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関連審決 不服2005-22660
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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成17行ケ10253審決取消請求事件 判例 意匠
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平成10ワ11674意匠権及び実用新案権侵害差止等請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  部分意匠 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  一意匠一出願(7条) /  類似する意匠 /  意匠の類否 /  全体観察 /  関連意匠(10条) /  本意匠 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) / 
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事件 平成 18年 (行ケ) 10492号 審決取消請求事件
原告株 式会社ブリヂストン
訴訟代理人弁理士永芳太郎
同 水野尚
被告特 許庁長 官中嶋誠
指定代理人上島靖範
同 関口剛
同 岩井芳紀
同 大場義則
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2007/05/16
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
全容
第1請求特許庁が不服2005-22660号事件について平成18年9月25日にした審決を取り消す。
第2当事者間に争いがない事実1特許庁における手続の経緯原告は,平成16年12月14日,別添審決謄本写しの別紙第1表示の意匠について,意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし,物品の部分(実線で現された部分)について意匠登録を受けようとする意匠登録出願(意願2004-38210号,以下「本件出願」といい,その意匠を「本願意匠」という。)をしたが,平成17年10月26日(発送日)付けで拒絶査定を受けたので,同年11月24日,拒絶査定に対する不服の審判を請求した。
特許庁は,これを不服2005-22660号事件として審理し,平成18年9月25日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同年10月5日,原告に送達された。
2審決の理由( )審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願意匠は,別添審決謄本写し1の別紙第2表示の,平成14年10月24日に出願され,平成17年3月4日に意匠権の設定の登録がされた意匠登録第1236665号の意匠(意匠に係る物品・自動車用タイヤ。以下「引用意匠」という。)に類似し,意匠法9条1項に規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないから,意匠登録を受けることができないとした。
( )審決が認定した,本願意匠と引用意匠の共通点及び差異点は,それぞれ次2のとおりである。
ア共通点(審決謄本2頁第3段落)(ア)基本的構成態様の共通点トレッド面の中央に縦溝(以下「中央縦溝」という。)を設け,その中央縦溝に対して,左右対称のショルダー寄りに,それぞれ縦溝(以下「外側縦溝」という。)を設け,中央縦溝と外側縦溝により,トレッド面を中央2列の帯状部(以下「内側帯状部」という。)とショルダー寄りの外側2列の帯状部(以下「外側帯状部」という。)の4列の帯状部に分割している点(イ)具体的態様の共通点( )共通点(1)a内側帯状部が,それぞれ右下がりの細幅の傾斜横溝で等間隔に分割され,略「S」字状の同形状ブロックが千鳥状に配列された態様である点( )共通点(2)b中央縦溝,及び外側縦溝が,同じピッチでジグザグ状に形成している点イ具体的態様の差異点(同頁第4段落〜第5段落)(ア)差異点(1)外側帯状部の外側において,引用意匠には,等間隔に略三角形状の切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点(イ)差異点(2)内側帯状部の向かい合ったブロックの内側凸部において,引用意匠は,切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点(ウ)差異点(3)内側帯状部のブロックの外側凹部において,引用意匠は,切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点(エ)差異点(4)外側帯状部の内側凹部において,引用意匠(注,審決は「本願意匠」とするが,「引用意匠」の誤記と認める。)には,切り欠きがあるのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点第3原告主張の審決取消事由審決は,本願意匠と引用意匠の形態について,具体的態様の共通点(1)の認定を誤り(取消事由1),差異点の認定を誤り(取消事由2),類否判断を誤った(取消事由3)結果,両意匠が類似するとの誤った結論に至ったものであるから,違法として取り消されるべきである。
1取消事由1(具体的態様の共通点(1)の認定の誤り)( )審決は,本願意匠と引用意匠の具体的態様の共通点(1)として,「内側1帯状部が,それぞれ右下がりの細幅の傾斜横溝で等間隔に分割され,略『S』字状の同形状ブロックが千鳥状に配列された態様である点」を認定したが,誤りである。
( )本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロック形状は,いずれも「略『S』2字状」とされる形状ではないし,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロック形状には,顕著な差異がある。
アルファベットの「S」字は,左右相反する方向に開口した円弧を上下段違いに連接した概略形状であり,そのような形態を概括して,「略『S』字状」と表現することはあるが,本願意匠の内側帯状部の各ブロックは,左右列のブロックとも,正面視内側辺を山形の突出として凹部を設けず,各ブロックの全体形状は,縦長長方形の略中央を「く」字状に屈曲させ,外方辺の一方角部を直線状に隅切りしたものであって,左右方向を向いた略矢羽根形状を呈するものであり,到底略「S」字状と概括し得る形状ではない。
また,引用意匠の内側帯状部の各ブロックは,左右側辺から仮想直線上に相対して設けた正面視台形状の切り込みによって,上下略3分の1位置でくびれ,矢印の頭部形状を呈する部分と略五角形状部とが,くびれ部を介して斜め上下に連接した全体形状であって,「S」字状と概括し得る要素は認められない。
単位ブロックの外側辺に着目したとしても,本願意匠及び引用意匠の外側辺が共に「S」字状であるわけではなく,各ブロックの形態が,略「S」字状の同形状ブロックとして共通するものではない。
略「く」字状,あるいは略矢羽根形状というべき本願意匠の内側帯状部の各ブロック形状と,引用意匠の内側帯状部のブロック形状は,何ら共通するものではない。審決は,このような両形状の明らかな差異を看過し,誤って共通点として認定したものである。
