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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成19ネ10097損害賠償請求控訴事件 判例 意匠
平成21ネ2110損害賠償請求控訴事件 判例 意匠
平成17行ケ10135審決取消(意匠)請求事件 判例 意匠
平成17ネ617損害賠償請求控訴事件 判例 意匠
平成22行コ10004異議申立棄却決定取消請求控訴事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  同一物 /  類似する意匠 /  意匠の類似 /  意匠の類否 /  同一物品 /  類似物品 /  非類似物品 /  全体観察 /  本意匠 /  登録意匠 /  類似範囲 /  差止請求(差止) /  損害賠償 /  類似性(類否判断) /  無効審判 / 
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事件 平成 18年 (ネ) 448号 意匠権侵害差止等請求控訴事件
控訴人(1審原告) 大和産業株式会社
同訴訟代理人弁護士 清水伸賢
同 田中義信
同 加藤知徳
同 末弘 婦紗子
同 熊谷卓也
同補佐人弁理士 藤本昇
同 岩田徳哉
同 野村慎一
被控訴人(1審被告) 太陽ビルメン株式会社
同訴訟代理人弁護士 大東恭治
同訴訟復代理人弁護士 室谷和彦
同補佐人弁理士 中谷武嗣
裁判所 大阪高等裁判所
判決言渡日 2006/08/30
権利種別 意匠権
訴訟類型 民事訴訟
主文 1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
控訴の趣旨
1 被控訴人は,原判決別紙イ号物件目録記載の手さげかごを製造し,販売してはならない。
2 被控訴人は,その本店,営業所及び工場に存する原判決別紙イ号物件目録記載の手さげかご及びその半製品を廃棄し,同手さげかごの製造に必要な金型を除却せよ。
23 被控訴人は,控訴人に対し,3000万円及びこれに対する平成17年1月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は,第1,2審を通じて被控訴人の負担とする。
5 3項につき仮執行宣言
事案の概要
1 本件は,スーパーマーケット等の店内において買い物かごとして用いられる手さげかごの被控訴人による製造販売につき,意匠権を有する控訴人が同意匠権侵害を主張して,その製造販売の差止め及び同手さげかご等の廃棄並びに金型の除却を求めるとともに,不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却したため,控訴人が本件控訴を提起した。
2 当事者間に争いのない事実,争点,争点に関する当事者の主張は,原判決2頁14行目から42頁19行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。
ただし,14頁18行目「乙第9号証」を「乙第25号証」に訂正する(以下,「本件意匠権」,「本件登録意匠」,「旧意匠法」,「類似意匠1ないし5」,「イ号物件」,「イ号意匠」,「別件判決」,「イ’号物件」,「公知意匠1,2」等の語を,原判決の用法に従って用いる。)。
3 当審における補充主張〔控訴人〕(1) 本件登録意匠の要部ア 原判決は,「孔の高さが同一である」,「孔の中心線が同一直線上に列設されている」との構成要素を要部と認定したが,類似意匠2・3においては孔の高さは同一ではないし,類似意匠3においては孔の中心線の位置がずれているから,これらの点は要部ではない。
原判決は,リブ孔について「中央部に近づくに従ってわずかに縦が長くなる孔が正面板及び背面板に沿ってそれぞれ23個,左右側面板に沿って3それぞれ13個穿設されている」との構成要素を要部と認定したが,ほとんど見えないか仔細に観察しないと判別できないから,この点は要部ではない。買い物かごが一般顧客に対して販売されることは十分にあるし,看者の範囲を安易にスーパーマーケット等の購買担当者に限定するのは相当でないところ,通常の一般人の視点からさほど注目されない底面から周側面下部の透孔や突リブの細部的な形状を重視するのは妥当でない。
