原告製品の市場シェアの推移状況 一九五八年(昭和三三年)に国内ではじめてアメリカンドラッグコーポレーションが「キムコ」を発売したのが契機となり、一九六三年(昭和三八年)には白元が「ノンスメル」を発売することで我が国の冷蔵庫用脱臭剤のマーケットが形成された。その後トイレタリーメーカーや製薬メーカーが相次いで参入する中で、一九八〇年(昭和五五年)に薬液剤を成分とするゲル状タイプ又は液状タイプの商品が市場に導入されるとともに、後年原告が原告商品を発売したことで更に需要が喚起された。しかし、先発二社により市場が牽引される状況が変化し難いまま、食品包装技術の進歩に加え、一九八六年頃よりシャープ等の家電メーカーが脱臭機能付冷蔵庫を開発発売したことで、冷蔵庫用脱臭剤市場は大きな打撃を受けた。被告が冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク」の販売を開始したのは、その後の一九八九年(平成元年)のことである。このような市場動向を反映して原告商品の冷蔵庫用脱臭剤のマーケットシェアも減少を続け、一七%台という低迷期に入ってから被告は新たにこの市場に参入したものであり、原告商品は既に右のように低迷状態に陥っていたのであるから、被告がそのような原告商品の商品表示に「只乗り」などしてみても何ら得るところのない状況にあったのである。現に原告商品の市場占有率は被告の市場参入によってもさほどは変化しなかったのであり、被告は、原告商品に対する需要を奪取するのではなくして、新規需要を掘り起こし市場規模を全体として拡大することによって自らの売上を伸ばしていったのであり、その背景には被告商品の差別化戦略すなわち被告商品の原告商品と比較した場合の品質の優秀性がある。因みに、被告商品「においパクパク」の脱臭効果は、乙第三三号証(日本食品分析センター作成の試験報告書)からも明白であり、そこでは、被告商品が他の類似品と比べアンモニア濃度及び硫化水素濃度とも脱臭力において格段の差異があることが報告されている。また、乙第三四号証(早稲田大学環境保全センター作成の試験結果報告書)は、原告商品「ニオイのみはり番ハイパーS(中身)」及び「ニオイのみはり番ハイパーS(容器)」と被告商品「においパクパク」とを比較試験した結果を示しているが、それによれば、被告商品「においパクパク」は、悪臭成分であるアンモニア濃度及び硫化水素濃度とも人間の臭覚によって覚知し得ない一PPM以下にまで脱臭できることが示されているのに対し、原告商品「ニオイのみはり番ハイパーS(中身)」はある程度の脱臭効果はあるものの、臭いは除去されていないものであること、「ニオイのみはり番ハイパーS(容器)」は、脱臭効果など無いことが示されている。このような被告商品の品質の優秀性と共に、被告が積極的に被告商品の宣伝広告活動及び営業活動を展開し販売努力を重ねた結果、被告商品はその売上を順調に向上させてきたのであって、被告は原告商品に「只乗り」したものではなく、そもそも原告商品は「只乗り」には値しない商品であり、被告商品の順調な売上向上に便乗しようとしているのはむしろ原告の方であって、その詳細は次項において述べるとおりである。
(三) 原告が原告商品の商品形態を被告商品に近似させてきた事実(1) 被告は、平成二年二月に透明な容器本体に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填した「においパクパク小」を発売した。この「においパクパク小」は、容器の蓋部分の頂面から正・背面にかけて赤色のシールを貼付していた(検乙第九号証、乙第一四号証の5の左側に撮影されている商品)。
(2) ところが、原告は、平成四年春頃から、別紙原告商品写真(五)の「ニオイのみはり番 ハイパーS」(検乙第五号証)を発売した。この「ニオイのみはり番 ハイパーS」は、被告が平成二年二月から発売を開始した(1)の「においパクパク小」と比較すると、容器の大きさ、原告主張の「横長の扁平な小判型柱体(横長の扁平な直方体の左右両側面を円弧面とした形状)」という容器外形及び容器の蓋部分の頂面から正・背面にかけて貼付した赤色のシールの貼付態様等において、全体的に被告商品を模倣したものと評さざるを得ない形態の商品であった。なお、右原告販売の「ニオイのみはり番 ハイパーS」の脱臭剤のこの時点での着色は、彩度の低い暗緑黄色で不透明感を呈するものであった。また、容器本体は、透光性はあるものの、乳白色の不透明なものであった(検乙第五号証、乙第一四号証の3の左側に撮影されている商品)。
(3) その後、原告は、脱臭剤の着色を右(2)のものから彩度の低い不透明感を呈するものではあったが緑色に変更した。しかし、この時点でも容器本体の色は依然として透光性はあるものの乳白色の不透明なものであった(検乙第六号証、乙第一四号証の3の右側に撮影されている商品)。
(4) そこで、被告は、原告商品との区別を明確にすることを目的として、被告商品の包装表示の態様を若干変更し、蓋部分の頂面から正・背面にかけて貼付していた赤色のシールの貼付を取り止め、被告商品の容器の蓋部分の下部周縁に赤色の帯状シールを貼付した商品の販売を開始した(検乙第一〇号証、乙第一四号証の5の右側に撮影されている商品)。
(5) ところが、原告は、本件訴訟係属後の平成五年の秋頃になって、「ニオイのみはり番 ハイパーS」の脱臭剤の着色を、被告商品「においパクパク」の脱臭剤の着色とほぼ同色の緑色に変更し、更に容器本体も被告商品と同じ透明なものに変更した(検乙第一六号証、乙第一四号証の12に撮影の容器)。
(6) 以上のように原告は原告商品の形態を逐次被告商品のそれに似せてきたものであり、その経過は乙第一四号証の7の写真を見れば一目瞭然である。原告は被告が原告商品の商品表示を模倣した旨主張するが、以上の事実から明らかなように、原告こそ原告商品の形態を被告商品のそれに似せてきているという意味において大いに問題があるものといわざるを得ない。
2 原告主張 以下に述べるとおり、右被告主張はいずれも理由がない。
被告は、@ 容器の蓋部分の頂面から正・背面にかけて赤色のシールを貼付したの被告の方が先で、原告が後からこれを真似た旨、A 原告商品の脱臭剤の色は当初彩度の低い暗緑黄色で、容器本体も透光性はあるものの乳白色の不透明体であったが、被告商品の発売後に被告商品の着色とほぼ同色の緑色に変更し、容器本体も被告商品と同様透明なものに変更した旨、B 原告の右行為こそ原告商品の形態を被告商品のそれに似せてきているという意味において大いに問題がある旨主張する。しかしながら、@の点については、需要者の注意を惹くために、商品ラベルに赤色等の原色を用いることは一般的に慣用されている常套手段であって、この種商品に限ったものではない。Aの点については、原告は、当初から一貫して通常一般人をして緑色と認識させる着色を使用しており、被告のように当初は紺色の着色を使用した商品を発売していながら、途中で原告商品と同じ緑色に変更するというような極端な変更をしてはいない。原告容器の本体も確かに当初は多少乳白色がかっていたとはいえ、被告の主張するように不透明体ではなく透明体であった。
もし被告主張のように当初は不透明体であったのであれば、外部から脱臭剤薬液の緑色を看取できないはずであるし、そうであれば「効き目が見える」という原告商品のキャッチ・フレーズも謳えなかったはずである。原告は、発売当初から緑色に着色した薬液の減り具合が見えることを需要者の目に訴えることによって、商品の有効期限を需要者に知らせることに意を用いてきたのである。(甲第三号証〜第二七号証)。
被告は、平成元年四月の被告商品の販売開始当初は透明の容器本体内に紺色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填して発売したが、何故か約一年後の平成二年二月に至り、右脱臭剤の着色を原告商品と同じ緑色に変更する挙に出たのである。そして、客観的にみる限り、このことが取引者・需要者が原告商品群と被告商品群とを誤認混同する大きな要因となったことは疑いを容れる余地がない。
なお、被告の被告商品の品質の優秀性に関する主張は、本件の争点に関係のないことなので、立ち入った反論を差し控えるが、被告が依拠する試験報告書(乙第三三号証及び第三四号証)の測定方法が冷蔵庫用脱臭剤の脱臭効果の測定方法としては適切でないことのみを指摘しておく。
また、被告は、平成二年一月頃、原告商品を名指しで誹謗するかのごとき文書を原告の取引先に配付するなど、非常識な販売宣伝活動をしたので、原告は、被告に対し、公正な取引を阻害するとして警告し、被告も謝罪した事実がある(甲第三一号証)。
五 争点6(損害賠償金額等)(原告主張) 被告は、平成元年四月頃から、別紙被告物件目録(三)記載の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパクジャンボ」(被告商品(1))及び別紙被告物件目録(四)記載の冷蔵庫用脱臭剤「においパクパク」(被告商品(2))の製造販売を開始し、平成五年三月までに総計二億七一〇〇万円を販売した。右各商品の利益率はいずれも三〇%を下らないから、被告がこの間に被告商品の製造販売により得た利益は、次の算式のとおり八〇〇〇万円を下らず、原告は同額の損害を被った。
2億7100万円×0.3=8130万円
争点に対する判断
一 争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似するか)1 本件登録意匠の構成 本件登録意匠の構成は、概略的には原告主張(第三の一1(一))のようにも分説することができる(但し、「透明体」を「半透明体」と訂正する。)が、細部までより詳細には被告主張(第三の一2(一))のように分説できる(もっとも、公報(1)及び願書添付図面代用写真で表わされた本件登録意匠を言語で完全に表現し尽くすことは不可能に近い。)。
2 被告意匠の構成 被告意匠の構成は、被告主張(第三の一2(四)【被告容器(1)意匠の構成】【被告容器(2)意匠の構成】)のように、次のとおり分説するのが相当である(別紙被告物件目録(一)(二)、但し、各部の寸法比率は検乙第一二号証、第一七号証の実測結果による数値である。また別紙被告物件写真(一)(二)の正面図に撮影の模様が被告意匠の構成部分と認められないことは後記認定のとおり。)。