2取消事由2(差異点の認定の誤り)( )審決は,外側帯状部の外側の切り欠きの有無(差異点(1))について, 1基本的構成態様の差異とすべきであるにもかかわらず,具体的態様の差異と誤って認定した。
形態の骨格をなし,意匠全体の形態上の基調を構成する要素は,基本的構成態様として認定されるべきであり,このことは,その要素がありふれたものであるか否かにかかわりない。
外側帯状部の外側の切り欠きの有無,すなわち,引用意匠のみに表れる,トレッド面のショルダー部(以下,単に「ショルダー部」という。)に等間隔に設けられた,正面側に台形状,側面側に矩形状に表れる切り欠きは,トレッド面の横幅の略半分幅を占める外側帯状部について,その帯状部の外方端部から帯状部の略中央まで至る大きさであって,側面側にも,正面側と略同幅に大きく表れるものであり,その有無は,意匠全体の中で,いずれの方向から観察した場合にも極めて目に付きやすい部分における大きな範囲を占める構成態様の差異であって,全体の骨格を支配する形態要素に係る顕著な差異である。
また,自動車用タイヤにおいて,トレッド面を横方向に刻む溝を主体として構成したタイヤをラグ(LUG)パターンのタイヤと,周方向に連続する縦溝を主体として構成したタイヤをリブ(RIB)パターンのタイヤと,引用意匠のように,縦溝と横溝とを組み合わせたものをリブ・ラグ(RIB・LUG)パターンのタイヤとそれぞれ称し,これらは,使用目的,機能が異なるタイプのタイヤとして類別されている。ショルダー部に大きな切り欠きを設ける引用意匠のような態様のタイヤは,リブ・ラグパーターンのタイヤとして,切り欠きを設けない本願意匠のようなタイヤに比して,路面への食いつきを良くして駆動力を高めることを目的として,駆動輪に装着するタイヤなどに採用されるものである。
したがって,本願意匠と引用意匠のショルダー部の切り欠きの有無は,顕著な形態の差異によって視覚的印象を異にするものであり,また,使用目的等を勘案して形態を観察する,この種の自動車用タイヤの需要者にとって,両意匠が,タイプの異なるタイヤであることを感受させる視覚的効果を有する差異であり,意匠全体の基調を決定付ける基本的構成態様の差異としてとらえるべきである。
被告は,ショルダー部の切り欠きについて,類否判断に与える影響は微弱なものであるから,基本的構成態様ではなく,具体的態様である旨主張するが,意匠の認定と判断について主客転倒した不当な主張である。
( )審決は,本願意匠と引用意匠の具体的態様の差異点として,トレッド面の2帯状部及びその間の縦溝部の態様の差異点を,差異点(2)ないし(4)として,各帯状部の片側の側辺ごとの態様に分節して認定したが,これは,形態としてまとまりある部分としての認定を怠って,形態要素を必要以上に分節して認定したものである。
本願意匠と引用意匠の各部の具体的態様を対比した場合,看者の目をひくところは,形態のまとまりとして把握され,観点によっていずれも主体となって認知されることとなる模様と地の関係にある,内側帯状部の各ブロックの形状,連接態様及び帯状部間に形成される縦溝部の態様である。本願意匠と引用意匠においては,これらの具体的態様が異なるにもかかわらず,審決は,それらを構成する形態の一部でしかない,帯状部片側の側辺ごとに,形態を細かく分節して認定することによって差異点の希釈化を生じさせた。
すなわち,前記1( )のとおり,本願意匠と引用意匠の内側帯状部の各ブ2ロックの形状は,全く異なる。
また,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロックの連接態様は,顕著に異なる。本願意匠は,上下のブロック間を,ごく細いサイプ様の切り込みを介して連接し,帯状部全体としては,同幅でジグザグ状を呈する一連の帯状に看取される態様であるのに対し,引用意匠は,上下ブロック間に,帯状部間の縦溝の略2分の1幅のやや広幅の溝を設け,上下に間隔を空けて並ぶ各ブロックが,島状に別個に看取される態様であり,島状に表れる各ブロックごとに上下略3分の1位置に設けたくびれによって形成される,上下斜め方向に向けた矢印の頭部形状が目をひくものである。これは,帯状部全体を同幅帯状に連なる態様とした本願意匠とは,造形思想が基本的に異なる。
さらに,本願意匠と引用意匠は,中央縦溝及び外側縦溝とも,形態のまとまりとして把握される具体的態様が顕著に異なる。本願意匠の縦溝は,同幅同形の溝3本を平行状のジグザグ形状に形成したシンプルなものであるのに対し,引用意匠の縦溝は,中央縦溝の1本については,ジグザグ形状の谷状角部ごとに正面視台形状の切り込みを突設し,左右の外側縦溝については,中央縦溝とは態様を変えて,ジグザグ形状の頂点角部ごとに同様の切り込みを突設している。このようにすべての縦溝に台形状の切り込みを左右交互に突出させた態様は,ショルダー部切り欠きの態様と相まって全体の基調を形成するものとなっているものであり,同幅同形の溝で何ら切り込みを設けない本願意匠と視覚的印象が顕著に異なる。
( )被告は,差異点(2)ないし(4)に認定された引用意匠の帯状部側壁に3設けた切り欠きについて,その部分のみを注視した場合に気付く程度の微細なものである旨主張するが,実施品実寸法の10分の1程度に縮小されている図面(甲3)においても,引用意匠については,トレッド面の全面にわたって切り欠きが設けられている態様及び切り欠きの具体的形態が明らかに看取できて,本願意匠との比較において,その有無の差異が目をひくものであり,微細というほどに極めて細かいものではない形態要素について,これを微細であるとわい小化するものである。
3取消事由3(類否判断の誤り)( )共通点の評価の誤り1ア審決は,「トレッド面の中央に中央縦溝を設け,その中央縦溝に対して,左右対称のショルダー寄りに,それぞれ外側縦溝を設け,トレッド面を内側帯状部2列と外側帯状部2列の4列の帯状部に分割した基本的構成態様」について,「両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。」(審決謄本2頁第7段落)としたが,上記基本的構成態様は,この種自動車用タイヤにおいて,極めて普通に見られる概括構成でしかなく,この共通性は,類否判断を左右する要素とはなり得ない。
このことは,上記基本的構成態様と同じ概括構成を有しながら,それぞれ類似しない意匠として別個独立に意匠登録されている例(意匠登録第429483号公報〔甲7〕,同第741006号公報〔甲8〕,同第752332号公報〔甲9〕等)が多数存在することからも明らかである。
イ審決は,上記基本的構成態様は,「共通するとした各部の具体的態様の(1)及び(2)と相俟って,看者に共通する印象を与える」(同段落)としたが,具体的態様の共通点(1)のうち,両意匠の内側帯状部のブロックが略「S」字状の同形状であるとした認定には誤りがあり,共通点(1)の他の態様である「内側帯状部がそれぞれ右下がりの細幅の傾斜横溝で等間隔に分割」され「同形状ブロックが千鳥状に配列された態様」,及び,共通点(2)の「中央縦溝,及び外側縦溝が,同じピッチでジグザグ状に形成している」態様は,いずれも,共通する態様のものが従来から存在し,新規な態様についての共通性ではない。
したがって,本願意匠と引用意匠の共通点は,従来から存在する,特徴のないものであり,意匠の類否判断において,これらの共通点が高く評価されるのは,その余の形態において,類否判断上,評価すべき特段の差異がない場合であるところ,本願意匠と引用意匠は,構成各部の差異が顕著であって,共通点がそれらを凌駕して類否判断を決する要素となっているとはいい難い。