イ 原判決は,乙9のかごを公知意匠1と認定して本件登録意匠の特徴である周側面の形状が公知であるとしたが,公知意匠1は,自転車用前籠であって,当該籠を示す乙9・第1図はその一部しか図示されていないばかりか,縦長長方形状の角孔が上下方向3段に周側面全周面に所定のピッチで打抜き形成された形状からなるものであって,本件登録意匠の四側面の特徴ある形態は何ら表れていない。
原判決は,乙15,25のかごを公知意匠2と認定して,本件登録意匠の特徴である周側面の形状が公知であるとしたが,公知意匠2は,楕円状のかご本体の周側面に極めて幅が狭く小さな縦長長方形状の角孔を上下5段に多数形成された単純な形態であって,一見して本件登録意匠の周側面の形態と相違するものであり,本件登録意匠の四側面の特徴ある形態は何ら表れていない。
したがって,本件登録意匠の周側面の形態は公知ではない。
(2) 本件登録意匠とイ号意匠の類否ア 原判決の類否判断手法(ア) 原判決は,意匠の類否判断は要部の構成態様を共通にするか否かを観察して判断すべきとしつつ,本件登録意匠において周側面の孔及び孔群の形状について要部を認定しながら,イ号意匠との要部の対比においては,要部として認定していない孔の縦列数,孔の幅,孔の幅の広さ,孔の面積比等の構成態様をもって要部の相違点として評価しており,認4定を誤っている。
本件登録意匠とイ号意匠の要部における孔の高さと透孔の数,孔の面積比等の相違は,類似意匠2・3に共通する相違であるため,かかる相違は全体観察すると微差であると評価できる。
そして,孔の中心線が一直線状であるか否かの相違は,イ号意匠においても中段と下段の孔は一直線であり,上段のみが中・下段と位置がずれているにすぎず,類似意匠3に共通する相違であるため,かかる相違は全体観察すると細部的であると評価できる。
(イ) 原判決は,本件登録意匠において突リブの孔について要部を認定しながら,イ号意匠との要部の対比においては,要部として認定していない突リブの形状(リブ形状が細い丸線状か平面状か)と,透孔とリブ孔の配置関係(透孔とリブ孔がずれているか連続か)の構成態様をもって要部の相違点として評価しており,認定を誤っている。
突リブ外周の孔形状において重要な構成要素は,孔がブリッジ状に連接するリブによって正面板,背面板及び左右側面板の孔と別個に形成されている点及び孔が略半楕円形状の孔として表れている点にあり,上記相違は類似意匠4・5に共通する相違点であるため,全体観察すると微差であると評価できる。
イ 原判決認定の要部を前提とした本件登録意匠とイ号意匠の類似原判決が認定した本件登録意匠の要部についてイ号意匠を対比しても,孔の高さと列数の相違,孔の中心線のずれ,突リブの形状や透孔とリブの配置関係といった相違はあるが,要部における本質的相違ではなく,イ号意匠は実質的に本件登録意匠の要部を全て具備するものであるから,イ号意匠は本件登録意匠に類似する。
ウ 別件判決の類否判断別件判決(本件意匠権に基づく別件の意匠権侵害差止等請求事件の1審5判決・甲9)は,本件登録意匠類似する意匠(被告意匠)による意匠権侵害を認めたところ,本件登録意匠と被告意匠の類否判断において,孔の段・列の数の違い,無孔部の外周ラインの有無,底面の形状の違いといった相違点の影響を凌駕して共通の美感を起こさせるものとして類似を認めている。
本件の原判決は,看者の注意を惹くとはいえない細部的な事項を根拠に本件登録意匠とイ号意匠が類似しないとしているが,別件判決の認定手法に照らして誤りがある。
(3) 類似意匠3の参酌原判決は,類似意匠3の意匠登録が意匠登録無効審判により無効とされるべきものであるし,特許庁が類似意匠3が本件登録意匠に類似するとした判断は本件訴訟における類否判断に拘束力を持つものではないとして,本件登録意匠の要部認定に当たりこれを参酌するのは相当でないとしたが,類似意匠制度が存在する以上は,類似意匠として登録されれば類似意匠と実質同一の意匠は本意匠の類似範囲に属するものと判断されるべきであって,これが裁判所を拘束しないと類似意匠制度それ自体を否定することとなるから,本件登録意匠の類似範囲を画定するに際して類似意匠3を参酌すべきである。
〔被控訴人〕(1) 本件登録意匠の要部ア 本件登録意匠の周側面の形態は公知でありふれている。原判決は,パンフレット(乙5,6)にある孔の形状が不明確であるとして要部認定に当たって参酌することはできないとしたが,図面としては不正確な表示であっても略縦長長円形状の孔との原判決が認定した要部の構成を十分に認識することができるから,かかる特徴を備えた手さげかごは公知の意匠である。