(一) 被告容器(1)意匠の構成(1) 被告容器(1)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(1)の構成態様@ 基本的構成態様 全体形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体である。その上部は、扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成し、下部は扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成し、蓋部を本体に被着させて一体に形成している。
A 具体的な構成態様 蓋部を本体に被着させて一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇九対〇・四七で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体(蓋部が被着され外部から見えなくなる部分は除く。以下同じ。)の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四五対〇・五五であり、蓋部の高さが本件の高さのほぼ〇・八一倍である。蓋部と本体の具体的形状は左記のとおりである。
Bイ 蓋部の具体的形状(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・三七対二・四三とし、中央頂辺と底辺とは、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。七面形の下方部分には、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている。蓋部の高さと帯体の高さの比率は、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・四八である。蓋の上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から帯体上辺近くまでに櫛の歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・四五である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺(平面図に即して上・下という。したがって、下は正面側、上は背面側となる。以下同じ。)を平行する直線とした横長な小判型で、帯体外周縁のごく僅か内側に蓋部上面外周縁が平行して表われている。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に各一一個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜面は、かまぼこ形で、頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字状(右側はコの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから帯体の左右円弧状の縁まで、左右対称に櫛の歯状の透孔を横に各七個並列させてあけてあり、その透孔は正・背面側の透孔に匹敵する程広範囲にあけられている。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇一対一・〇五とし、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している矩形状(矩形に極めて近似した台形)である。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。矩形状下方部分は、正・背面と同様な、ごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている。
形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺のごく近くから帯体上辺近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある。上方にかまぼこ形斜面の円弧状外縁が凹弧に表われている。
ロ 本体の具体的形状(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・九三対一・九〇とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状(横長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長矩形状本体の上辺(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ三〇分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・八〇対〇・七六とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。左右両側面は、ごく僅か外方へ傾く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、正・背面と同様なごく僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ三〇分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判型で、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている。底面外周縁の横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・八九対〇・七六対一である。
(d) 本体は透明である。
(二) 被告容器(2)意匠の構成(1) 被告容器(2)は脱臭剤容器である。
(2) 被告容器(2)の構成態様@ 基本的構成態様 全体形状が頂面と底面が互いに平行している扁平小判型柱体である。その上部は、扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成し、下部は扁平小判型柱体の頂面を開口部とした本体を形成し、蓋部を本体に被着させて一体に形成している。
A 具体的構成態様 蓋部を本体に被着させて一体に形成した脱臭剤容器において、全体の高さ、横幅(長手方向)及び奥行の比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・〇八対〇・五八で、全体の高さ、蓋部の高さ及び本体の高さの比率は、全体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・三四対〇・六五であり、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・五二倍である。各部の具体的形状は左記のとおりである。
Bイ 蓋部の具体的形状(a) 蓋部正・背面の形状は、蓋部の高さ、中央頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・五三対三・一八とし、中央頂辺と底辺とは、直線で互いに平行し、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形(頂面、頂面左右の斜面、左右側面の弧面、正・背面)である。その左右両斜辺の外端は、小さい隅丸となっている。蓋の上方部分は、頂辺左・右の斜面下方部分を幅広く残し、頂辺から蓋部中央部近くまでに櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、長手方向幅を一とした場合、ほぼ一対〇・三一である。
(b) 蓋部平面の形状は、左右両辺を円弧とし、上・下辺を平行する直線とした横長な小判形である。蓋部頂面は、横長矩形で左右縦稜線に沿った部分と横中央部分をH字状に残し、その横中央部分の上・下辺から蓋部上・下辺(平面視)まで、
上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。蓋部上面の左右両斜面は、かまぼこ形で、頂面を左・右縦稜線に沿った部分と上・下部分とを、コの字状(右側はコの字の鏡像文字状)に残し、その間に頂面左・右稜線近くから左右円弧状の縁まで、左右対称に櫛の歯状の透孔を横に六個並列させてあけてあり、その透孔のあけられている面積は正・背面側の面積よりも広くなっている。
(c) 蓋部左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、蓋部の高さ、頂辺幅及び底辺幅の比率を、蓋部の高さを一とした場合、ほぼ一対一・七一対一・七三とし、頂辺と底辺とは、
直線で互いに平行している矩形状(矩形に極めて近似した台形)である。その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている。矩形状上方部分は、左右両端を少し幅広に残し、その間に頂辺近くから蓋部中央部近くまで、櫛の歯状の透孔を縦に六個並列させてあけてある。上方にかまぼこ形斜面の円弧状外縁が凹弧に表われている。
ロ 本件の具体的形状(a) 本体正・背面の形状は、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対一・六〇対一・四七とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している横長矩形状本体の上辺(横長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は小さい隅丸となっている。横長矩形状(蓋部の下辺の下)は、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ一五分の一である。