( )差異点(1)の評価の誤り2ア審決は,「各部の具体的態様のうち,差異点(1)について,すなわち,外側帯状部の外側の略三角形状の切り欠きの有無の差であるが,引用意匠(注,審決は「本願意匠」とするが,「引用意匠」の誤記と認める。)のように切り欠きを設けることも,本願意匠(注,審決は,「引用意匠」とするが,「本願意匠」の誤記と認める。)のように設けないことも,この種物品分野においては,ごく普通に行われているところであり,・・・格別評価できるものではなく,・・・類否判断に特に影響を及ぼすほどのものではない。」(審決謄本2頁最終段落〜3頁第1段落)と判断したが,誤りである。
意匠の類否判断において,普通に行われる態様であることによって,直ちに,全く考慮されなくなるものではない。審決は,差異について,格別評価できないと判断するについて,何ら合理的な理由を示していないといえるものであるから,審決は結論及び理由を記載した文書をもつて行わなければならない(意匠法58条2項において準用する特許法157条2項4号)とする法の趣旨を没却する不当なものである。
ウ二つの意匠間に明らかな差異がありながら,類否判断に与える影響が相対的に弱く評価されるのは,その差異が,当業者が普通に適宜改変し得る程度の慣用的な変更の範囲内であるなどの特段の事情があり,そのほかに,それを凌駕する特徴ある共通点がある場合等に限られる。差異点(1)は,本願意匠と引用意匠とのショルダー部切り欠きの有無であって,基本的構成態様の差異であり,上記のような特段の場合に当たらないから,基本的構成態様を異にする本願意匠と引用意匠は,需要者に別異の視覚的印象を感受させるものであり,類似関係となる余地はない。
また,ショルダー部に切り欠きを設けることも設けないことも普通に行われる態様であることによって,両意匠の顕著な差異について,格別評価できるものではないとされることはない。本件出願前に意匠登録された,意匠分類G2-91191(分類の表示:自動車用タイヤ)に分類される自動車用タイヤの意匠登録の全件(全4 781件)のうちのショ,ルダー部に大きな切り欠きを設けたリブ・ラグパターンのタイヤの意匠登録例について,その意匠に類似する意匠,すなわち,その意匠の本意匠,類似意匠又は関連意匠として,ショルダー部に切り欠きを設けないリブパターンのタイヤの意匠が登録されている例は一件もなく(甲13),ショルダー部の切り欠きの有無が異なる意匠について類似する意匠とはなり得ないとされていることが推定される。
審決は,ショルダー部の切り欠きの有無について,「形態全体からすると微細な部分的な差異であり,この差異は類否判断に特に影響を及ぼすほどのものではない。」(審決謄本3頁第1段落)とするが,すべての意匠は,部分の統合からなるといい得るものであり,意匠全体における類否判断上の位置付けに基づいて,当該部分の差異が類否判断に与える影響が評価されるところ,審決は,単に部分的であるから評価しないとするものであり,誤りである。また,審決は,「微細な」部分的な差異であるとするが,「微細」とは,「極めて細かいこと。甚だしくわずかなこと。」(広辞苑)であるのに対し,トレッド面横幅の略半分を占める外側帯状部の外方端部から横幅の略中央まで至る大きさの当該切り欠きの有無の態様が,何に対して「微細」といい得るのか,その判断評価の理由が何ら明らかでなく,理由が付されていない不当性があると共に,明らかに評価を誤っている。トレッド面の横幅は,引用意匠において実線で表された,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分の横幅に概ね該当し,この横幅に対するショルダー部切り欠きの横幅を,被告は「約1/10程度」とするが,その実測値は,片側で約8分の1幅,両側で約4分の1幅を占めるものであり,決して「僅かな幅」として無視できる大きさではない。
エ被告は,本願意匠及び引用意匠のタイプのタイヤにおいて,バリエーション的にショルダー部に切り欠きを設けることが,ごく普通に見受けられるところであるとして,ありふれた態様の外側帯状部に比べれば目につきやすい部位であるトレッド面中央帯状部のブロック列の態様の共通性に基づいて,両意匠の類否を総合的に評価判断することに何ら不合理はない旨主張するが,被告がその根拠として掲げるのは,TireGuidesInc.発行「2003(平成15年)TREADDESIGNGUIDE」(乙12,以下「乙12文献」という。)であって,カタログの一例にすぎず,これによって,中央帯状ブロック列を基調として,バリエーション的にショルダー部に切り欠きを設けることがごく普通に見受けられるものとはいい難い。また,そこに表されているのは,それぞれ切り欠きの形態が相互に異なり,引用意匠のショルダー部の切り欠きとも異なる形態の切り欠きを設けている事例であって,ショルダー部に切り欠きを設ける態様とすることについて,普通に見られるものであることを示す事例であるとしても,切り欠きの形態には種々の態様があって,それぞれの具体的態様に基づいて評価されるべきものであり,引用意匠のショルダー部の切り欠きの具体的態様と同じ切り欠きが,両意匠のタイプのタイヤに設けられることが普通であるとの事例があるわけではないから,被告の主張に合理的根拠はない。
( )差異点(2)ないし(4)の認定,評価の誤り3ア審決は,帯状部及びその間の縦溝部の差異点を,差異点(2)ないし(4)として,帯状部片側の側辺ごとに形態を細かく分節して,それぞれの切り欠きの有無の差異として認定し,格別目立たず微弱な差異であるとしたが,前記2( )のとおり,本願意匠と引用意匠との対比において,看2者の注意をひく態様は,内側帯状部の各ブロックの形状,連接態様及び帯状部間の縦溝の態様という,形態のまとまりある部分にあり,これらはいずれも顕著に異なり,両意匠全体の基調に強い影響を与えて,両意匠を類似しないものとする要素となっている。審決は,全体観察を前提として構成各部の態様を把握すべき意匠の類否判断の基本を無視し,看者が自然に把握する形態としてのまとまりを無視して,必要以上に分節した各部の態様ごとの対比のみによって評価して,その差異点の評価を誤ったものである。
イ本願意匠と引用意匠は,上記のとおり,内側帯状部についても,明らかに類否判断に強い影響を与える顕著な差異があり,ショルダー部切り欠きの有無の差異を凌駕する共通した態様は何ら認められないものであるから,意匠全体として類似しないことは明らかである。
第4被告の反論審決の認定判断に誤りはなく,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。
1取消事由1(具体的態様の共通点(1)の認定の誤り)について( )原告は,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロック形状は,いずれも1「略『S』字状」とされる形状でなく,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロック形状には顕著な差異があるとして,審決の具体的態様の共通点(1)の認定が誤りである旨主張するが,失当である。
( )審決は,具体的態様の共通点(1)として,「内側帯状部が,それぞれ右2下がりの細幅の傾斜横溝で等間隔に分割され,略『S』字状の同形状ブロックが千鳥状に配列された態様である点」を認定し,両意匠の内側帯状部を構成する単位ブロックの形態及びその連接態様を概括的に表現したものであって,単位ブロックについては,外側辺に着目すれば,その屈曲態様が両意匠とも,「S」字状若しくは,ジグザグ状であることは図面上明らかであり,やや語弊があるとしても,各ブロックの形態的共通性を表現するために,「略『S』字状の同形状ブロック」としたものであり,審決の共通点の認定に誤りはない。