イ 控訴人は,類似意匠1ないし5と本件登録意匠の相違点を根拠に,孔の6高さや孔の中心線が一直線状に列設されていることが要部でないと主張するが,原判決は公知意匠を検討した上で要部を認定しており,公知意匠を検討せずに登録された類似意匠との相違点を議論しても意味はない。
控訴人は,リブ孔の構成につきほとんど見えないか仔細に観察しないと判別できないから要部でないと主張するが,買い物かごは通常上から見るところ,上から見た場合は突リブ外周の孔は決して小さくないし,これを形成する丸線材はその形態が特徴的であることからすれば周側面よりも看者の注意を惹くものであるから,原判決が底面と周側面間の突リブ外周の孔の形態が周側面の孔の形状よりもウェイトが低いとした点は疑問があるし,イ号物件の底面の形状は周側面の形状と相まって,本件登録意匠とは異なる印象を与えるものである。
(2) 本件登録意匠とイ号意匠の類否ア 本件登録意匠の周側面の孔群の形状はありふれており,ありふれた形状に共通点があったとしても,他の部分の形態に相違点がありそれにより本件登録意匠とイ号意匠とは美感を異にしている以上は,類似しない。
イ 本件登録意匠と類似意匠1ないし5とは,類似意匠1・4・5が底面の形態が異なり,同2が周側面の透孔の縦方向の大きさが均一でないことが異なるところ,イ号意匠は類似意匠1ないし5のいずれよりも本件登録意匠の形態から遠ざかっており,各類似意匠が登録されていることは,イ号意匠と本件登録意匠の類否判断に当たって指標とならない。
ウ 別件判決において提出された証拠と,本件訴訟において提出された公知意匠等の証拠は異なるから,要部認定が異なることに問題はない。
(3) 類似意匠3の参酌無効事由を有する類似意匠を本意匠の要部認定に当たって参酌するのが相当でないことは,同種事案の裁判例に照らして明らかである。
当裁判所の判断
71 争点(1)(イ号意匠は本件登録意匠と類似するか)について(1) 本件登録意匠の構成は,原判決42頁22行目から45頁8行目までに認定されたとおりであるから,これを引用する。ただし,43頁21行目と44頁8行目各「高さが同一で,」の後に,「形状が上下端が半円弧状の略縦長長円形状で幅がほぼ同一であり」を加える。
(2) イ号意匠の構成は,原判決45頁9行目から48頁1行目までに認定されたとおりであるから,これを引用する。
(3) 本件登録意匠の要部について意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきである。そこで,本件登録意匠の要部を検討する。
物品の性質,用途,使用態様等本件登録意匠に係る物品である「手さげかご」が,スーパーマーケットやデパート等の店内で用いられる買い物用のかご(ショッピングバスケット)であることは,当事者間に争いがない。そして,証拠(甲8の1)及び弁論の全趣旨によれば,上記買い物かごは,スーパーマーケットやデパート等に対して業務用に販売されるものであるから,その需要者として把握されるのは,スーパーマーケットやデパート等の購買担当者であると認めるのが相当である。
そして,証拠(甲8の1・2,乙3,32)及び弁論の全趣旨によれば,購買担当者が買い物かごを選択する際に重視するのは,@店舗のイメージに合った優れたデザインであるか否か,A客単価の向上につながるかごの8容量が大きいか否か,B堅牢か否か,C上部周辺の形状や周側面の孔がかごの網口に指を挟むことのない安全性に配慮した形状であるか否か,Dサイドグリップの有無や把手杆の形状が顧客にとって使い勝手のよいものであるか否か,E広告機能に配慮したものであるか否か,Fメンテナンスの容易さ,の各点であると認められる。
そうすると,この種の買い物かごの需要者であり,看者であると想定されるスーパーマーケットやデパート等の購買担当者は,上記AないしFの個々の形態上の機能性に注意を払うことはもちろん,当該買い物かごのデザインが店舗のイメージにあった優れた美感を有するものであるか否かを顧客の視点に立って観察するものというべきである。
したがって,かかる観点から,需要者がまず注意を払うのは買い物かごの全体形状であり,全体形状を俯瞰するためには,やや斜め上方からかご全体が視野に収まる程度の距離をおいて観察するのが通常であると考えられる(甲8の1,乙3等の買い物かごのパンフレットにおいて,製品をやや斜め上方からかご全体が視野に収まるように撮影した写真が用いられているのも,全体形状を俯瞰するためであると推認されるところである。)。