(b) 本体左・右側面の形状は、横長な扁平小判型柱体の半円曲面部分が、本体の高さ、上辺幅(台形の底辺幅)及び底辺幅(台形の頂辺幅)の比率を、本体の高さを一とした場合、ほぼ一対〇・八六対〇・八一とし、上辺と底辺とは、直線で互いに平行している縦長矩形状(縦長矩形に極めて近似した逆台形)である。その底辺左右両端は、小さい隅丸となっている。当該左・右両側面は、ごく僅か外方へ傾く滑らかな傾斜面である。逆台形上縁(蓋部の下辺の下)は、正・背面と同様なごく僅か外方へ突出したごく細い筋が廻らされている。筋の高さは、本体の高さのほぼ一五分の一である。本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている。
(c) 本体底面の形状は、左右両辺を円弧とした横長な扁平小判型で、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に本体底面外周縁が平行して表われている。底面外周縁の横幅、奥行及び本体の高さの比率は、本体の高さを一とした場合、ほぼ一・四七対〇・八一対一である。
3 本件登録意匠の要部(一) 登録意匠の要部ないし特徴となるのは、原則として、物品の形態及び用途等からみて、その取引過程ないし使用状態において取引者・需要者の目につきやすく、公知意匠にない新規で、見る者の注意を強く惹く部分であると考えられる。そして、もともと、公知意匠と類似しない意匠のみが意匠登録されるのであるから(意匠法3条1項)、登録意匠の要部ないし特徴を把握し、あるいはその類似範囲を画定するにあたって、当該登録意匠出願前にその分野に属する公知意匠が存した場合には、これを参酌して、登録意匠のどの部分に創作性のある新規な部分があるのか、その程度がどのようなものなのかを、ありふれた部分のウェイトを低く認識し、新規な部分のウェイトを大きく認識しながら、全体的な特徴を把握して意匠の要部を定めなければならないのは当然である。また、登録意匠に類似意匠が付帯している場合、類似意匠は本意匠の類似範囲を明確にする有力な資料であるから、これを参酌すべきことはいうまでもない。ただ、対比物品の類否はあくまでも本意匠との比較によって決すべきであり、当該本意匠ないし類似意匠が公知意匠との関係で創作の程度が相対的に低いことが明らかになれば、そのことも考慮すべきであり、公知意匠の内容如何によっては類似意匠を参考にして定められる類似の範囲も相応に限定されなければならない場合もある。その意味で、まず公知意匠との比較により当該本意匠が如何なる点に新規性及び創作性があるのかを究明する。
なお、被告は、そもそも本件類似意匠の意匠登録出願は公知意匠(被告意匠)に酷似する意匠の冒認出願として無効とされるべきものであるから、本件類似意匠を参酌して被告意匠と本件登録意匠の類似を判断することは許されない旨主張するが、右被告主張は、原告の主張(類似意匠に関する被告主張に対する反論)と同旨の理由により、採用できない。
(二) そこで、公知意匠を参酌して、本件登録意匠の新規な点をみてみると次のとおりである。
(1) 公知意匠 本件登録意匠の出願当時、次の公知意匠が存在していた。
A 検甲第一号証(実物の写真)、乙第一三号証(国立国会図書館昭和五七年一二月一七日受入「モーターファン」第三七巻第二号〔昭和五八年一月臨時増刊号〕一一八頁)、乙第一九号証(「JohnsonジャーナルNo.349」・一九八一年四月三〇日号二八頁)及び乙第二〇号証(乙第一九号証の掲載写真のネガに基づき改めて現像焼き付けし直した写真)により認めることができるジョンソン株式会社発売の自動車用液体消臭芳香剤「グレード カーフレッシュ」容器の意匠(公知意匠A) 右公知意匠Aは、やや縦薄型の隅丸直方体であり、透明体の本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であり、その形状は、縦(高さ)と横(長辺)と奥行(短辺)の比率が、縦(高さ)を一とした場合、ほぼ一対〇・八五(蓋部)対〇・六四(蓋部)、蓋部の高さと本体の高さの比率は本体の高さを一とした場合、ほぼ二・一対一・〇であり、正面には上端から中央部分まで櫛の歯状の透孔(スリット)を縦に七個並列させ、その左右両側面には頂面から中央部分まで櫛の歯状の透孔を縦に七個並列させてあけてある自動車用液体消臭芳香剤容器である。
B 意匠登録第六七六一七八号意匠公報(乙第一号証)に記載の脱臭剤容器の意匠(公知意匠B) 右公知意匠Bは、上部に鉤形突起を付加した全体が円柱体であり、上・下面が互いに平行し、頂面中央部及び蓋部下方部分全体を帯状に残し、正・背面は、左右両端面も残し、その間に頂面から帯状上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に各八個並列させてあけてある脱臭剤容器である。
C 意匠登録第六七六二〇九号意匠公報(乙第二号証)に記載の脱臭剤容器の意匠(公知意匠C) 右公知意匠Cは、上部に鉤形突起を付加した全体が円柱体であり、上・下面が互いに平行し、蓋部下方部分全体を帯状に残し、正面・頂面・背面にかけて全体に帯状上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に一四個並列させてあけてあり、本体が透明である脱臭剤容器である。
D 意匠登録第六七六三四八号意匠公報(乙第三号証)に記載の脱臭剤放散用容器の意匠(公知意匠D) 右公知意匠Dは、全体が縦長角柱体で、上・下面が互いに平行し、蓋部を本体に被着させて一体に形成し、本体上方部分にごく僅か外側へ膨出した帯体が廻らされ、正・背面には左右両端を少し幅広に残し、その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に各七個並列させてあけてある脱臭剤放散用容器である。
E 意匠登録第六七七一七七号意匠公報(乙第四号証)に記載の冷蔵庫用脱臭剤容器の意匠(公知意匠E) 右公知意匠Eは、上部に鉤形突起を付加した縦長の全体が隅丸三角柱体で、上・下面が互いに平行し、蓋部を本体に被着させて一体に形成し、左右側面から頂面全体にかけて蓋部下方部分まで櫛の歯状の透孔を横に五個並列させてあけてある冷蔵庫用脱臭剤容器である。
F 意匠登録第六七七一二二号意匠公報(乙第五号証)に記載の防臭剤用容器の意匠(公知意匠F) 右公知意匠Fは、隅丸の横長扁平で、底部に向かってやや広がっている直方体で、上・下面が互いに平行し、正面の一部分を除き、正面から頂面及び背面にかけて全体に櫛の歯状の透孔を縦に三〇個(背面側で三〇個、正面側では二〇個)並列させてあけてある防臭剤用容器である。
(2) 以上の公知意匠と対比すると、本件登録意匠の新規な構成は次のとおりと認められる。
@ 本件登録意匠の基本的構成のうち、脱臭剤容器において全体形状を蓋部と本体からなる横長形状にすること、「横長な隅丸四角錘体」の蓋部の形状、及び「隅丸逆四角錘体」の本体の形状は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規なものではない。また、「上部の底面を開口部とした蓋部を下部の頂面を開口部とした本体に被着させて一体に形成している」点も、公知意匠B〜Eにもみられるところであり、格別新規なものではない。
しかし、「頂面と底面とが互いに平行している隅丸一〇面体」の全体形状は公知意匠A〜Fの中にはそっくりそのままなものはみられず新規な構成といえる。
A 蓋部正・背面の形状のうち、頂辺と底辺とが、直線で互いに平行している台形であり、その頂辺左右両端は、小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみられるところであり、新規なものではない。また、さらに、台形上方部分が、左右両端を幅広に残し、その間に頂面から帯体上辺まで櫛の歯状の透孔を縦に並列させてあけてある点は、公知意匠A、B、D、Fにも共通してみられるところであり、新規なものではない。しかし、台形下方部分が、ごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らされている点は、公知意匠A〜Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
B 蓋部平面の形状のうち、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形である点及び左右両端と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下(正面側・背面側)対称に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列させてあけてある点は、公知意匠A〜Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
C 蓋部左右両側面の形状のうち、頂辺と底辺とが、直線で互いに平行している台形であり、その頂辺左右両端は小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規なものではない。しかし、台形下方部分は、正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている点及び台形上方部分は、ごく僅か内方へ傾く斜面を形成している点は、公知意匠A〜Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
D 本体の正・背面の形状のうち、頂辺と底辺とが、直線で互いに平行している逆台形であり、その底辺左右両端は小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規なものではない。しかし、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)に、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋を廻らしている点は、公知意匠A〜Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
E 本体左・右側面の形状のうち、頂辺と底辺とは、直線で互いに平行している逆台形であり、その底辺左右両端及び本体底面左右両端は、小さい隅丸となっている点は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規なものではない。しかし、