原告は,本願意匠の内側帯状部の各ブロックは,矢羽根形状であるとも主張するが,矢羽根形状も多様な形状が存在する抽象的なものであり,概括的な表現で厳密なものとはいえない。
各ブロックの内側辺については,その屈曲態様は「く」字状,又は,逆「く」字状であるが,審決においては,ブロックの形態が溝の形態として一義的に定まるものであることから,その形態を共通点(2)において,中央縦溝の形態,即ち,単位ブロックの内側辺が連接する形態として認定したものである。
2取消事由2(差異点の認定の誤り)について( )原告は,審決は,基本的構成態様の差異として挙げるべき差異点(1)を1具体的態様の差異として認定した誤りがあり,また,帯状部及びその間の縦溝部の差異を,ブロックの形状,連接態様及び帯状部間の縦溝部の態様の差異として認定することなく,差異点(2)ないし(4)として,帯状部片側の側辺ごとに形態要素を必要以上に分節して認定し,差異点の認定を誤った旨主張するが,失当である。
( )具体的態様の差異点(1)に係るショルダー部の略三角形状の切り欠きは,2タイヤのグリップ力に影響する機能的な要素であるとしても,引用意匠のような,等間隔に略三角形状の切り欠きを設けることも,本願意匠のように切り欠きを設けないことも,ごく普通に見受けられるところであり,引用意匠の切り欠き自体も,トレッド面の横幅に対して約10分の1程度のありふれたものであって,その存在を無視することはできないにせよ,意匠全体の基調を決定付けるものではないことから,類否判断に与える影響は微弱なものであり,その切り欠きを具体的態様とした審決の認定に誤りはない。
また,トレッドパターンにおける溝とブロックとの関係は表裏一体のものであり,溝の態様はブロックの態様を形成すると同時に,ブロックの態様は溝の態様を形成する関係にあることからすると,これらを必ずブロックの共通点として認定しなければならないというものではない。審決は,共通点において,溝とブロックの両方を用いてトレッド面の認定を行い,差異点については,共通点で認定したトレッド面の態様に基づいて評価したものであり,形態を細かく分節したものではない。
( )原告が主張する,本願意匠と引用意匠の内側帯状部の各ブロックの形状,3連接態様及び帯状部間の縦溝部の態様は,その部分のみ注視した場合に気付く程度の微細なものであり,格別注目して評価する程度のものとはいえないから,看者に別異の印象を与えるものではなく,類否判断に及ぼす影響は微弱なことから,審決がこれらの差異点を殊更採り上げなかったとしても審決の結論に影響がない。
すなわち,原告は,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロックの連接態様が異なるとして,本願意匠は,上下のブロック間をごく細いサイプ様の切り込みを介して連接する態様であるのに対し,引用意匠は,溝を設けて,上下のブロックが島状に別個に看取される態様である旨主張するが,本願意匠のサイプの幅も引用意匠の溝幅も,ブロック又は縦溝と比較するとごくわずかな幅であり,その点のみを注視して初めて気付く程度の微細な差異でしかない。また,原告は,本願意匠と引用意匠の中央縦溝及び外側縦溝の態様が異なるとして,本願意匠の縦溝は,同幅同形の溝3本を平行状のジグザク形状に形成したシンプルなものであるのに対し,引用意匠の縦溝は,台形状の切り込みを左右交互に突出させたものである旨主張するが,タイヤの分野において,耐久性やウェット性能を低下させることなく効果的に石咬みを防止するために,溝側壁に切り込みを設けることは,ごく普通に行われているところであり,その切り込み自体も,ごくわずかなもので意匠全体に影響を及ぼすものではなく,この分野では,主として機能的理由に基づくものである上,同様の態様のものは,本願意匠の出願前から既に知られているところであり(特開平9-132010号公報〔乙10〕,特開2000-233605号公報〔乙11〕),類否判断において,両意匠の共通感を凌駕するほどの影響を与えるものではない。
3取消事由3(類否判断の誤り)について( )原告は,基本的構成態様及び具体的態様の共通点(2)の態様等が,従来1から見られる特段新規な態様に関する共通性ではないので,他に評価すべき構成要素がない限り,類否判断を左右するまでの要素ということはできない旨主張する。
しかし,トレッドパターンには,比較的単純なものから,かなり複雑なパターンまで,また比較的変化に乏しい静的なものから動きのある斬新なものまで,様々なものが存在するところ,本願意匠及び引用意匠は,単純なごく一般的なトレッドパターンに属しており,こうしたタイプのタイヤにおいては,トレッドパターンの中央帯状ブロックを基調として,バリエーション的にショルダー部に切り欠きを設けることはごく普通に見受けられるところである(乙12文献)。
したがって,外側にわずかな切り欠きを設けたありふれた態様の外側帯状部に比べれば,トレッド面の中央帯状部のブロック列の態様は目に付きやすい部位であって,トレッド面の中央に略「S」字状のブロックを設けること(平成10年4月30日発行原告カタログ「摩耗に強い。雨に強い」〔乙6〕,意匠登録第1236666号公報〔乙7,以下「乙7公報」という。〕,意匠登録第481627号公報〔甲11〕,「リブ・ラグパターンの自動車用タイヤ登録意匠リスト」〔甲13〕のリスト番号10,11)や,略「S」字状のブロックの凸状先端側を向かい合わせに千鳥状に配した構成(乙7公報,大韓民国意匠商標公報の登録番号第0234355号類似1〔出願番号第1997-023166〕意匠商標公報〔乙8,以下「乙8公報」という。〕及び同じく登録番号30-0286817〔出願番号30-2000-0032950〕意匠商標公報〔乙9,以下「乙9公報」という。〕)が,本件出願前に公然知られていたものであったとしても,本願意匠に特筆すべき新規な構成態様が認められない以上,審決が認定した各共通点に示す構成態様の共通性に基づいて,両意匠の類否を総合的に評価判断することに何ら不合理はない。
( )原告は,ショルダー部における大きな切り欠きの有無の差異は,両意匠が,2タイプの異なるタイヤであることを感受させる視覚的効果を有するとして,本願意匠と引用意匠の基本的構成態様の差異である旨主張するが,失当である。
ショルダー部における切り欠きの有無によりタイプの異なるタイヤとなるにせよ,引用意匠の切り欠き自体が,トレッド面の横幅に対して約1/10程度のもので,ありふれた構成態様であって,トレッド面の中央帯状部のブロック列の態様に比べて,わずかな幅の比較的注目され難いトレッド面の周縁部に係る態様である。これらの点を考慮して,総合的に判断した審決に誤りはない。
( )原告は,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロックの連接態様が異なる3と主張するが,その主張する差異は,その点のみを注視して初めて気付く程度の微細な差異でしかなく,この程度の差異は,別異の意匠として認識されるものではない。両意匠には,正面視右下がりの傾斜溝により,千鳥状に整然と略「S」字状の同形のブロックが配された共通感があり,原告の主張する連接態様の差異はそれを凌駕するほどのものではなく,類否判断に影響を与えるものではないから,審決の評価に誤りはない。