そして,やや斜め上方から買い物かごを観察した場合,買い物かごは比較的高さがあるため,まず目につくのは,最も面積が広い周側面(とりわけ正面板)であり,デザインや,孔・網目に指を挟むことを防止するとの安全面からも,購買担当者の注目するのは最も面積が広い周側面の構成態様と認められる。ただし,周側面の底辺部に存在するリブの構成態様も,面積としては周側面よりは小さいものの,デザインの上では周側面と同一平面上にあることから,購買担当者の注意を惹くものと認められるし,そのほか,上端縁部の形状や把手杆の形状,広告表示用のスペース(無孔部)の有無,形状なども,購買担当者の注意を惹くものと認められる。
イ 公知意匠9(ア) 本件登録意匠の意匠登録出願前に公知であった「手さげかご」に係る意匠として,原判決別紙手さげかごの公知意匠マップに記載された公知意匠(甲6の1〜4)があり,本件登録意匠の基本的構成態様は,すでにこれらの公知意匠に表れた公知の意匠であると認められる。
(イ) 具体的構成態様@(かご全体の形状及び寸法比),同A(かご本体の正面板及び背面板の孔群及び無孔部並びに切欠部の配置)のうち「かご本体の正面板及び背面板に,上下端が半円弧状の略縦長長円形状の孔が,中央上方部に設けられた広告表示用の略長方形状の無孔部を除いて一面に列設されていることや,無孔部の上方に高さの低い孔が穿設されている」点,及び同C(かご本体の左右側面板の孔及び孔群並びに切欠部の配置)のうち「かご本体の左右側面板に,正面板及び背面板における孔と同形状の孔が縦・横に穿設され,両側端縁との間に一定幅の無孔部を有している」点は,公知意匠マップ記載の「河淳株式会社製手さげかご」の意匠に見られる公知の意匠であると認められ,同E(無孔部の形状)も,公知意匠マップの実用新案出願公開昭58-41314号公報の意匠に見られる公知の意匠であると認められる。
(ウ) 本件登録意匠に係る物品である「手さげかご」は,前記アのとおり,スーパーマーケット等の店内で買い物かごとして用いられる物品であるところ,証拠(乙9)によれば,本件登録意匠の意匠登録出願前に,実用新案出願公告昭42-10413号公報(公告日昭和42年6月8日)第1図記載の「自転車用前籠」の意匠(公知意匠1)が公然知られていたことが認められる。公知意匠1は,金板をプレスして籠状に形成し,これに網目模様等を打ち抜いて網目模様を形成する自転車用かごに係る意匠である。
なお,控訴人は,当該かごを示す上記第1図はその一部しか図示されていないことを主張するところ,確かに,同第1図では,かごの一部に10のみ孔(網目模様)が形成され,その余の部分には孔が穿設されていないかのように図示されているが,同図の体裁及び同公報の「図面の簡単な説明」の記載に照らせば,同部分は単に孔(網目模様)の記載が省略されているにすぎないことが窺われ,同図は周側面全体に略扇形状に配列して孔が穿設されていることを図示したものであることが推認される。
また,控訴人は,公知意匠1に係る考案の対象である自転車用かごは,本件登録意匠に係る物品である「手さげかご」とは,物品の用途,機能を異にする非類似物品であり,本件登録意匠の要部認定に当たり参酌されるべきではないと主張するところ,自転車用かごと買い物かごとでは,手に持って携帯するかごであるか,自転車に固定して用いるかごであるかという点において大きな差があり,少なくとも物品の用途が相違するから,物品として同一ということはできない。
しかしながら,登録意匠の要部を定めるにあたって,創作性の有無,その存在する箇所をも考慮すべきところ(法3条2項参照),そのための資料を同一物品に関するものに限定しなければならない理由はなく,物品の異同の態様に応じた考察を加えることは当然として,本件登録意匠の要部認定において参酌すべきものと解される。
そして,公知意匠1は,かご本体がやや横長長方形状で,上方に向かって順次幅広で形成されてなる上面開口型であり,周側面に多数の孔が穿設されている点で,本件登録意匠と基本的構成態様を共通にし,具体的構成態様においても,孔の幅がほぼ同一で,全体の孔群の形状が略逆台形状であり,中心線が上下方向の同一直線上に列設される孔を周側面に列を形成して略扇形状に配列したものである点で,本件登録意匠と共通し,かごの周側面の孔の形状が略長方形状である点で,縦長長円形状の本件登録意匠と相違する。
したがって,上記共通する構成に関する創作性は低いと言わざるを得11ない。