当該左・右側面が、ごく僅か外方へ傾く滑らかな斜面である点、及び、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)が、正・背面と同様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点は、公知意匠A〜Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
F 本体底面の形状のうち、横長矩形である点は、公知意匠Fにもみられるところであり、格別新規なものではない。しかし、本件頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている点及び本体底面中央には細長い矩形が表われている点は、公知意匠A〜Fにはみられないものであり、新規な構成といえる。
G 本体を透明体ないし半透明体とする点は公知意匠にもみられるところであり、
格別新規なものでもない。
H 以上にみてきたところによれば、本件登録意匠の構成のうち、@の本件登録意匠の基本的構成のうち、「隅丸一〇面体」の全体形状、「横長な隅丸四角錘体」の蓋部の形状、及び「隅丸逆四角錘体」の本体の形状、Aの蓋部正・背面の形状のうち、台形下方部分が、ごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている点、Bの蓋部平面の形状のうち、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形である点及び左右両端と横中央部分を扁平H字状に残し、その横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下(正面側・背面側)対称に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列させてあけてある点、Cの蓋部左右両側面の形状のうち、台形下方部分は、正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体を廻らしている点及び台形上方部分は、ごく僅か内方へ傾く斜面を形成している点、Dの本体の正・背面の形状のうち、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)には、ごく僅か外側へ突出したごく細い筋を廻らしている点、Eの本体左・右側面の形状のうち、当該左・右側面が、ごく僅か外方へ傾く滑らかな斜面であり、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)は、正・背面と同様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点、及び、Fの本体底面の形状のうち、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている点及び本体底面中央には細長い矩形が表われている点には、それぞれ新規な点があるということができる。
(3) そこで、右の新規な点が全体的意匠構成の中で占めるウェイトを考慮しながら本件登録意匠の特徴ないし要部を考える。
@ 頂面と底面とが互いに平行している隅丸一〇面体の本件登録意匠の全体形状は、前示のとおり、それとそっくりなものは公知意匠の中にはみられず、それ自体は新規な構成である。しかしながら、本件登録意匠の全体形状は正確にいえば右のように「隅丸一〇面体」(頂面、底面、蓋部正・背面、蓋部左右側面、本体正・背面、本体左右側面)と表現すべきであるが、頂面及び底面を除くその余の各面の傾斜角度はごく僅かであり、正・背面及び左右側面方向から見た場合、各面の形状は矩形に極めて近似した台形状に表われており、通常看者はさほど各面の細部の構成にまで注意を払って全体形状を観察するものとは考えられないから、概括的には本件登録意匠は全体として横長で扁平な略直方体形状の箱型容器と大差のない形状として看者の目に映じるものと認められる。そして、証拠(甲三〇、乙五〜七、一五)によれば、脱臭剤用容器において、全体形状を本件登録意匠の全体形状に酷似する横長で扁平な略直方体形状の箱型容器とし、あるいは各面を台形状にすること自体は、本件登録意匠の出願当時、公知ないし周知であったと認められる。そうすると、本件登録意匠の前記隅丸一〇面体の全体形状は特に看者の注意を惹くものであるということはできないから、右形状に意匠の要部があるとはいえない。
A 蓋部正・背面の形状のうち、台形下方部分にごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている点は、前示のとおり公知意匠にはみられない新規な構成であり、右帯体は取引者・需要者が本件登録意匠に係る物品(脱臭剤容器)を手に取って見たとき、正・背面中央部分に位置し、しかも、その幅(高さ方向)は容器全体の高さの約四分の一程度を占める目立つものであり、需要者は商品(脱臭剤)の使用開始に先立ち必ず一度は蓋を開けてゲル状タイプの脱臭剤の上面に貼付されているアルミシールを剥がす必要があり、その際、右帯体は手に触れ易い部分であるから、右帯体は見る者の注意を惹きやすい部分の意匠的特徴であるといわざるを得ない。したがって、本件登録意匠の蓋部正・背面の形状のうち、台形下方部分にごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている構成は、本件登録意匠の中でも大きなウェイトを占める要部というべきである。
B 蓋部平面の形状のうち、四隅を他の隅丸部分より大きい円弧の隅丸とした横長矩形である点及び左右両端と横中央部分を扁平H字状に残している点は、前示のとおり公知意匠にはない新規な点であり、特に左右両端と横中央部分を扁平H字状に残している点は、横中央部分の上・下辺から横長帯体まで、上下対称(正面側・背面側)に櫛の歯状の透孔を縦に二二個並列させてあけてある構成と相まって、本件登録意匠に独特のスマートで安定した機能美を生じさせているものと認められる。
そして、該部分は本件登録意匠に係る物品(脱臭剤容器)を斜上方から見た場合に看者の注意を強く惹く部分であるから、本件登録意匠の右構成は、全体として本件登録意匠の中でも重要な要部と認めるのが相当である。
C 蓋部左右両側面の形状のうち、台形下方部分に正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている点は、Aで述べたのと同様の理由で、本件登録意匠の要部というべきである。もっとも、蓋部左右両側面は通常蓋部正・背面に比べて取引者・需要者の目に触れる機会が比較的少なく、その注意を喚起する程度も若干劣るものと認められるから、蓋部左右両側面の右構成が本件登録意匠の中で占める意匠的特徴のウェイトも蓋部正・背面のそれに比べるとやや劣るものと認めざるを得ない。
D 本体の正・背面の形状のうち、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)にごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点は、前示のとおり公知意匠にはみられない新規な構成である。しかしながら、この細い筋は意匠的観点というよりもむしろ蓋部を本体に安定して被着させるための物品の機能的観点をより重視して設けられたものと認められるのみならず、この細い筋は蓋部のこく僅か外側へ膨張した帯体の直下に位置し、しかも筋の幅(高さ方向)もごく細いものであるから、その大きさ及び存在位置から考えて通常その部分は見る者の注意を強く惹く部分とは考えられず、その存否が意匠の要部、類否を決する重要な要素となっていないことは明らかである。したがって、右の細い筋は、意匠的特徴のある部分とはいえず、本件登録意匠の要部とはいえない。
E 本体左・右側面の形状のうち、当該左・右側面が、ごく僅か外方へ滑らかな斜面である点は、その傾斜の度合いからしてさほどに見る者の注意を惹きやすい目立つ部分ではないから、本件登録意匠の要部とはいえない。また、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)に正・背面と同様なごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点も、Dで述べたのと同様の理由で本件登録意匠の要部とはいえない。
F 本件底面の形状のうち、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている点、及び、本体底面中央に細長い矩形が表われている点は、
前示のとおり公知意匠にはみられない新規な構成である。しかしながら、本件登録意匠に係る物品(脱臭剤容器)は、これを立設して使用するものであり、底面から脱臭剤容器を見ることは通常ないことであるから、底面における形状は比較的看者の注意を惹くことはないものと考えられる。したがって、本体底面の右形状は本件登録意匠の要部とはいえない。
(原告の主張について) 原告は、本件登録意匠の要部は、A 透明体を本体とし、本体にかぶせ蓋式の不透明体の蓋を被着せしめた箱型容器であること、B その基本的形態は、平面視において隅角部に大きなアールが付された横長で扁平な直方体形状であること、C 蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されており、平面視において櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設されている部分以外の残余部が扁平なH字形状として看者の目に映ることの三点に本件登録意匠の要部がある旨主張する。
しかしながら、Aの点は公知意匠Aにおいて既に示されているところである。なお、意匠法は、意匠を表す物品において透明箇所がある場合には、その旨を願書の意匠の説明の項に記載しなければならないと規定するから、透明か否かを意匠の同一性を判断する要素の一つとしているものと解されるが、本件において願書には透明箇所がある旨の記載はないし、別添「本件意匠登録出願願書添付図面代用写真」を見ても、本件登録意匠の容器本体が半透明のものと認めることはできても、完全に透明であるとは認められない。また、Bの点についても、平面視において隅角部に大きなアールが付されていると原告は主張するけれども、本件登録意匠の隅角部のアールは隅丸を少し大きくした程度のもので、この程度のアールは公知意匠Aに示されており、また横長で扁平な直方体形状と原告は主張するけれども、本件登録意匠が正確には直方体でないことは前記認定のとおりであって、ほぼ直方体形状ということができるが、平面視において隅丸が付された横長で扁平なほぼ直方体の形状は公知意匠F及び特許庁資料館昭和四六年六月三〇日受入の「日本粧業 消費者動向と経営戦略」〔乙第二一号証添付の甲第一二号証〕に掲載の冷蔵庫脱臭剤「ノンスメルワイド」及び「ノンスメル」の容器にも見られるところであって、特段創作性を認めることはできない。また、Cの点のうち、蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔(スリット)が穿設された形状も、公知意匠A、B、C、D、Fにおいて既に示されているところである。
