審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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平成17ネ10112損害賠償等請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
平成17ワ2065損害賠償等請求事件 | 判例 | 意匠 |
平成21ネ2110損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
平成20ワ8761意匠権侵害差止等請求事件 | 判例 | 意匠 |
平成19ネ10097損害賠償請求控訴事件 | 判例 | 意匠 |
関連ワード | 意匠の創作 / 物品 / 形状 / 意匠に係る物品 / 意匠の説明 / 創作容易(容易の創作) / 先願 / 広く知られた / 頒布された刊行物 / 記載された意匠 / 部品 / 意匠の類似 / 意匠の類否 / 登録意匠 / 差止請求(差止) / 損害賠償 / 類似性(類否判断) / |
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元本PDF | 裁判所収録の全文PDFを見る |
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事件 |
平成
19年
(ワ)
1972号
意匠権侵害差止等請求事件
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新潟県長岡市〈以下省略〉 原告越 後商事株式会社 訴訟代理人弁護 士笠原静夫 訴訟代理人弁理 士下山冨士男東京都大田区〈以下省略〉 被告株 式会社樋口製作所 訴訟代理人弁護 士石川悌二 訴訟代理人弁理 士黒田勇治 |
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裁判所 | 東京地方裁判所 |
判決言渡日 | 2008/02/19 |
権利種別 | 意匠権 |
訴訟類型 | 民事訴訟 |
主文 |
1原告の請求をいずれも棄却する。 2訴訟費用は,原告の負担とする。 |
事実及び理由 | |
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全容
第1請求, ,,, 1被告は 別紙物件目録記載のバケット先端装着具を製造し 輸入し 販売し販売の申出,販売のための展示をしてはならない。 2被告は,被告が占有する別紙物件目録記載のバケット先端装着具及びその製造金型を廃棄せよ。 3被告は,原告に対し,1335万6000円及びこれに対する平成19年2月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,バケット先端装着具に係る意匠権を有する原告が,被告に対し,被告の製造販売するバケット先端装着具が原告の意匠権を侵害すると主張して,意匠権に基づき,同バケット先端装着具の製造販売等行為の差止め及び廃棄と,損害賠償1335万6000円及びこれに対する遅延損害金(不法行為の後の日である平成19年2月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合によるもの)の支払を求めた事案である。被告は,意匠権侵害を否定するとともに,原告の意匠登録の無効を主張している。 1前提となる事実(当事者間に争いがないか,該当箇所末尾掲記の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる )。 ( ) 当事者1原告は,バケット先端装着具の製造,販売等の建設機械部品等の製造販売業を営んでいるものである。 被告は,バケット先端装着具を業として製造,輸入,販売しているものである。 ( ) 原告は,次の意匠権(以下「本件意匠権」といい,その登録意匠を「本件2意匠」という )を有している。 。 ア出願平成10年12月7日イ登録平成12年2月10日ウ登録番号第1070003号エ意匠に係る物品バケット先端装着具オ登録意匠別紙意匠公報のとおり( ) 被告製品の製造販売3被告は,商品名をP18SNとするバケット先端装着具(ただし,製品に「P18N」なる鋳出文字が付されたもの。以下「被告製品」といい,その意匠を「被告意匠」という )を,業として製造,輸入,販売している。 。 被告意匠は,別紙物件目録に添付された図面のとおりである。 ( ) 本件意匠の「意匠に係る物品」は,土木工事作業において使用するショベ4ルカーなどのバケットの先端に突出した取付突部に被嵌して,バケット先端縁に複数並列状態に装着するもので(隣接するもの同士は適宜連結する,。)取付突部を保護し,消耗したら適宜取り替えができ,また,地面を均す整地作業なども良好に行えることとなる,バケット先端装着具である。 ( ) 本件意匠及び被告意匠の説明は,それぞれ,別紙「本件意匠の説明書 ,5 」「被告意匠の説明書」のとおりである。 2争点( ) 被告意匠が本件意匠と類似するか否か。 1( ) 本件意匠の意匠登録について,平成10年法律第51号による改正前の意 2匠法3条2項(以下,同条について「意匠法」という場合,特に断らない限り,平成10年法律第51号による改正前の意匠法をいう )違反の無効理 。 由があるか。 ( ) 損害の額33争点についての当事者の主張( ) 争点( )(被告意匠が本件意匠と類似するか否か)について11(原告の主張)ア本件意匠の構成(ア) 鞘状の被嵌部を中心に置いて,被嵌部の周囲から,その左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部における当該頂部よりやや上方に突出させて形成し,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケットへの装着時において,製品とバケットとの隙間をできる限り塞ぐように形成することにより,作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を特徴的に形成し(以下「基本的形態?@」という,これにより作業効率が飛躍的に向上するもので 。)ある。 (イ) 被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成したものであり,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する,連結具挿入用の縦長透孔(製品をバケット先端のアダプターに装着するための取付孔)を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成している。 (ウ) 左辺側の歯板部を,バケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が,左辺側の歯板部の左端からはみ出る状態で,水平状(すなわち被嵌部とほぼ直角状態)に張り出して設けている(以下「基本的形態?A」という。。)(エ) 右辺の歯板部の横幅を,左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,同一平面たる平坦面に形成され,この右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面は,それぞれ平坦面に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された,隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 イ被告意匠の構成(ア) 鞘状の被嵌部を中心に置いて,被嵌部の周囲から,その左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部とほぼ同一線上に上方に突出させて形成し,正面から見て,被嵌部の湾曲状部の左右部分に,製品のバケットへの装着時において,作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を特徴的に形成したものである。溝状部における左右辺の歯板部の各内側辺の下方部分は,やや内方に傾斜した状態に形成されている。 (イ) 被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成されていて,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成したものであり,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する,連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成されている。 (ウ) 左辺側の歯板部を,バケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が,左辺側の歯板部の左端からはみ出る状態で,水平状に張り出して設けている。 (エ) 右辺の歯板部の横幅を,左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,隅隆起部を除いて同一平面たる平坦面に形成され,この右辺の歯板部の背面の裏段差面は平坦面に形成され,被嵌部の背面上部には傾斜隆起部,被嵌部の背面下部には凹部及び左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部が,それぞれ凸凹状に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された,隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 ウ本件意匠と被告意匠とに共通する基本的構成態様, ,。 本件意匠と被告意匠とは 次の基本的構成態様において 共通点がある(ア) 歯板部前面の基本的構成態様鞘状の被嵌部を中心に置いて,同被嵌部の周囲からその左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部が形成されている。 (イ) 被嵌部の基本的構成態様被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成し,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成している。 (ウ) 左辺側の歯板部の基本的構成態様左辺側の歯板部をバケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が左辺側の歯板部の左端からはみ出る形態で,水平状に張り出して設けている。 (エ) 両歯板部の前面及び背面の基本的構成態様右辺の歯板部の横幅を左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 「 」,() エ被告の主張する エ本件意匠と被告意匠との差異点 についてはア(ウ (オ)を否認し,その余は認める。 )オ本件意匠の要部(ア) バケット先端装着具の需要者である,ガス管,水道管の埋設工事等の工事業者は,バケット先端装着具がバケット先端縁に装着されて使用状態にある時の作業効率(作業中の土砂漏れの防止効率等)が最も気になるところであり,本件意匠に係る製品の表面,すなわち,本件意匠の正面図に表出する形態,形状を主に観察するものである。よって,本件意, , 。 匠の要部は その正面図に表出する形態 形状にあると見るべきである油圧ショベルのバケットには,いわゆるポイントと呼ばれる先端具が装着されているものの,掘削作業に適さないため,バケット先端装着具に組み替えて掘削作業を行う。バケット先端装着具の裏面形状,裏面の凹凸の有無は,掘削にはほとんど無関係である。また,バケット先端装着具の裏面形状,裏面の凹凸の有無が,製品の強度を高めるものではない。よって,需要者は,裏面や側面の形状等はほとんど度外視しているのが実情である。 したがって,本件意匠に係る製品全体の骨格をなし,本件意匠の基調を決定づける要部は,前記基本的形態?@であり,特に,意匠全体として類否判断に大きな影響を及ぼす本件意匠の要部は 「左右辺の両歯板部 ,の各上辺部の形状とあいまって,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケット装着時において作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を形成した点」である。 (イ) 被告は,実公平5-12366号公報(乙4。以下「乙4文献」という,実願昭60-77093号(実開昭61-193161)の願 。)(。 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム 乙5以下「乙5文献」という,特開平9-158238号公報(乙6。 。)以下「乙6文献」という,意匠登録第714975公報(乙7。以 。)下「乙7文献」という,その類似意匠登録第1号公報(乙8。以下 。)「乙8文献」という,実願昭53-057982号(実開昭54- 。)159801号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(乙9。