(エ) 証拠(乙15,25)及び弁論の全趣旨によれば,本件登録意匠の意匠登録出願前である昭和57年2月ころに作成された,果物や野菜を採集する際に用いる採集カゴの写真を掲載したパンフレットが配布されたことが認められ,その意匠(公知意匠2)が公然知られていたことが認められる。
採集カゴは,手さげかごと用途又は機能が同一若しくは類似する物品であり,公知意匠2は,全体の形状が全体として丸みを帯びた略長方形状である点で本件登録意匠と相違するが,横長長方形状に近い形状であって,その周側面は上面に向かって順次幅広で形成されてなる上面開口型であり,周側面及び底面に多数の孔が穿設され,両側上端縁に一対の把手杆が回動自在に取り付けてある点で共通する。
控訴人は,公知意匠2は,一見して本件登録意匠の周側面の形態と相違するものであり,本件登録意匠の四側面の特徴ある形態は何ら表れていないと主張するところ,確かに,公知意匠2の具体的構成態様においては,広告宣伝用無孔部がなく,周側面全体に孔が形成されている点や,各周側面の端部が丸みを帯びてカーブしているため,明瞭に縁部の存在があるとは認められないといった相違点はあるが,同一の高さの縦長長方形状の孔を,かごが上方に拡開する角度に合わせて,中心線が上下方向の同一線上に列設される縦5個の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方に拡開して配設されている点で共通するものであるから,かかる意匠が公知となっていたことは,本件登録意匠の要部認定において参酌すべきものと解される。
(オ) 同Aのうち「透孔と縦長さが同じで横幅が約2分の1の大きさの切欠部が5個形成されている」点,及び同Cのうち「両側端縁には該孔と12縦長さが同じで横幅が約2分の1の大きさの切欠部が5個形成されている」点は,前記公知意匠には見られない形態である。
また,同B(かご本体の正面板及び背面板の孔群の形状)のうち「かご本体の正面板及び背面板に穿設された透孔は,高さが同一で,形状が上下端が半円弧状の略縦長長円形状で幅がほぼ同一であり,上方になるに従ってわずかに幅広になり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向の同一直線上に列設される5個の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす5個の透孔の中心線は,かご本体の両側端縁と略平行しており,5個の孔列はあたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設される」点,及び同D(かご本体の左右側面板の孔及び孔群の形状)「かご本体の左右側面板に穿設された透孔は,高さが同一で,形状が上下端が半円弧状の略縦長長円形状で幅がほぼ同一であり,上方になるに従ってわずかに幅広になり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向の同一直線上に列設される5個の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす5個の透孔の中心線は,かご本体の両側端縁と略平行しており,5個の孔列はあたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設される」点については,前記公知意匠のいずれも,縦長長円形状の孔の縦列はすべて垂直に穿設されていて,左右端の縦列の孔は逆三角形状をなしていることによれば,これらの具体的構成態様は,前記公知意匠には見られない新規の形態であると認められる。
さらに,同G(底面から周側面下部の透孔の形状)「突リブ外周の孔は,底面と正面板,背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板,背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり,正面,背面及び左右側面においては略半楕円形状の孔と13して表れ,該突リブの四角部には無孔部が存し,それ以外の外周には底面から見てほぼ四角形に見え,中央部に近づくに従ってわずかに縦が長くなる孔が正面板及び背面板に沿ってそれぞれ23個,左右側面板に沿ってそれぞれ13個穿設されている」点も,前記公知意匠に同様の構成を具備したものは存在せず,新規の形態であると認められる。