4 本件登録意匠と被告意匠の類否(一) そこで、被告意匠と本件登録意匠の類否を検討するに、本件登録意匠と被告意匠は、いずれも冷蔵庫用脱臭剤容器に係るものであって、前記1・2のとおりの構成を有するものであり、この両意匠を対比すると、次のとおりである。
(1) 基本的構成態様を対比すると、全体形状が頂面と底面が互いに平行している横長(奥行に比し横幅の広い)形状であり、その上部は底面を開口部とした蓋部を形成し、下部は頂面を開口部とした本体を形成し、当該蓋部を本体に被着させて一体に形成している点は、本件登録意匠と被告意匠で共通している。しかし、全体形状を対比すると、本件登録意匠では、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長の隅丸一〇面体であり、それは前示のとおり概括的には全体として横長で扁平な略直方体形状の箱型容器と大差のない形状として看者の目に映じるものであるとともに、蓋部の高さが本体の高さのほぼ一・五四倍で、蓋部の高さの方が高く、直線が目立ち全体としてシャープで角ばった印象を与え、かつ、高さと横幅の比率が一対一・二一二であり正面視において横向きの直方体形状であるのと蓋部の帯体がほぼ中央に位置し、多数の縦方向の透孔がほぼ横幅一ぱいに整然とあけられているため、重心が低いように見え整っていてスマートな印象を与えるのに対し、
被告意匠では、全体の形状が頂面と底面とが互いに平行している横長な扁平小判型柱体で、扁平小判型柱体の頂面左右両端部を斜めに切り欠き、台形状とした蓋部を形成しており、蓋部上面中央の頂面のみを底面と平行するにすぎず、その頂面の左右が斜面を形成し、蓋部及び本体の両端部は半円柱状の曲面により構成され、蓋部の高さが本体の高さのほぼ〇・八一倍(被告容器(1)意匠)ないし〇・五二倍(被告容器(2)意匠)で、蓋部の高さの方が低いという、本件登録意匠にない構成にし、曲線が多用され全体として丸くずんぐりした印象を与え、かつ、高さと横幅がほぼ同じ長さであり正面視において略正方形形状であるのと蓋部の帯体が上方に位置しているため重心が重いように見え、透孔が縦方向にも横方向にもあけられていて左右両端が斜面になっているため効率重視の印象を与えている点で顕著に相違している。
(2) 蓋部正・背面の具体的形状を対比すると、本件登録意匠と被告意匠は、頂辺と底辺とが直線で互いに平行している、上方部分は左右両端を幅広に残し、その間に頂辺から櫛の歯状の透孔を縦に並列させてあけてある、下方部分にはごく僅か外側へ膨張した帯体が廻らされている(但し、被告容器(2)意匠には帯体はない。)基本的な構成においては共通である。しかし、その具体的構成である櫛の歯状の透孔の個数及び位置並びに左右両側の形状において、大きく相違している。すなわち、@ 蓋部頂面から蓋部正・背面中央部分に向けてあけられた櫛の歯状の透孔の数が、本件登録意匠では各二二個と多数であるのに対し、被告容器(1)意匠では各一一個、被告容器(2)意匠では各六個と本件登録意匠と比べて著しく少なく、A また、蓋部の長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は、長手方向幅を一とした場合、本件登録意匠ではほぼ一対〇・八一二五であるのに対し、被告容器(1)意匠ではほぼ一対〇・四五と半分以下、被告意匠容器(2)意匠ではほぼ一対〇・三一と三分の一以下であり、本件登録意匠は、右透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いのに対し、被告意匠では、右透孔が占める部分の横幅が狭く、蓋部左右両側の残った部分の幅が広く、B さらに、本件登録意匠では中央頂辺と底辺とは、全体的に直線で互いに平行しているのに対し、
被告意匠では、中央頂辺の中央部と底辺とが互いに平行しているのみであり、中央頂辺の左右両端は、外側へ約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形である点においても相違している。
(3) 蓋部平面の形状を対比すると、横中央部分を長方形状に残し、横中央部分の上・下辺から上下対称に櫛の歯状の透孔を縦に並列させてあけてある点は共通であるが、次の構成において、大きく相違している。すなわち、本件登録意匠では、
頂面左右部分が幅の狭い平坦面で、透孔は全くあけられていないのに対し、被告意匠では、中央頂面左右両端が、対称の幅の広いかまぼこ形(円弧状)の斜面で、その斜面には櫛の歯状の透孔が被告容器(1)意匠では横に各七個、被告容器(2)意匠では横に各六個並列してあけられており、被告容器(2)意匠では正・背面側の透孔よりも透孔の面積が広く、被告容器(1)意匠でも正・背面側の透孔に匹敵する程広範囲に透孔があけられている点で顕著に相違している。また、本件登録意匠で左右両端と横中央部を扁平H字状に残しているのに対し、被告意匠では左右両端よりかなり内側の左右縦稜線に沿った部分と横中央部分をH字状に残しており、
左右両端の傾斜と傾斜部における多数の透孔の存在とにより、著しく印象を異にするものになっている。
(4) 蓋部左・右側面の形状を対比すると、本件登録意匠と被告意匠は、頂辺と底辺とが直線で互いに平行し、頂辺左右両端は、小さい隅丸となっており、下方部分は、正・背面と同様なごく僅か外側へ膨張した幅広横長の帯体を底辺に沿って廻らしている点では共通している(但し、被告容器(2)意匠では帯体は廻らされていない。)が、本件登録意匠では、透孔が全くなく壁状になっているのに対し、被告容器(1)意匠では縦に各七個、被告容器(2)意匠では縦に各六個並列してあけられている点で顕著に相違している。
(5) 本体の正・背面の形状のうち、逆台形上縁(蓋部帯体の下辺の下)にごく僅か外側へ突出したごく細い筋が廻らされている点、及び本体左・右側面の形状のうち、当該左・右側面が、ごく僅か外方へ傾く滑らかな斜面である点、及び本体底面の形状のうち、本体頂辺外周縁のごく僅か内側に、本体底面外周縁が平行して表われている点は、本件登録意匠と被告意匠で共通しているが、これらの点は本件登録意匠の要部に関するものではない。
(6) なお、被告は、本件登録意匠にあっては本体は一色無模様であるのに対し、被告容器の本体は透明であるが、その正面部に別紙被告物件写真(一)(二)に撮影のとおり模様が付されており、この模様は特徴的であって、その点で本件登録意匠と相違する旨主張するが、右模様は被告商品全体を包装した透明な熱収縮性合成樹脂フィルムに印刷されたものであり、被告容器の構成部分とは認められないから、右被告主張は採用できない。
(二) 以上の本件登録意匠と被告意匠との共通点及び相違点を踏まえて、全体的に両意匠を比較観察するに、本件登録意匠と被告意匠との間には、前示のとおり、
本件登録意匠の要部に関しないところに構成を同じくする部分もあるが、前記のような各相違点があり、ことに、蓋部頂面左右両端部の構成の違い、蓋部及び本体の左右両端部の構成の違い、蓋部と本体の高さの比率の違い、蓋部正・背面の櫛の歯状の透孔の個数及び位置並びに左右両端部の透孔の個数及び位置の違いに加え、本件登録意匠が容器全体に直線が多用され全体としてシャープで堅い印象を与え、かつ、重心が低いように見え整っていてスマートな印象を与えるのに対し、被告意匠は、曲線が多用され全体として丸くずんぐりした印象を与え、かつ、重心が高いように見え効率重視の印象を与えるものになっており、しかも、その相違点が目につき易い正面視、平面視及び左右側面視に表われていること、そして、右各部分の具体的形状が右のように顕著に相違することから生じる美感の差は、右各部分が脱臭剤容器において占める大きさや位置からいっても、また、機能面からみても見る者の注意を強く惹く部分であって、大きいものといわざるを得ない。
以上の本件登録意匠と被告意匠の共通点と相違点を彼此勘案して判断すれば、本件登録意匠と被告意匠とは全体として見る者に与える美感を異にし、類似しないものというべきである。
(本件類似意匠を援用しての原告の主張について) 原告は、本件登録意匠と被告意匠との主な相違点は、本件類似意匠と本件登録意匠(本意匠)との間にも存する差異とほぼ同程度の差異であり、被告意匠は全体として本件登録意匠に類似するものであって、右差異は、本件登録意匠の要部に関する差異とはいえず、それが意匠の全体観察に占める比重は低いものと評価せざるを得ない旨主張する。そこで本件類似意匠と本件登録意匠の関係をみると、類似意匠全部が横長な小判型柱体で、蓋部左右両端から側面にかけて透孔があけられており、類似意匠1及び3では蓋部下部に帯体がなく、類似意匠3では中央頂辺の左右両端は約二〇度(外角)下がった斜辺を形成している左右対称の七面形となり、また全体の高さに対する蓋部の高さが類似意匠1及び3では〇・四四となっており、
その点では類似意匠は本件登録意匠と相違し被告意匠とほぼ同様の構成になっていることは原告主張のとおりであるけれども、各類似意匠と本件登録意匠とは、原告主張の右の諸点では構成を異にし、主に次の点において構成を共通にしているから、類似意匠を参酌するとき、少くとも次の共通の構成部分は本件登録意匠の要部と認めなければならない。
@ 平面視及び正・背面視における蓋部頂面から正・背面にかけてあけられた透孔は、本件登録意匠では各二二個、類似意匠はすべて各一五個と多数であり、蓋部長手方向幅と右透孔が配列された部分の比率は、本件登録意匠では約〇・八、類似意匠では約〇・六五と大きく、頂面から背面にかけてあけられた透孔が顕著に看者の目を惹く構成になっている。それに対し、本件登録意匠にはなく、類似意匠にのみある蓋部頂面左右両端から側面にかけてあけられた透孔は各五個と少なく、あまり目立たない付加的構成になっている。