さらに,原告は,中央縦溝,外側縦溝とも顕著に異なる旨主張するが,タイヤの分野において,溝側壁に切り欠きを設けることは,ごく普通に行われているところであり,その切り欠き自体も,ごくわずかなもので意匠全体に影響を及ぼすものではなく,同様の態様のものは,本願意匠の出願前から既に知られているところであり,類否判断において,両意匠の共通感を凌駕するほどの影響を与えるものではなく,審決の評価に誤りはない。
原告の主張は,個々の構成要素によって緊密に構成されたトレッドパターンの一部を抜き出して過大に評価するか,又は,両意匠の大部分を占める両意匠の特徴と基調を形成している共通点を過小評価するものであって,失当であり,審決の認定評価に誤りはない。
第5当裁判所の判断1取消事由1(具体的態様の共通点(1)の認定の誤り)について( )審決は,前記第2の2( )ア(イ)( )のとおり,具体的態様の共通点(1)1 2aとして,「内側帯状部が,それぞれ右下がりの細幅の傾斜横溝で等間隔に分割され,略『S』字状の同形状ブロックが千鳥状に配列された態様である点」を認定したのに対し,原告は,その認定が誤りである旨主張する。
( )本願意匠の内側帯状部は,正面視において,右下がりの細幅の傾斜横溝で2やや横長に等間隔に分割された略矢羽根形状のブロックが,左右2列に交互に千鳥状に配列された態様である。各ブロックは,タイヤ内側方向に凸部を,タイヤ外側方向に凹部を有し,正面視において,タイヤ外側方向において,右側の列のブロックにおいてはブロックの下部に,左側の列のブロックにおいてはブロックの上部に,上下の各ブロックの縁が同じピッチでジグザク状に連なるような隅切りがされている。
一方,引用意匠の内側帯状部は,正面視において,右下がりの細幅の傾斜横溝でやや横長に等間隔に分割された略矢羽根形状のブロックが,左右2列に交互に千鳥状に配列された態様である。各ブロックは,タイヤ内側方向に凸部を,タイヤ外側方向に凹部を有し,正面視において,タイヤ外側方向において,右側の列のブロックにおいてはブロックの下部に,左側の列のブロックにおいてはブロックの上部に,上下の各ブロックの縁が同じピッチでジグザク状に連なるような隅切りがされていて,また,内側方向の凸部先端部付近及び外側方向の凹部奥部付近に小さな切り欠きが設けられている。
そうすると,本願意匠と引用意匠は,内側帯状部が,正面視において,右下がりの細幅の傾斜横溝でやや横長に等間隔に分割された略矢羽根形状のブロックが,左右2列に交互に千鳥状に配列された態様であり,その各ブロックは,タイヤ内側方向に凸部を,タイヤ外側方向に凹部を有し,正面視において,タイヤ外側方向において,右側の列のブロックにおいてはブロックの下部に,左側の列のブロックにおいてはブロックの上部に,上下の各ブロックの縁がジグザク状に連なるような隅切りがされている点において,具体的態様が共通すると認めることができる。
( )原告は,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロック形状は,いずれも3「略『S』字状」とされる形状ではないし,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロック形状には,顕著な差異がある旨主張する。
本願意匠及び引用意匠の内側帯状部の各ブロックのタイヤ外側方向の縁の形状は,凸部及び隅切りの存在により,略「S」字状といえなくもないが,タイヤ内側方向の縁には,2回の屈曲はないし,また,ブロック自体の形状において,2回の屈曲がみられるようなものではなく,略「S」字状といわれるものではないから,審決が,本願意匠及び引用意匠の各ブロック形状について,略「S」字状であるとして,両意匠が共通するとした点は,適切であるとはいい難い。
しかし,本願意匠及び引用意匠の内側帯状部の各ブロックは,略矢羽根形状で,タイヤ内側方向に凸部を,タイヤ外側方向に凹部を有し,正面視において,タイヤ外側方向において,右側の列のブロックにおいてはブロックの下部に,左側の列のブロックにおいてはブロックの上部に,上下の各ブロックの縁が同じピッチでジグザク状に連なるような隅切りがされている点において,共通すると認められることは,上記( )のとおりである。引用意匠に2おいては,ブロックのタイヤ内側方向の凸部先端部付近及びタイヤ外側方向の凹部奥部付近に小さな切り欠きが設けられているが,切り欠きの大きさに照らしても,本願意匠と引用意匠のブロックの形状は,本願意匠と引用意匠において共通する,上記のブロックの基本的といえる形状において共通し,引用意匠に認められる上記切り欠きは,ブロックの基本的な形状についての共通点を前提とした上での差異点としてとらえられるべきものであるから,内側帯状部のブロックの形状において,本願意匠と引用意匠に顕著な差異があり,共通するところがないとする原告の上記主張は失当である。また,本願意匠及び引用意匠の各ブロック形状は,略「S」字状とは認められないが,本願意匠と引用意匠の類否判断において,審決の結論に誤りがないことは,後記3のとおりであり,ブロック形状についての,原告の上記主張に係る点は,審決の結論に影響するものではなく,採用の限りではない。
( )したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。
42取消事由2(差異点の認定の誤り)について( )審決は,具体的態様の差異点(1)として,「外側帯状部の外側において,1引用意匠には,等間隔に略三角形状の切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」を認定したところ,原告は,上記差異点は,基本的構成態様の差異とすべきであるにもかかわらず,具体的態様の差異と誤って認定した旨主張する。
ア本願意匠は,タイヤのトレッド面及びショルダー部の形態(別添審決謄本写しの別紙第1表示の実線で表された部分)を部分意匠として意匠登録を受けようとする意匠とするものであり,引用意匠は,同じく,タイヤのトレッド面及びショルダー部の形態(同別紙第2表示の,上記別紙第1表示の実線で表された部分に対応する部分)の登録意匠である。
本願意匠及び引用意匠は,共に,トレッド面の中央に中央縦溝を設け,その中央縦溝に対して,左右対称のショルダー寄りに,それぞれ外側縦溝を設け,中央縦溝と外側縦溝により,トレッド面を中央2列の内側帯状部とショルダー寄りの外側2列の外側帯状部の4列の帯状部に分割している。
また,本願意匠には,ショルダー部に切り欠きがないのに対し,引用意匠には,ショルダー部に,正面視において,略三角形状であり,側面視において,矩形状である切り欠きが存在するが,正面視において,引用意匠のショルダー部の切り欠きの上下方向の幅は,内側帯状部のブロックの上下方向幅に比しても小さいものであり,切り欠きの左右方向の幅は,トレッド面横幅の略8分の1程度である。
意匠における基本的構成態様とは,意匠の骨格をなす態様であるところ,上記のような引用意匠のショルダー部の切り欠きの大きさに照らしても,本願意匠及び引用意匠は,上記のとおり,中央縦溝及び2本の外側縦溝の3本の縦溝により,全体にわたり,大きく4列の帯状部に分割されており,これが意匠全体において支配的部分を占めていると認められるのであって,ショルダー部の切り欠きは,意匠全体の骨格をなす意匠の上記構成態様を前提とし,更に具体的に観察することにより把握する,意匠の細部にわたる態様であるということができる。したがって,「トレッド面の中央に縦溝を設け,その中央縦溝に対して,左右対称のショルダー寄りに,それぞれ縦溝を設け,中央縦溝と外側縦溝により,トレッド面を中央2列の帯状部とショルダー寄りの外側2列の帯状部の4列の帯状部に分割している点」を基本的構成態様として認定した審決に誤りはない。