ウ 登録類似意匠(類似意匠1ないし5)(ア) 控訴人は,本件登録意匠について,原判決別紙意匠公報2ないし6,及び原判決別紙本件登録意匠と類似意匠マップ各記載の類似意匠1ないし5が類似意匠登録されたことを考慮すれば,本件登録意匠の要部は,各類似意匠に共通する基本的構成態様にあると主張しており,当審においても孔の高さが同一であることや孔の中心線が同一直線上に列設されていることは本件登録意匠の要部ではないと主張する。
(イ) 類似意匠が登録されている場合,本意匠の要部は類似意匠にも共通して存在するはずであるところ,類似意匠1ないし5においては,かご本体の形状がやや横長長方形状で,その周側面が上方に向かって順次幅広に形成されてなる上面開口型であり,周側面及び底面に多数の孔が穿設され,両側上端縁に一対の把手杆を有する手さげかごであること,かご本体の正面板,左右側面板に穿設された多数の孔の形状が上下端が半円弧状の略縦長長円形状で幅がほぼ同一であり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向のほぼ同一直線上に列設される透孔が列を形成し(なお,類似意匠3については,正面板に穿設された孔が縦3段で上段は16列,中・下段は24列であるが,上段の列のうち無孔部の上部を除く左右の各5列の位置関係は,中・下段の各6列に合致し,左右側面板に穿設された孔が縦3段で上段は13列,中・下段は15列であり,上段孔群と,中・下段孔群とで中心線に若干のずれがあるが,ほぼ同一の範囲内にあるし,かかる構成をとるのは5つの14類似意匠のうちの1つだけである。),中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす透孔の中心線が,かご本体の両側端縁と略平行しており,孔の縦列はあたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設されていること,かご本体の正面板の中央上方部に広告表示用の略長方形状の無孔部が設けられ,無孔部の上部に他の孔部に比し高さの低い孔が形成されていることの諸点で共通する。
(ウ) そうすると,控訴人の主張する基本的構成態様が類似意匠1ないし5に共通することはもとよりであるが,その余にも共通する点があり,少なくともこれらすべてが要部となるものであるから,基本的構成態様のみが共通しこれが要部となる旨の控訴人の主張は採用し得ない。
エ 本件登録意匠の要部(ア) 前記各公知意匠との対比において,本件登録意匠においては,具体的構成態様B・Dのうち「多数の透孔の形状が上下端が半円弧状の略縦長長円形の形状で幅がほぼ同一であり,上方になるに従ってわずかに幅広になり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向のほぼ同一直線上に列設される複数の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす複数の透孔の中心線は,かご本体の両側端縁と略平行しており,複数の孔列はあたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設される」点,及び同G「突リブ外周の孔は,底面と正面板,背面板及び左右側面板とをブリッジ状に連接するリブによって正面板,背面板及び左右側面板の孔とは別個に形成されているものであり,正面,背面及び左右側面においては略半楕円形状の孔として表れ,該突リブの四角部には無孔部が存し,それ以外の外周には底面から見てほぼ四角形に見え,中央部に近づくに従ってわずかに縦が長くなる孔が正面板及び背面板に沿ってそれぞれ23個,左右側面板に沿ってそれぞれ13個穿設されている」点15が,新規な印象を与えるものというべきである。
なお,同A・Cの5個の切欠部については,いずれも各周側面の端部に位置しており,かご本体を正面,背面又は左右側面から観察したときに限って,隣接する周側面に穿設された孔が切欠部として見えるというものにすぎず,注意して観察しない限り,切欠部として認識することは少ないものと認められるから,需要者の注意を惹くものということはできない。