A 正面視における蓋部を本体に被着させて一体に形成したときの全体の高さと横幅(長手方向)の比率は、類似意匠2は本件登録意匠と同じ約一・二、類似意匠1及び3は本件登録意匠より大きく約一・四であり、横向き長方形であることが明確にされている。
B 平面視における奥行に対する長手方向幅の比率は、本件登録意匠と類似意匠2では約一対二・七、類似意匠1及び3では約一対二・八となっており、幅薄の印象を受ける。
しかし、被告意匠は、@ 蓋部頂面から正・背面にかけてあけられた透孔は被告容器(2)意匠では各六個、被告容器(1)意匠では各一一個と著しく少なく、また蓋部長手方向幅と透孔が配列された部分の比率は長手方向幅を一とした場合、本件登録意匠でほぼ一対〇・八一二五であるのに対し、被告容器(1)意匠ではほぼ一対〇・四五と半分以下、被告意匠容器(2)意匠ではほぼ一対〇・三一と三分の一以下であり、また、本件登録意匠は、右透孔が占める部分の横幅が広く、蓋部左右両側の残った部分の幅が狭いのに対し、被告意匠では、右透孔が占める部分の横幅が狭く、蓋部左右両側の残った部分の幅が広く、かつ、それと同程度の透孔が頂面左右端から側面にかけてあけられており、その結果看者に与える印象を異にし、
A 横幅(長手方向)が少し長いとはいうものの、全体の高さと横幅とはほぼ同じで正方形に近い形状をしているし、B 奥行に対する長手方向の幅の比率は、被告容器(2)意匠では一対一・八、同(1)意匠では一対二・三で幅薄の印象は受けにくい。
以上のとおり、本件類似意匠との関係において本件登録意匠の要部と認めざるを得ない構成(特に、前記@の構成)を被告意匠は具備しておらず、結局、本件登録意匠と被告意匠とは全体として美感を異にし、類似しないというべきであるから、
類似意匠を参酌しても、右原告主張は採用できない。
5 結論 以上のとおりであるから、被告意匠は本件登録意匠に類似しているということはできず、被告商品を製造、販売することが本件意匠権を侵害するものであるとはいえないから、その余の点につき判断するまでもなく、原告の本件意匠権侵害を理由とする侵害停止・損害賠償請求はいずれも理由がない。
二 争点2(原告商品の形態が商品表示性及び周知性を取得したか)1 事実関係(一) 冷蔵庫用脱臭剤容器の形態の機能性と先行類似商品の存在 原告容器の形態のうち、本体にかぶせ蓋を被着した形態は、製造時に本体内にゲル状タイプの冷蔵庫用脱臭剤を充填し、需要者が商品を購買後一旦このかぶせ蓋を外して、使用開始前に脱臭剤が気化するのを防止する目的で右充填物の上面に貼付されていたアルミシールを除去したうえ再度かぶせ蓋を本体に被着した後に、冷蔵庫内に収納して商品の脱臭効果を発現させるためのもの、蓋の頂面から正・背面にかけて櫛の歯状の透孔を多数穿設している形態は、悪臭を迅速に処理できるよう脱臭剤が揮発して庫内の空気中に拡散する流通孔を保持するためのものであり、一般に、冷蔵庫用脱臭剤は、収納する冷蔵食品の邪魔にならず、しかも使用中に庫内で容器が転倒等して内容成分がこぼれ出し冷蔵食品と直接接触するなどの事故が発生しないように安定した状態で載置される必要があるから、それらの容器の基本的外観形状は、それら冷蔵庫用脱臭剤の本来の用途や設置態様に合わせて、ある一定の範囲内で必然的に制限を受けざるを得ないものと考えられ、実際に市場で流通している商品も、例えば吊り下げ型の商品の場合は頂面にフックを付けた略円柱体形状、載置型のうちコーナータイプの商品の場合はコーナー面に沿った略三角柱体形状、載置型のうち庫内の棚上に載置するボックスタイプの商品の場合は直方体形状ないしそれに近似した箱型容器形状、シート状タイプの商品の場合はシート形状というように、その設置態様毎に概ね同種の基本的形態が採用されている。また、容器の着色も、清潔感を保持するような白、明るい黄、緑、青又は透明が用いられている。そして、このことは、容器本体内に充填される内容物である脱臭剤の主成分が活性炭吸着タイプの商品(「キムコ」「ノンスメル」等)であるか、薬剤による中和、分解タイプの商品(原・被告商品、「ホワイト」「コゾレ」等)であるかによって特に異同があると考えられない。以上のことは、原被告以外の他社製の冷蔵庫用脱臭剤容器形状(例えば特許庁資料館昭和四六年六月三〇日受入の「日本粧業 消費者動向と経営戦略」〔乙第二一号証添付の甲第一二号証〕に掲載の冷蔵庫脱臭剤「ノンスメルワイド」及び「ノンスメル」の容器及び生活情報誌「Two Way」八二号〔昭和六三年三月一日発行、乙第一五号証〕二三頁に掲載の各社の冷蔵庫用脱臭剤容器)も、前記各設置態様の分類タイプに応じて大差ない基本的形態を採っていることからも十分裏付けられる。また、かぶせ蓋の「白色」と容器本体の「半透明」(完全な透明ではないが半透明)の原告容器の色彩の組み合わせも、
原告商品より先に発売された後記「ホワイト」に既に示されていたものであり、他社製品と識別し得るほど特別顕著なものであるとは認められない。したがって、原告主張の@内部の脱臭剤の色が外部から透けて見える透明体を本体とし、その本体に被せ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用い、A白色の蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状のスリットが多数穿設されているという原告容器の形態は、従来から脱臭剤、消臭剤及び芳香剤等の商品容器の形態として慣用されてきた容器形状に照らして独創的ではなく、原告容器の形態それ自体には格別特異なところはなく、冷蔵庫用脱臭剤としての商品の用途や機能的必要性に由来するものであることが明らかであるといわざるを得ない。
さらに、容器本体内に充填された内容物の減少具合が外部から透けて見えるように構成した、本体が透明ないし半透明の容器は、古くから我々が酒や醤油、ソース等の調味料及び化粧品等の各種商品のガラス瓶容器等においてしばしば目にしてきたありふれた公知公用のものであり、冷蔵庫用脱臭剤の商品分野においても、原告商品の発売開始前の昭和五五年六月には、白色のかぶせ蓋を透明の容器本体に被着し、かぶせ蓋の上面に揮発した脱臭剤が拡散するための透孔を穿設した円筒型容器に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填し、容器本体の内容物の減少具合が外部から透けて見えるように構成した、株式会社ファーストリビング製造販売の冷蔵庫消臭剤「ホワイト」が、伊勢丹、小田急、京王、西武、そごう、大丸、高島屋、東急、東武、松坂屋、阪急、阪神、松屋などの全国の一流デパートを含む多数の小売店舗で販売されていたのであり、そのことは、乙第二六号証(株式会社富士経済発行「’83トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.3三四頁)において、「『キムコ』、『ノンスメル』が活性炭製品であるのに対し、『ニオイのみはり番』は緑色の薬液である点で根本的に違っている。薬液がなくなっていくことにより、効果が目に見え、商品のエンドポイントがはっきりわかるということをメインに訴求しているもので、類似品は既に’80に家庭用品メーカーのファストリビング社から『ホワイト』というブランドが発売されている。」として紹介されていることからも明らかなように、脱臭剤業界において相当広範囲に認識されていたものと認められる。また、「ホワイト」の宣伝広告文中には、「消臭効果が目でわかります」「緑色の溶剤がある間は消臭中」「ホワイトは消臭成分が蒸散し、活躍しているのが外からひと目でわかります。緑色の溶剤が無くなったらお取り換えください。」(雑誌「ミセス」昭和五五年六月号、乙第二二号証)、「緑色の溶剤がある間は消臭中」「ホワイトは消臭効果が外からひと目でわかります。緑色の溶剤がある間は消臭能力がある証拠ですから安心してお使いいただけます。」(同誌同年七、八月号、乙第二三号証及び第二四号証)、「特に溶剤が外からひと目でご覧いただけます。緑色の溶剤が見える間は消臭力がある証拠ですから最後まで安心してお使いいただけます。」(同誌同年一二月号、乙第二五号証)との記載があり、
右記載に照らして考えると、「ホワイト」は、原告商品と同様、使用開始後時日の経過により揮発して量の減少する緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を容器本体に充填し、商品として店頭に陳列されている際には、本体の透光性のある部分から内部を透かして緑色の脱臭剤が容器本体に一杯に充填されている状態が看取でき、
使用を開始すると、充填されていた緑色に着色した脱臭剤の量が減少するので、容器本体の透光性のある部分から内部を透かして見える緑色の部分が減少して見えるという商品コンセプト(広告で、既製概念にとらわれず、商品やサービスを現代社会の中で新しい視点からとらえ、新しい意味づけを与えてそれを広告の主張とする考え方。大辞林〔三省堂〕九三〇頁)を採用し、その点を消費者に強くアピールし訴求しようとする商店であったことが明らかである。したがって、原告主張のB透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状スリットを有する蓋がかぶせられているように見えること、及び、C使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得ることという原告商品の形態も既に「ホワイト」の公知公用の先例があり、原告独自の工夫とはいえない。
(二) 原告商品の宣伝広告及び販売数量・販売期間・市場シェア 原告は、昭和五七年一〇月に大阪地区で原告商品「ニオイのみはり番」シリーズの最初の商品(吊り下げタイプの基本的形態が細長い円柱体形状の商品、検乙第一号証)を発売して以来、昭和六二年までの間に、同商品を対象として、別紙資料1「テレビコマーシャル放映実績」に記載のとおり、全国向けに放映時間約一五秒間ないし三〇秒間のスポット・テレビコマーシャルを繰り返し集中的に放映した。右テレビコマーシャルは、メインキャラクターとして女優の【B】を起用し、コミカルなストーリー仕立てに構成したものを中心に、原告商品の前記商品特性ないし商品コンセプトである「使用を継続すると、充填されていた緑色に着色した脱臭剤の量が減少するので、本体の緑色の部分が次第に減少し下降して見え、商品の取り換え時期が目で見て容易に分かる。