イ原告は,ショルダー部の切り欠きの有無は,意匠全体の中で,いずれの方向から観察した場合にも極めて目に付きやすい部分における大きな範囲を占める構成態様の差異であって,全体の骨格を支配する形態要素に係るものである旨主張するが,ショルダー部の切り欠きが一定の大きさを占めるとしても,上記アに認定したような大きさであることや意匠全体が縦溝によって大きく4列の帯状部に分割されてこれが意匠の支配的部分を占めていることに照らせば,引用意匠のショルダー部の切り欠きが意匠の骨格をなす態様であるとまでは認められない。
また,原告は,ショルダー部の切り欠きの有無は,使用目的等を勘案して形態を観察する,この種の自動車用タイヤの需要者にとって,本願意匠と引用意匠が,使用目的,機能において,タイプの異なるタイヤであることを感受させる視覚的効果を有する差異であり,意匠全体の基調を決定付ける基本的構成態様の差異としてとらえるべきである旨主張するが,意匠とは,物品(物品の部分を含む。)の形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合であって,視覚を通じて美感を起こさせるものをいう(意匠法2条1項)のであり,使用目的,機能の違いが直ちに意匠の骨格である基本的構成態様の差異となるものではないから,採用することができない。
( )審決は,本願意匠と引用意匠の差異点として,「内側帯状部の向かい合っ2たブロックの内側凸部において,引用意匠は,切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」(差異点(2)),「内側帯状部のブロックの外側凹部において,引用意匠は,切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」(差異点(3)),「外側帯状部の内側凹部において,引用意匠には,切り欠きがあるのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」(差異点(4))を認定したところ,原告は,本願意匠と引用意匠の各部の具体的態様を対比した場合,看者の目をひくのは,観点によっていずれも主体となって認知されることとなる模様と地との関係にある,内側帯状部の各ブロックの形状,連接態様及び帯状部間に形成される縦溝部の態様であり,審決の上記差異点の認定は,形態要素を必要以上に分節して認定し,対比の対象とすべき形態のまとまりとしての認定を怠ったものであり,その差異点の認定に誤りがある旨主張する。
アしかし,本願意匠と引用意匠の全体を対比すると,内側帯状部のブロックのタイヤ内側方向の形状又は中央縦溝の形状が異なり,これをブロックの形状の差異としてとらえると,差異点として,「内側帯状部の向かい合ったブロックの内側凸部において,引用意匠は,切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」(差異点(2))が認められる。また,本願意匠と引用意匠の内側帯状部のブロックのタイヤ外側方向の形状又は外側縦溝のタイヤ内側方向の形状が異なり,これをブロックの形状の差異としてとらえると,差異点として,「内側帯状部のブロックの外側凹部において,引用意匠は,切り欠きが設けられているのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」(差異点(3))が認められる。さらに,本願意匠と引用意匠の外側帯状部の内側又は外側縦溝の外側の形状は異なり,これを外側帯状部の形状の差異としてとらえると,差異点として,「外側帯状部の内側凹部において,引用意匠には,切り欠きがあるのに対して,本願意匠には,そのような切り欠きがない点」(差異点(4))が認められる。
したがって,審決の差異点の認定が形態要素を必要以上に分節して認定しているなどとする原告の上記主張は採用することができない。
イ原告は,本願意匠と引用意匠の具体的態様の対比において,内側帯状部の各ブロック形状が異なる旨主張する。しかし,前記1( ) ( )のとおり,2 , 3本願意匠及び引用意匠の内側帯状部の各ブロックの基本的な形状は共通すると認められ,また,引用意匠における,ブロックのタイヤ内側方向の凸部先端部付近及び外側方向の凹部奥部付近に存在する小さな切り欠きについては,差異点としてとらえられるべきものであるから,差異点(2)及び(3)を認定した審決に原告主張の誤りはない。
ウ原告は,本願意匠と引用意匠の具体的態様の対比において,内側帯状部の各ブロックの連接態様が顕著に異なるとして,本願意匠は,上下のブロック間を,ごく細いサイプ様の切り込みを介して連接し,帯状部全体としては,同幅でジグザグ状を呈する一連の帯状に看取される態様であるのに対し,引用意匠は,上下ブロック間に,帯状部間の縦溝の略2分の1幅のやや広幅の溝を設け,上下に間隔を空けて並ぶ各ブロックが,島状に別個に看取される態様とし,島状に表れる各ブロックごとに,上下略3分の1の位置に設けたくびれによって形成される,上下斜め方向に向けた矢印の頭部形状が目をひくものである旨主張する。
本願意匠は,内側帯状部の上下のブロック間を細い溝で連接し,内側帯状部の左右の各ブロックが上下に一連の帯状を呈するととらえられるものである。
引用意匠の上下のブロック間の溝も,ブロックの形状及び縦溝の幅に比したとき,細い溝であると評価できるものであって,原告主張のようなやや広幅の溝といえるものではなく,その溝の細さからも,引用意匠において,各ブロックが島状に別個に看取できるものとまでは認められない。また,引用意匠の各ブロックには,内側凸部及び外側凹部に切り欠きが設けられているが,その切り欠きも,位置,形状及び大きさに照らすと,ブロック全体の美感に占める地位は大きいものでなく,前記1( ) ( )のとお2 , 3り,ブロックの基本的な形状を前提とした切り欠きと評価し得るものであり,上記のような各ブロック間の上下の間の溝の幅と縦溝の幅を考慮すると,引用意匠においても,内側帯状部の左右の各ブロックは,上下に一連の帯状を呈するととらえられるものである。
したがって,ブロックの連接態様についての原告の上記主張は,採用の限りでない。
エ原告は,本願意匠と引用意匠の具体的態様の対比において,中央縦溝,外側縦溝とも具体的態様が顕著に異なるとして,本願意匠の縦溝は,同幅同形の溝3本を平行状のジグザグ形状に形成したシンプルなものであるのに対し,引用意匠の縦溝は,中央縦溝の1本については,ジグザグ形状の谷状角部ごとに台形状の切り込みを突設し,左右の外側縦溝については,中央縦溝とは態様を変えて,ジグザグ形状の頂点角部ごとに同様の切り込みを突設していて,すべての縦溝に台形状の切り込みを左右交互に突出させた態様である旨主張する。
本願意匠の中央縦溝及び外側縦溝は,平行状に同じピッチでジグザク状に形成されていると認められる。
これに対し,引用意匠について,溝部という観点からとらえた場合,差異点(2)ないし(4)に係る形態は,中央縦溝及び外側縦溝から台形状に突出した溝部であるととらえることができないものではない。しかし,その台形状部分の幅,高さとも,ジグザク状に形成されている縦溝に比して小さいものであることから,引用意匠の溝部についても,取引者,需要者は,中央縦溝及び外側縦溝が同じピッチでジグザク状に形成されている形状を基本的な形状としてとらえるものと認めるのが相当である。そして,原告が主張する台形状に突出した部分の溝部は,内側帯状部のブロック及び外側帯状部の切り欠きと表裏の関係にあるところ,意匠の形態の類否の判断においては,取引者,需要者の視覚を通じて起こさせる美感の異同によって類否を決するものであるところ,このような視覚的な観点から,多数のブロックが設けられている自動車用タイヤをみると,ブロック等の形状と溝部の形状が表裏の関係にある場合,取引者,需要者は,その形状について,溝部の形状としてではなく,ブロック等の形状として着目する場合が多いといえるのであり,このような視覚的効果にかんがみると,溝部ではなく,上記の切り欠きの観点から,差異点(2)ないし(4)を認定した審決に原告主張の誤りがあるとまでは認められない。