そして,本件登録意匠の具体的構成態様B・Dのうち,多数の透孔の形状が上記のとおりであってその幅がほぼ同一であり,上方になるに従ってわずかに幅広になり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向のほぼ同一直線上に列設される複数の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす複数の透孔の中心線は,かご本体側面板の傾斜と等しく,複数の孔列があたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設される点は,形態が新規である上,かご本体で最も面積が広く,目につきやすい周側面の形態であり,孔自体の形状ともあいまって,柔らかな印象を与えるとともに,縦長長円形状の縦列の孔が,上下幅をほぼ等分して規則的に配列されている点で,面板状の周側面に整然と孔を打ち抜いたような印象を与えるものである。また,同Gの突リブの孔及び無孔部の形状も,周側面が板面状であるのに対して,底面との隣接部である底面縁部のみ丸線材を用いたようなリブ形状であるため,二つの異なる素材を組み合わせたような構成となっている点も,看者の注意を惹くというべきである。
(イ) 周側部の孔の形状については,公知意匠1によれば,従来から,かご本体がやや横長長方形状で,その周側面は上方に向かって順次幅広で形成されてなる上面開口型のかごにおいて,正面板及び背面板にほぼ同16一の幅の孔を多数配列し,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設し,中心線が上下方向の同一直線上に列設される孔が列を形成し,その両端の孔の中心線をかご本体の両側端縁の傾斜と等しく揃える形態は,ありふれた形態であったことが認められる。
また,公知意匠2は,かご全体の形状が丸みを帯びている点で,本件登録意匠とは基本的構成態様において相違するが,同一の高さの縦長の孔を,かごが上方に拡開する角度に合わせて,中心線が上下方向の同一線上に列設される縦5個の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方に拡開して配設する形態を備えており,やはりかかる形態がありふれた形態であったことが認められる。
(ウ) 以上によれば,本件登録意匠の要部は,具体的構成態様B・Dにおける,多数の透孔の形状が上下端が半円弧状の略縦長長円形状で幅がほぼ同一であり,上方になるに従ってわずかに幅広になり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向のほぼ同一直線上に列設される複数の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす複数の透孔の中心線は,かご本体の両側端縁と略平行しており,複数の孔列はあたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設される点にあるものと認めることができる。そして,このような構成を備えることにより,本件登録意匠は,周側面部について,孔の形状及び周側面の両端の孔も同じく上下端が半円弧上の略縦長長円形状であるために,全体として柔らかく,かつ,孔の縦列が上下幅をほぼ等分し,さらにすべての縦列がほぼ同一直線上に規則的に配列されているために,整然とした,まとまりのある印象を看者に強く感じさせるものと認められる。
(4) 本件登録意匠とイ号意匠の対比及び類似17ア対比イ号意匠が本件登録意匠と相違する点は,原判決45頁21行目から48頁1行目まで(イ号意匠の具体的構成態様)において,下線を引いた部分である。
すなわち,イ号意匠は,本件登録意匠と基本的構成態様において共通し,具体的構成態様においては,周側面の両側端には両側端縁との間に一定幅の無孔部を有していること,両側端の孔の中心線はかご本体の両側端縁と略平行していること,正面板及び背面板には広告表示用の無孔部が存在すること,底面には左右側面板と平行の2本の縦枠と正面板及び背面板と平行の2本の横枠とが中央で交差するよう形成されていること,かご本体の長手方向上側端縁には一対の係合部が突設され,該係合部には平面略視コ字状の把手杆が回動自在に設けられていること等が共通する。
他方,本件登録意匠の透孔は,縦列の孔群は幅がほぼ同一であるのに対し,イ号意匠の透孔は,縦列の孔群は下から順に幅が広くなっている上,本件登録意匠においては,周側面の透孔の中心線が上下方向にほぼ同一直線上に配列されているのに対し,イ号意匠では,下段孔群の透孔と中段孔群の透孔については,中心線はほぼ同一線上に配列されているが,上段孔群の透孔の中心線は,これとは一致していない点で相違する。そのため,透孔の傾き方も,本件登録意匠においては,すべての孔の中心線が一つの扇の骨のように拡開しているのに対し,イ号意匠においては,上段孔群と中段及び下段孔群とで,中心線が二つの扇の骨のように拡開しているような印象を与えることが認められる。