」という点を最大のセールスポイントとして消費者等に強くアピールし訴求することを狙ったものであったが(製作されたテレビコマーシャルフィルム一五本のうち五本〔甲第六号証・「スーパーマーケット ホラ ワカラナイ篇」、甲第七号証・「スーパーマーケット 奥様篇」、甲第八号証・「スーパーマーケット篇」、甲第九号証・「冷蔵庫篇」、甲第一〇号証・「冷蔵庫篇」〕の台詞又は画像中に「効き目が見える」という表現を使用しており、それらのコマーシャルフィルムのトータルの放映時間が一番長い。)、特に、この【B】起用のテレビコマーシャルは消費者に好評を博し、全日本CM協議会のACC賞を受賞した。この間、右テレビコマーシャルの投下量は近畿地方で約六六〇〇GRP、関東地方で約五八〇〇GRP、
中部地方で約五一〇〇GRPに達し、その製作費用は約一億五〇〇〇万円、放映費用は約一三億円に達した(GRPは、広告媒体の効果判定尺度の一つであり、平均デイリー有効サーキュレーション〔ADEC、ADECはAverage Daily Effective Circulationの略語〕を広告市場の人口で除した数値である。デイリーは、照明なしのサインは一二時間、照明つきのサインは一八時間。有効は、コミュニケーションというよりは、サインへのオーディエンスの接近、サーキュレーションは、いろいろな人々の総数というよりは、サインのそばを通るオーディエンスの総数に関する尺度。電通発行「生きる広告。12章」一〇八頁参照)。また、原告は、昭和五七年一〇月から昭和五八年一二月までの間に、別紙資料2「新聞広告実施状況」に記載のとおり、前記円柱体形状の吊り下げ型タイプの「ニオイのみはり番」商品を対象として、全国主要新聞の東京、大阪、
名古屋、九州等の各地区版に七段通し又は一〇段通しの大きなスペースを割いた広告を延べ二四回にわたって掲載し、その費用は総計一億七〇〇万円に達し、その他の新聞、雑誌及び業界紙などでも幅広く同商品の宣伝広告活動を展開した。右新聞及び雑誌等の広告のコピー(キャッチ・フレーズ)の基本コンセプトは「見えるから分かる」というものであったが、テレビコマーシャルの放映時期に合わせて、業界紙及びスーパーマーケット等各種量販店向けの資料等では、「効き目が見える」という表現も採り入れた広告を掲載し、商品カタログ等でも同様の表現を採用した。その結果、株式会社社会行動研究所が、昭和五八年六月二四日から同年七月五日にかけて、大阪市及びその周辺一一市に居住する主婦(住民票により無作為抽出)を対象に個別面接聴取法により実施した調査結果によれば、冷蔵庫用脱臭剤の純粋想起では、「キムコ」を挙げた人が全体の八一%とトップであり、続いて「ノンスメル」の五〇%、「ニオイのみはり番」の一九%の順、助成想起では、「キムコ」が九九%、「ノンスメル」が八七%、「ニオイのみはり番」が七二%の順となっており、「ニオイのみはり番」の認知経路については、テレビコマーシャルが九二%に達し、その宣伝広告の内容想起としては、「へり具合がわかる」が二〇%、
「効果が目でみえる」が一一%となるに至った。「ニオイのみはり番」シリーズ商品の発売以来の総販売量は、平成五年三月までで、販売金額ベースで約一〇〇億円、販売個数ベースで約五〇〇〇万個に達しており、最近の脱臭剤市場における原告の売上シェアは、凸版リサーチの全国二六〇店舗のPOSデータの集計結果によれば、左記のとおりとなっている(単位%)。
期間 ニオイのみはり番(原告)キムコ ノンスメル においパクパク(被告)一九八九年下期 二二・〇 三六・七 三五・四一九九〇年上期 二一・三 三六・八 三五・五 〇・四一九九〇年下期 一九・五 三六・七 三五・五 〇・六一九九一年上期 一八・五 三五・九 三五・〇 〇・九一九九一年下期 一七・四 三三・一 三七・八 一・九一九九二年上期 一五・二 二九・三 三八・一 三・一一九九二年下期(推定)一五・〇 三〇・〇 三八・〇 四・〇(甲四、六〜二七、三二〜七三、検乙一) したがって、以上の原告商品の宣伝広告態様及び販売数量・販売期間・市場シェアに照らして考えると、「ニオイのみはり番」という商品名は、原告の製造販売する冷蔵庫用脱臭剤を意味するものとして消費者間において広く認識されており、中間取引者(問屋等の卸売商、スーパーマーケット等の小売商)についても事情は同じであると考えられる。
しかしながら、右宣伝広告は前示のとおりいずれも吊り下げ型タイプの円柱体形状の「ニオイのみはり番」商品(検乙第一号証)に係るものであり、これと相当に基本的形状を異にする原告主張の載置型ボックスタイプの箱型容器形状の原告商品の容器形状と関連づけてなされたものではない。また、「効き目が見える」というテレビCMのキャッチ・フレーズ(コピー)にしても、右テレビCMそのものは、
従来の活性炭を主成分とするタイプの冷蔵庫用脱臭剤(キムコ、ノンスメル等)では、活性炭は、庫内の臭い成分を吸着する性質を持っているが、効果が減少してもそのことは外観からだけでは分からないが、原告商品は、植物精油を脱臭剤の主成分とし、これを内部が透けて見える容器に充填しているため、外観から内部の成分内容の減少具合も透けて見えるという、冷蔵庫用脱臭剤としての原告商品の基本的特性に係るごく当然の生の事象を、新たな商品コンセプトとして明確に打ち出し(もっとも「ホワイト」について同旨の宣伝広告をしていたから正確にいえば二番煎じとなる。)、その点を他社の従来商品の性能と対比して消費者に強くアピールし訴求するために、「効き目が見える」という単純明快なキャッチ・フレーズを採用し、このキャッチ・フレーズと主演女優【B】の軽妙洒脱な独特のキャラクターと微妙にからませて、コミカル仕立てに構成したアイデアが消費者の心を幅広くつかみ、その大量の放映量とも相まって、アメリカンドラッグコーポレーションの「キムコ」と株式会社白元の「ノンスメル」に殆ど二分されていた当時の冷蔵庫用脱臭剤市場において好評を得、消費者の間に原告商品の商品イメージを深く浸透させる上では大きな貢献をしたものであり、
原告の冷蔵庫用脱臭剤市場への新規参入に際して極めて有力な宣伝広告手段になったものとは認められるけれども、「効き目が見える」というキャッチ・フレーズの表現それ自体は、同種商品ないし他の分野の商品でも、その全部又は一部が使用されることのあるありふれた表現であり(例えば前記「ホワイト」の外、キング化学株式会社販売の冷蔵庫用脱臭剤「コゾレ」〔乙第一六号証〕の透明容器表面には「見える 見える」の文字が印刷されており、産業上の利用分野は異なるが、サンスター株式会社販売の歯磨き「ニュー・ソルト薬用塩」を収容した包装紙箱及び容器チューブ〔乙第一七号証、第一八号証の1〜4〕の表面には「効きめが見える薬用塩で……」の文字が印刷されている。)、それが原告独自の新規造語であるなどの事情は認められず、必ずしも原告の主張するほどに斬新で特徴的なものとはいえないし、消費者の価値観や商品選択の嗜好が多様化して移ろいやすく、商品のライフサイクルや宣伝広告のヒットサイクルも極めて短期化している現在の商取引の実情のもとにおいては、今なお消費者の心理に前記テレビCMの「効き目が見える」というキャッチ・フレーズの表現の記憶が生々しく定着し、それがこの種商品の選択購入の大きな要因をなしているものとは俄かに断じ難く、ましてやその基礎となる、外観から内部の成分内容の減少具合も透けて見えるという商品コンセプトが直ちに原告の製造販売に係る原告商品を想起させるものとはおよそ考えられない。
(三) 冷蔵庫用脱臭剤の市場動向及び流通段階の実態 我が国において、冷蔵庫用脱臭剤は、一九五八年(昭和三三年)にアメリカンドラッグコーポレーションから「キムコ」が発売され、一九六三年(昭和三八年)には株式会社白元から「ノンスメル」が発売され、その後長くこの二社を中心とする市場が形成されてきたが、いずれの商品も臭い成分を吸着する活性炭を主成分とするものが殆どであった。活性炭は、庫内の臭い成分を吸着する性質を持っているが、効果が減少してもそのことは外観からだけでは分らない。そこで、
最近になって昭和五五年に原告商品同様容器本体に緑色に着色したゲル状脱臭剤を充填し、容器内容物の減少具合が外部から透けて見えるように構成し、消臭効果及び消臭剤の残量が見えるように構成し、その構成を商品コンセプトとした「ホワイト」が発売され、それに続いて昭和五七年末に原告商品の「ニオイのみはり番」が発売され、その直後に「効き目が見える」のキャッチ・フレーズを使用した原告商品や「見える 見える」のキャッチ・フレーズを使用した「コゾレ」(キング化学株式会社)が発売され、それに続いて被告商品が発売された。これらの商品は脱臭剤の減少具合が目で見て分るという商品特性ないし商品コンセプトを前面に明確に打ち出したものであり、庫内の臭い成分を中和したり、分解したりする化学反応を利用して脱臭する、植物精油を主成分とするゼリー状のものや二酸化塩素を主成分とする液体状のものを透明ないし半透明の容器に収納した商品など同種製品が市場に出回っており、その商品容器の形態も、庫内の棚にフックで吊るして使用する吊り下げタイプ、シートタイプ、庫内の隅角に沿って設置して使用するコーナータイプ、庫内に載置して使用するボックスタイプなどバラエティーに富んだ商品が販売されており、被告が被告商品「においパクパク」の本格発売を開始した平成二年の時点では、先発メーカーである原告商品の大型化や部位別の商品展開なども殆ど出尽くし、各社とも既存商品の機能向上などにより商品の差別化を図る時期を迎えていた(株式会社富士経済発行「’88トイレタリーグッヅマーケティング要覧」No.2〔甲第七五号証〕一一〇頁は、「積水化学工業の『ニオイの見張り番』は、