( )したがって,原告主張の取消事由2は理由がない。
33取消事由3(類否判断の誤り)について( )審決は,「両意匠(注,本願意匠及び引用意匠)において共通していると1した,トレッド面の中央に中央縦溝を設け,その中央縦溝に対して,左右対称のショルダー寄りに,それぞれ外側縦溝を設け,トレッド面を内側帯状部2列と外側帯状部2列の4列の帯状部に分割した基本的構成態様は,形態全体にかかわるものであって,意匠全体の基調を成し,形態上のまとまりを形成したものであり,共通するとした各部の具体的態様の(1)及び(2)と相俟って,看者に共通する印象を与えるところであり,両意匠の類否判断を左右する要素と認められる。」(審決謄本2頁第7段落)とし,「各部の具体的態様の差異点の(1)ないし(4)は,何れも類否判断に及ぼす影響が微弱であり,さらに,それらの差異点を総合し,相俟って生ずる効果を考慮しても,前記した共通点を凌駕して類否判断を左右するものとは認められない。」(同3頁第2段落)して,本願意匠と引用意匠が類似すると判断した。
( )本願意匠と引用意匠は,前記2( )のとおり,トレッド面の中央に中央縦2 1溝を設け,その中央縦溝に対して,左右対称のショルダー寄りに,それぞれ外側縦溝を設け,中央縦溝と外側縦溝により,トレッド面を中央2列の内側帯状部とショルダー寄りの外側2列の外側帯状部の4列の帯状部に分割しているとの基本的構成態様において共通している。また,具体的態様において,前記1のとおり,内側帯状部が,正面視において,左右2列に配列された,右下がりの細幅の傾斜横溝でやや横長に等間隔に分割された略矢羽根形状のブロックが,左右交互に千鳥状に配列された態様であり,このブロックは,タイヤ内側方向に凸部を,タイヤ外側方向に凹部を有し,正面視において,タイヤ外側方向において,右側の列のブロックにおいてはブロックの下部に,左側の列のブロックにおいてはブロックの上部に,上下の各ブロックの縁が同じピッチでジグザク状に連なるような隅切りがされている点において共通する。また,共通点(2)のとおり,本願意匠と引用意匠は,「中央縦溝,及び外側縦溝が,同じピッチでジグザグ状に形成している点」において共通する。
これらによれば,本願意匠と引用意匠は,意匠の骨格を成すものとして真っ先に取引者,需要者の注意をひく基本的構成態様を共通にし,具体的態様についても,トレッド面の中央部の大きな範囲を占めて取引者,需要者の目をひく内側帯状部のブロックの基本的な形状及び意匠全体の基本的構成態様にもかかわる縦溝の基本的な形状において共通する。そして,これらの共通する基本的構成態様及び具体的構成態様は,意匠全体の圧倒的な部分を占めるとともに,全体として一つの意匠的なまとまりを形成し,取引者,需要者に対して視覚を通じてまとまった一つの美感を与えているものということができる。また,本件証拠上,本件出願日前に,内側帯状部の左右2列に配列された,右下がりの細幅の傾斜横溝でやや横長に等間隔に分割された略矢羽根形状のブロックの形状において,上記共通点に係る形状を有するものが存在したと認めるに足りる証拠はなく,上記形状がありふれたものであるとは認められないから,上記の具体的態様の共通性は,取引者,需要者に共通する印象を強く与えるものというべきである。なお,被告の主張中には,乙7公報ないし乙9公報を挙げて,略「S」字状のブロックの凸状先端側を向かい合わせに千鳥状に配した構成が,本件出願前に公然知られていたものであったことを述べる部分があるが,そのうち,乙8公報及び乙9公報に示されたタイヤのブロックの形状は,タイヤ内側方向に凸部がある略矢羽根形状といえるものではなく,また,乙7公報は,平成17年3月4日の登録に係るものであり,被告掲記の各証拠は,平成16年12月14日にされた本件出願前に本願意匠及び引用意匠の内側帯状部のブロックの形状がありふれたものであることを裏付けるものではない。
( )他方,本願意匠と引用意匠について,前記のとおり,具体的態様の差異点3として,差異点(1)ないし(4)が認められる。
まず,差異点(1)についてみると,引用意匠のショルダー部の切り欠きの大きさは,前記2( )アのとおり,正面視において,上下方向の幅におい1て,内側帯状部のブロックの上下方向幅に比しても小さいものであり,左右方向の幅において,トレッド面横幅の略8分の1程度というものであり,本願意匠及び引用意匠の共通点に係る形態に比して,必ずしも大きな範囲を占めるものではない。
また,証拠(乙1,2,4ないし6,12)によれば,中央縦溝と外側縦溝により,トレッド面を中央2列の内側帯状部とショルダー寄りの外側2列の外側帯状部の4列の帯状部に分割し,内側帯状部にブロックを設ける自動車用タイヤにおいて,そのショルダー部に切り欠きを設けること及び設けないことは,本件出願前に,いずれも普通にされているありふれたことであると認められる。
さらに,乙12文献によれば,トレッド面中央部のブロックの形状を同じくするタイヤにおいて,CONTINENTAL社製のタイヤにつき,ショルダー部の切り欠きを設けないものが「HDLECOPLUS」と,設けたものが「HDL」とされて,それらが左右に掲げられ(112頁),GENERAL社製のタイヤにつき,ショルダー部の切り欠きを設けたものが「LMT450」と,設けないものが「LMT460」とされて,それらが左右に掲げられ(120頁),また,GOODYEAR社製のタイヤ(ただし,トレッド面を中央3列の内側帯状部とショルダー寄りの外側2列の外側帯状部の5列の帯状部に分割したもの)につき,ショルダー部の切り欠きを設けたものと,設けないものが,同様に左右に掲げられている(220頁)。
これらによれば,トレッド面中央部にブロックを有するタイヤにおいて,ショルダー部の切り欠きの有無にかかわらず,トレッド面中央部のブロックの形状が同一であるものが,同じ類型とされ,あるいは,1つのバリエーションとしてショルダー部に切り欠きを設けることがあることがうかがわれ,このことからすると,トレッド面中央部にブロックを有するタイヤにおいて,ショルダー部の切り欠きの有無よりトレッド面中央部のブロックの形状の方が取引者,需要者に重視されている場合もあることが推認される。
以上を総合的に考慮すれば,差異点(1)のショルダー部の切り欠きの有無が,本願意匠及び引用意匠において広い範囲を占める,トレッド面中央部の具体的態様等に係る形状等に比して,取引者,需要者に強く印象付けられ,その注意を強くひくものとまで断定することはできない。
この点について,原告は,本願意匠と引用意匠は,ショルダー部の切り欠きの有無により基本的構成態様を異にし,需要者に別異の視覚的印象を感受させるものであること,リグ・ラグパターンのタイヤの意匠登録例について,その意匠に類似する意匠として,ショルダー部に切り欠きを設けないリブパターンのタイヤの意匠が登録されている例が一件もないこと,被告が主張の根拠とした,乙12文献は,カタログの一例にすぎないことを主張する。