控訴人は,本件登録意匠とイ号意匠における孔の高さと透孔の数,孔の面積比,透孔の中心線が同一線状か非直線上か等の相違につき,細部的であると主張するが,採用し得ない。すなわち,本件登録意匠の要部は,縦列の孔群の幅がほぼ同一で,その中心線が上下方向にほぼ同一線上に配列18されている点にあり,その点の相違は細部的でない。なお,類似意匠2が上記要部認定に符合していることは明らかであり,イ号意匠と明らかに相違するものであって,その相違は細部的とはいえない。また,類似意匠3においては,周側面の透孔の中心線に若干のずれがあり,上段の孔群と中・下段の孔群とで孔の幅に相違があるが,正面板の上段の列のうち無孔部の上部を除く左右の各5列の位置関係は,中・下段の各6列に合致し,左右側面板の孔群は上段は13列,中・下段は15列であるから,上記要部認定に沿うものである。そして,正面板の孔群の左右各5列のうち外側4列の位置関係が中・下段の各6列に合致し,左右側面板の孔群が上段の各4列が中・下段の各6列(なお,上段が12列,中・下段が18列である。)に合致するイ号意匠とは,中心線のずれの程度が明らかに相違するものであって,その相違は細部的とはいえない。
仮に,上記の点の相違が細部的であるとすると,類似意匠3は,原判決57頁7行目から58頁21行目まで説示のとおり,無効事由を有する結果となるのであって,権利登録されていることと矛盾し,整合的でない。
イ類似前記のとおり,本件登録意匠の要部は,多数の透孔の形状がほぼ同一であり,上方になるに従ってわずかに幅広になり,全体の孔群が略逆台形状を呈するよう穿設され,中心線が上下方向のほぼ同一直線上に列設される複数の透孔が列を形成し,中央から左右に離れるに従って次第に傾斜して,左右端の列をなす複数の透孔の中心線は,かご本体の両側端縁と略平行しており,複数の孔列はあたかも扇の骨のごとく最下段から最上段まで上方へ拡開して配設される点である。そして,本件登録意匠は,このような構成を備えることにより,全体として柔らかく,かつ整然とした,まとまりのある印象を与える点が意匠全体から受ける美感の中でも特に印象に残るものである。
19他方,イ号意匠の要部における相違点は前記認定のとおりであり,その透孔の孔群は,下から順に幅が広くなっている点で相違し,また,下段孔群の透孔と中段孔群の透孔の中心線はほぼ同一線上に配列されているが,上段孔群の透孔の中心線はこれとは明らかに一致していない点で相違している。そのため,透孔の傾き方も,本件登録意匠においては,すべての孔の中心線が一つの扇の骨のように拡開しているのに対し,イ号意匠においては,上段孔群と中段及び下段孔群とで,中心線が二つの扇の骨のように拡開しているような異なった印象を与えるものである。
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠の要部の構成と異なっており,全体として本件登録意匠とは美感を異にするというべきである。
なお,控訴人は,原判決が認定した本件登録意匠の要部を前提にしても,イ号意匠との相違は本質的相違でないこと,別件判決が本件登録意匠と被告意匠の類否判断において,孔の段・列の数の違い等の相違点の影響を凌駕して共通の美感を起こさせるものとして類似を認めたことを主張するが,イ号意匠の本件登録意匠との相違が前記認定にかかる要部の構成と異なることは上記のとおりであるし,別件判決における被告意匠や当事者の主張及び提出証拠と,本件訴訟におけるそれはいずれも異なるものであるから,別件判決における認定と本件訴訟における認定が必ずしも一致するものではない。
よって,イ号意匠は,本件登録意匠とは類似しているとはいえない。
2結論その他,原審及び当審における当事者提出の各準備書面記載の主張に照らし,原審及び当審で提出,援用された全証拠を改めて精査しても,以上の認定,判断を覆すほどのものはない。
以上によれば,控訴人の請求はいずれも理由がなく,これを棄却した原判決は相当であるから,本件控訴は棄却を免れない。
20よって,主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成18年6月21日)
裁判長裁判官 若林諒
裁判官 小野洋一
裁判官 菊地浩明
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