活性炭系メーカーが取り替え時期がすぐわかるよう、商品を改良するなどの対抗策をとったのに加え、消費者にも目新しさが薄れてきたことから、販売実績を次第に落としてきている。」と指摘している。)。さらに、冷蔵庫用脱臭剤の市場全体について見ても、その市場規模は、一九九〇年(平成三年)をピークに減少を始めたが、その要因は、冷蔵庫のドア数の増加により、庫内における食品の臭い移りが少なくなったこと、食品ストック用の容器が発達して臭いが庫内が拡がりにくくなったこと、及び、最近では家電メーカー各社が大型冷凍冷蔵庫の大半に脱臭装置を最初から塔載していることなどが挙げられる。したがって、このままでは、今後も当分は市場規模の減少傾向が続くものと見込まれるが、新規参入メーカーが増加しており、ブランドスイッチによる需要の落ち込みがカバーされることも期待され、結果としては横ばいで推移するものと見込まれている(乙第三二号証)。また、一九九一年度(平成四年度)実績に基づく冷蔵庫用脱臭剤市場のメーカーシェア(株式会社矢野経済研究所調査)は、株式会社白元が二七・二%、アメリカンドラッグコーポレーションが二一・七%、積水化学工業株式会社(原告)が一三・〇%、その他が三八・一%という状況にあり、そのような市場動向を反映して、流通市場では、@ 冷蔵室用は、「キムコ317スーパー(アメリカンドラッグコーポレーション)」「スムース21(村上化学株式会社)」「COーOP冷蔵庫脱臭剤(オリモ商事)」「ニオイのみはり番(原告)「コゾレ(キング化学株式会社)」「ノンスメルスカイ(株式会社白元)」「れい蔵っ庫(サンスター株式会社)」「冷蔵室のデオドライザー(森下仁丹株式会社)」など、A 冷凍室用は、「氷キムコ(アメリカンドラッグコーポレーション)」「ニオイのパトカー氷用(エステー化学工業株式会社)」「ニオイのみはり番(原告)」「フリーザーノンスメル(株式会社白元)」など、設置態様、成分・内容量、有効期間、対応容積、取り替え時の目安(使用開始年月を記入、使用開始月に印をつける、中身が固まりになったら取り替える、取り替えの時の分かるシールを貼るなど様々なタイプの商品がある。)、標準小売価格等の点で多種多様な商品がスーパーマーケットなどの小売店舗の店頭の陳列棚に一緒に並べて販売されている状況(甲第二八号証)にある。したがって、
以上のような冷蔵庫用脱臭剤の市場動向及び流通段階の実態に照らして考えると、
冷蔵庫用脱臭剤の需要者である一般消費者の大半を占めるとみられる家庭の主婦層では、この種商品に対する商品知識も相当程度普及しているものと考えられるから、使い勝手(セットのし易さ、容器の形状・大きさ・素材、商品取り替え時期の目安表示の分かり易さ)、商品成分等の表示(読みやすさ、分かりやすさ、内容の適切さ)、各種臭い成分毎の脱臭速度、成分・内容量、有効期間、対応容積、価格などの相当詳細な点についてもかなり突っ込んだ商品知識と関心を有しているものと認められ、特に冷蔵庫用脱臭剤が庫内で日常我々が口にする食品と並んで常時使用される物品であり、購入の際には直接的にその効果が分からない商品であることからすると、消費者は、例えば中身の減少していくタイプの脱臭剤では減少した物質はその後どうなるのか、冷蔵中の食品に影響を与えないのかなど、その成分・内容についても関心を抱くと同時に、容器外形についても庫内で邪魔にならないか、
転倒する危険はないのかなど、種々の要素を総合勘案して商品を選択購入しているものと認められる。
(甲七四、七五、乙一五、二六〜三二、弁論の全趣旨)(四) 店頭販売時の態様 冷蔵庫用脱臭剤商品の小売店舗における販売時の態様についてみると、原告商品は全体が透明な熱収縮性合成樹脂フイルムで完全に包装され、その表面に「ニオイのみはり番」の周知商品名及び原告の著名商標「SEKISUI」の文字が大きく印刷されており(別紙原告商品写真(一)ないし(六)、検甲第二号証、第三号証、第五号証等)、被告商品も、同様に全体が透明な熱収縮性合成樹脂フイルムで完全に包装され、その表面に被告の登録商標「においパクパク」(乙第一〇号証)及び被告の属する関西ペイントグループ各社の共通商標として著名な「アレスコ(ALESCO)」の商標が大きく印刷されている外、特徴的な大きく口を開けたカバの図柄が大きく印刷されている(別紙被告物件写真(三)、(四)、検乙第七ないし第一〇号証等)。そして、以上のような店頭販売時における商品容器の包装に製造販売会社の商標や独自の商品名を大きく印刷表示するという基本的パターンは同業他社の商品(例えば「キムコ317 Kimco」「ノンスメルスカイ 白元」など)についても類似しており(乙第一五号証23頁掲載の写真)、それは消費者の商品識別に大いに寄与しているものと認められる。
(乙一〇、一五、弁論の全趣旨)2 判断 以上のとおり、原告は、国内で初めて本格的に活性炭以外の成分を主成分とする冷蔵庫用脱臭剤の製造販売を始め、それまで活性炭一辺倒であった冷蔵庫用脱臭剤市場に強力に参入し市場規模を拡大した功労者ということができ、「ニオイのみはり番」の発売以来現在まで際立って広範多量な宣伝広告活動を行い、原告商品は、
冷蔵庫用脱臭剤の市場において競合商品が出てきても、活性炭を用いた先発商品のメーカーであるアメリカンドラッグコーポレーション(キムコ)及び株式会社白元(ノンスメル)に続く第三位のマーケットシェアを常に占め、原告商品は多数の問屋・小売店を通じて全国的に流通されており、「ニオイのみはり番」という原告商品の商品名は原告の商品表示として広く認識されるに至っているものと認められる。しかしながら、原告が商品表示性を取得したと主張する@内部の脱臭剤の色が外部から透けて見える透明体を本体とし、その本体に被せ蓋式の白色不透明な蓋を被着せしめた容器を用い、A白色の蓋の頂面から側面にかけて櫛の歯状のスリットが多数穿設されているという原告容器の形態は、従来から脱臭剤、消臭剤及び芳香剤の容器として慣用されてきた容器形状に照らし独創的ではなく、原告商品容器の形態それ自体には格別特異なところはなく、冷蔵庫用脱臭剤という商品の用途や機能的必要性に由来する形態であることが明らかであること、また、B透明な容器本体内に緑色に着色したゲル状タイプの脱臭剤を充填しているため、販売時は、緑色の容器本体に白色で多数の櫛の歯状スリットを有する蓋がかぶせられているように見え、C使用中に容器本体内の緑色の脱臭剤が徐々に減少し少なくなっていくのが外部から確認し得るという点についても、既に「ホワイト」の公知公用の先例があり、必ずしも原告独自の工夫とはいえないこと、脱臭剤市場は、需要が一巡し市場規模の拡大が頭打ちとなり既存メーカーのマーケットシェアが次第に減少する中で、新規参入メーカーを含めた多数のメーカーが各自既存商品の機能向上等の面で競合するという成熟段階に入っており、原告が商品表示性を取得したと主張する原告商品の容器の基本的形状及び構成自体は、他社商品の容器形状とも大差がなく、
現状ではそれらが自他商品の識別力又は出所表示機能を有してはいないと考えられること、流通段階において、原告商品はその表面に大きく表示された「ニオイのみはり番」の周知商品名及び原告の著名商標「SEKISUI」の文字により、「積水の冷蔵庫用脱臭剤」と通常認識されること、需要者である一般消費者は、テレビCMや新聞雑誌等の広告以外にも、店頭での商品陳列や商品カタログ等によって、
原告商品以外の多種類の同種被告商品及び他社製品があることを認識したうえで、
競合する数社の商品の特徴を比較検討したうで商品を選択することができる状況にあり、また、この種商品が冷蔵庫内の人目に触れない場所で使用されるものであることなどの商品の用途及び使用態様から考えると、需要者が主としてその容器外形に着目して商品を選択するものとは考えにくく、需要者である一般消費者の大半を占める家庭の主婦層では、その種商品に対する商品知識も相当程度普及しており、
特にそれが日常家族が口にする食品と並べて使用されることからすると、脱臭能力や安全性等の商品機能の面に専ら関心を注ぎ、それらの点の機能の優劣や製造販売会社を詳細に吟味して商品を選択しているものと認められる。
3 結論 以上のとおりであるから、原告主張の原告商品の形態が、原告主張の昭和五九年の時点においても、本件口頭弁論終結時においても、不正競争防止法2条1項1号にいう商品等表示としての機能を獲得しているものとも、またそうした表示として周知性を取得しているものとも認めることはできない。したがって、その余の点につき判断するまでもなく、原告の不正競争防止法違反を理由とする侵害停止・損害賠償請求はいずれも理由がない。
追加
別紙資料1及び2(省略)被告物件目録(一)(1)別紙被告物件写真(一)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、
平面図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤容器(2)右物品の意匠別紙被告物件図面(一)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図)に記載のとおり(二)(1)別紙被告物件写真(二)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、
平面図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤容器(2)右物品の意匠別紙被告物件図面(二)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図及び底面図)に記載のとおり(三)別紙被告物件写真(三)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤(商品名「においパクパクジャンボ」)(四)別紙被告物件写真(四)(正面図、背面図、右側面図、左側面図、平面図、底面図及び斜視図)に示す冷蔵庫用脱臭剤(商品名「においパクパク」)被告物件写真(一)<27888-001><27888-002><27888-003><27888-004>被告物件写真(二)<27888-005><27888-006><27888-007><27888-008>被告物件写真(三)<27888-009><27888-010><27888-011><27888-012>被告物件写真(四)<27888-013><27888-014><27888-015><27888-016>被告物件図面(一)<27888-017>被告物件図面(二)<27888-018><27888-019><27888-020><27888-021><27888-022><27888-023><27888-024><27888-025><27888-026><27888-027><27888-028><27888-029><27888-030><27888-031><27888-032><27888-033>
裁判官 庵前重和
裁判官 小澤一郎
裁判官 本吉弘行
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