しかし,本願意匠と引用意匠が,ショルダー部の切り欠きの有無により基本的構成態様を異にするといえないことは,前記2( )のとおりであり,そ1の切り欠きの有無により,視覚的印象を別異にするとしても,それが,トレッド面中央部の具体的態様等に係る形状等に比して,取引者,需要者に強く印象付けられるものとは認められないことは,上記のとおりである。また,原告主張の登録例の不存在の事実が,個別の意匠である本願意匠と引用意匠の対比において,直ちに影響するものではない。そして,乙12文献に記載の,トレッド面中央部にブロックを有するタイヤの複数の事例において,ショルダー部の切り欠きの有無にかかわらず,トレッド面中央部のブロックの形状が同一であるものが,同じ類型とされ,あるいは,1つのバリエーションとしてショルダー部に切り欠きを設けているものが示されていることは,上記のとおりである。
差異点(2)及び(3)についてみると,前記1( ) ( )のとおり,ブロ2 , 3ックの基本的な形状についての共通点を前提とした上での差異点としてとらえられるべきものであり,ブロックの基本的な形状がありふれたものであるとは認められないこと,上記差異がブロックにおける限られた場所の差異であることを考慮すると,これらの差異が,ブロックの形状に係る共通点についての印象を凌駕するものとは認められない。
また,差異点(4)は,具体的態様の共通点(2)に関連するものであり,共通点(2)の縦溝部の形状を基本的な溝部の形状として,そのような基本的な形状を前提として設けられた小さな切り欠きと評価できるものである。
そして,仮に,差異点(2)ないし(4)に係る切り欠きについて,中央縦溝及び外側縦溝に連なる溝部の一部との観点からとらえたとしても,その切り欠きの幅は,中央縦溝及び外側縦溝の幅よりも小さいものであり,これらの差異は,直ちに,取引者,需要者に対し,溝部についての具体的態様の共通点(2)についての印象を凌駕して類否判断を左右するものとは認められない。
( )以上によれば,本願意匠と引用意匠において,共通点が,取引者,需要者4に共通する印象を強く与えるものといえるに対し,差異点は,いずれも,必ずしも,共通点に比して,取引者,需要者に強く印象付けると認められるものではなく,差異点を総合し,相まって生ずる効果を考慮しても,共通点を凌駕して類否判断を左右するものとは認められないから,「各部の具体的態様の差異点の(1)ないし(4)は,何れも類否判断に及ぼす影響が微弱であり,さらに,それらの差異点を総合し,相俟って生ずる効果を考慮しても,前記した共通点を凌駕して類否判断を左右するものとは認められない。以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能,位置,大きさ,範囲と,引用意匠の本願意匠に相当する部分が共通しており,形態については,前述のとおりの差異があっても,類否判断を左右する要素において共通しているものであるから,意匠全体として類似するものというほかない。」(審決謄本3頁第2段落〜第3段落)とした審決に原告主張の誤りはない。
( )原告は,本願意匠と引用意匠の共通点は,従来から存在する特徴のないも5のであるから,審決が,本願意匠と引用意匠の共通点の評価を誤った旨主張する。
しかし,意匠の構成態様のうちのある部分が公知のものであることは,必ずしもそれが意匠の特徴を示す要素となり得ないことと結びつくものでないばかりでなく,本願意匠及び引用意匠においては,前記( )のとおり,左右22列に配列された内側帯状部のブロックの形状がありふれたものであるとは認められないから,これらブロックの形状に係る共通点は,基本的構成態様の共通点及びブロックの形状と表裏の関係にある溝の形状についての共通点(具体的態様の共通点(2))とあいまち,取引者,需要者に対し,本願意匠と引用意匠が共通するとの印象を強く与えるものであって,審決に原告主張の誤りはない。
( )原告は,差異点(1)は,基本的構成態様の差異であるとして,審決が,6差異点(1)の評価を誤った旨主張する。
しかし,差異点(1)が基本的構成態様の差異とは認められないことは,前記2( )のとおりであり,また,その差異についても,本願意匠及び引用1意匠において広い範囲を占める,トレッド面中央部の具体的態様等に係る形状等に比して,取引者,需要者に強く印象付けられ,その注意を強くひくものとまで断定することができないことは,前記( )のとおりである。
3また,原告は,審決が「各部の具体的態様のうち,差異点(1)について,すなわち,外側帯状部の外側の略三角形状の切り欠きの有無の差であるが,本願意匠のように切り欠きを設けることも,引用意匠のように設けないことも,この種物品分野においては,ごく普通に行われているところであり・・・格別評価できるものではなく,形態全体からすると微細な部分的な差異であり,この差異は類否判断に特に影響を及ぼすほどのものではない。」(審決謄本2頁最終段落〜3頁第1段落)としたのに対し,普通に行われる態様であることによって,直ちに,類否判断上,全く考慮されなくなるものではなく,差異について格別評価できないとの判断について,何ら合理的な理由を示していない審決は,結論及び理由を記載した文書をもつて行わなければならない(意匠法58条2項において準用する特許法157条2項4号)とする法の趣旨を没却する不当なものである旨,また,切り欠きの有無の態様が,何に対して「微細」といい得るのか,何ら判断評価の理由が明らかでなく,理由が付されていない不当性がある旨主張する。
しかし,ごく普通に行われている態様については,取引者,需要者に必ずしも強い印象を与えるものではなく,また,形態全体からすると部分的な差異も取引者,需要者に必ずしも強い印象に与えるものでないのであって,これらは,意匠の類否判断において考慮される要素である。審決は,ショルダー部の切り欠きの有無の評価に当たり,「ごく普通に行われているところ」,「形態全体からすると微細な部分的な差異」との表現を用い,類否判断における理由を示しているのであり,また,ショルダー部の切り欠きについて「形態全体」に対して微細であると示しているのであるから,審決に原告主張の違法,不当な点がないことは明らかである。
( )原告は,本願意匠と引用意匠との対比において,看者の注意をひく態様は,7内側帯状部の各ブロックの形状,連接態様及び帯状部間の縦溝の態様という,形態のまとまりある部分にあり,これらはいずれも顕著に異なるにもかかわらず,審決は,帯状部及びその間の縦溝部の差異点を,差異点(2)ないし(4)として,帯状部片側の側辺ごとに形態を細かく分節して,差異点(2)ないし(4)の認定,評価を誤った旨主張する。
しかし,前記2( )のとおり,本願意匠及び引用意匠において,内側帯状2部の各ブロックは,基本的な形状において共通し,その差異は基本的な形状を前提とする部分的な差異であり,連接態様には,原告主張の差異があるとまでは認められない。また,縦溝についても基本的な形状が一致し,差異は,基本的な形状を前提とする部分的な差異と認められるもので,その差異が共通点の印象を凌駕するものとは認められず,内側帯状部の各ブロックの形状,連接態様及び帯状部間の縦溝の態様についての形態をまとまりとして考慮しても,前記( )の判断を左右するものではなく,原告の主張は採用できない。
4( )したがって,原告主張の取消事由3も理由がない。 84以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 宍戸充
裁判官 柴田義明
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