以下「乙9文献」という,実願昭53-0 。)65859号(実開昭54-168005号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム(乙10。以下「乙10文献」という )に記載された各意匠が先願公知意匠であると主張する。 。 しかし,これらの文献には,本件意匠の基本的形態?@及び?Aを示す記,, 。 載はなく いずれも 本件意匠の先願公知意匠となり得るものではないまた,被告が,公然実施による先行公知意匠であると主張する旧被告製品P18SN(以下「旧被告製品」という )の製作図面(平成6年 。 2月24日付け。乙12。以下「乙12文献」という )に記載された 。 意匠(以下「旧被告意匠」という )には,上記基本的形態?Aの当接係 。 合板に相当する横板の記載はある。 しかし,その横板の設置位置は,本件意匠における当接係合板の設置位置とは相違する上,上記基本的形態?@を示す記載はなく,旧被告意匠と本件意匠は全く相違する形態,形状のものである。 このように,本件意匠の基本的形態?@は,本件意匠の出願前には他に見られないものであって,本件意匠の要部であり,特徴点である。 カ意匠の要部における本件意匠と被告意匠の類似性本件意匠と被告意匠全体の共通の骨格をなし,本件意匠と被告意匠全体の共通の基調を決定づけ,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼす共通の特徴は 「鞘状の被嵌部を中心に置いて,同被嵌部の周囲からその左右両 ,辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,左右辺両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部よりやや上方に突出させて形成し,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケット装着時において作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を形成した点」すなわち 「左右辺の両歯板部の各上 ,辺部の形状とあいまって,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケット装着時において作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を形成した点」である。したがって,この点を共通の特徴としている被告意匠と本件意匠は,類似している。 両意匠におけるこれ以外の部分における差異は,僅かな部分的な差異にとどまり,両意匠の類否を左右するほどのものということはできない。 (被告の主張)ア本件意匠の構成(原告の主張と異なる部分には下線を付した )。 (ア) 鞘状の被嵌部を中心に置いて,被嵌部の周囲から,その左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部の高さと略同じ寸法にして,当該頂部より大きく上方に突出させて形成し,さらに,本件意匠の左辺の垂直状の歯板部の内側辺部及び右辺の垂直状の歯板部の内側辺部の前面にはそれぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成され,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,バケットへの装着時において,バケットとの隙間をできる限り塞ぐように形成することにより,作業時の土砂漏れを防止することができるような形状の,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺及び,, 右辺の歯板部の内側辺により囲み形成された 左右の溝状部が形成されこれにより作業効率が飛躍的に向上するものである。 (イ) 被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成したものであり,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する,連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成している。 (ウ) 左辺側の歯板部を,バケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための稍幅の狭い係合当接板を,上下の中間部寄りにして,その先端部分が,左辺側の歯板部の左端からはみ出る状態で,水平状に張り出して設けている。 (エ) 右辺の歯板部の横幅を,左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,同一平面たる平坦面に形成され,この右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面は,それぞれ平坦面に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された,隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 イ被告意匠の構成(原告の主張と異なる部分には下線を付した )。 (ア) 鞘状の被嵌部を中心に置いて,被嵌部の周囲から,その左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部とほぼ同一線上になるように形成し,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部の前面は,左辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面と面一な平坦面に形成され,底辺の歯板部の隅部には,四角台地状の隅隆起部が形成され,正面から見て,被嵌部の湾曲状部の左右部分に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,垂直状の左辺の歯板部の内側辺及び垂直状の右辺の歯板部の内側辺により囲み形成された,左右の溝状部が形成され,溝状部における左右辺の歯板部の各内側辺の下方部分は,振分角度20度の130度に開いて傾斜した状態に形成され,被嵌部の前面には,樋口ブランド/Higuchi/P18N/Cの文字からなる鋳出表示部が隆起して形成されている。 (イ) 被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成されていて,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成したものであり,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する,連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成されている。 (ウ) 左辺側の歯板部を,バケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための稍幅広な係合当接板を,上下の中間部よりも上部寄りにして,その先端部分が,左辺側の歯板部の左端からはみ出る形態で,水平状に張り出して設けている。 (エ) 右辺の歯板部の横幅を,左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,隅隆起部を除いて同一平面たる平坦面に形成され,この右辺の歯板部の背面の裏段差面は平坦面に形成され,被嵌部の背面上部には傾斜隆起部,被嵌部の背面下部には凹部及び左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部が,それぞれ凸凹状に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された,隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 ウ本件意匠と被告意匠の共通点本件意匠と被告意匠との基本的構成態様における共通点は (原告の主 ,張)ウのとおりである。 エ本件意匠と被告意匠の差異点本件意匠と被告意匠とは,その具体的構成態様において,次の差異点がある(原告の争っている部分には下線を付した。。)(ア) 両歯板部の具体的構成態様本件意匠にあっては,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部の高さと略同じ寸法にして,当該頂部より大きく上方に突出させて形成しているのに対し,被告意匠にあっては,左右辺の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部とほぼ同一線上になるように形成している。 (イ) 両歯板部の具体的構成態様本件意匠にあっては,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部の前面にはそれぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成されているのに対し,被告意匠にあっては,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部の前面は,左辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面と面一な平坦面に形成され,底辺の歯板部の隅部には,四角台地状の隅隆起部が形成されている。 (ウ) 溝状部の具体的構成態様本件意匠にあっては,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケットへの装着時において,製品とバケットとの隙間をできる限り塞ぐように形成することにより,作業時の土砂漏れを防止できるような形状の被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺及び右辺の歯板部の内側辺により囲み形成された左右の溝状部が形成され,これにより,作業効率が飛躍的に向上するものであるのに対し,被告意匠にあっては,正面から見て,被嵌部の湾曲状部の左右部分に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された,左右の溝状部が形成され,溝状部における左右辺の歯板部の各内側辺の下方部分は,やや内方に傾斜した状態に形成されている。 (エ) 歯板部の前面の具体的構成態様本件意匠にあっては,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,同一平面たる平坦面に形成されているのに対し,被告意匠にあっては,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,隅隆起部を除いて同一平面たる平坦面に形成されている。 (オ) 係合当接板の具体的構成態様本件意匠にあっては,製品同士のがたつきを防止するための稍幅の狭,(「」。) い係合当接板を 上下の中間部 原告は 上方 を挿入すべきと主張寄りにして,水平状に設けているのに対し,被告意匠にあっては,本件意匠のものよりも(原告は「やや」を挿入すべきと主張 )幅広な係合 。 当接板を,本件意匠のものの配置位置よりも上部にして,上下の中間部よりも(原告は「僅かに」を挿入すべきと主張 )上部寄りにして,水 。 平状に設けている。 (カ) 歯板部の背面の具体的構成態様本件意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面は,それぞれ平坦面に形成されているのに対し,被告意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面は平坦面に形成され,被嵌部の背面上部には傾斜隆起部,被嵌部の背面下部には凹部,及び,左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部が,それぞれ凸凹状に形成されている。 (キ) 被嵌部の前面の具体的構成態様本件意匠にあっては,被嵌部の前面に何らの表示部も存在しないのに対し,被告意匠の被嵌部の前面には,樋口ブランド/Higuchi/P18N/Cの文字からなる鋳出表示部が隆起して形成されている。 オ本件意匠と被告意匠の類否意匠の類否を判断するに当たっては,意匠全体を観察した上,需要者が最も注意を惹く意匠の構成,すなわち要部がどこであるかを,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等をも斟酌して把握し,登録意匠と類否判断の対象となる意匠とが,要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものである。 (ア) 本件意匠の要部バケット先端装着具は,例えば,ガス管,水道管の埋設工事等において,地面にガス管,水道管等を埋設するための埋設溝を掘削する際に用いられ,バケットの先端部で地面を掘り,バケット先端装着具の前面たる表面を介して,掘った土をバケット内に積み込み導入し,堀った土を地上に持ち上げ,バケット内の土をバケット先端装着具の前面たる表面を介して地上に排出し,これを繰り返して埋設溝を所定の深さまで掘り下げた後,バケット先端装着具の背面たる底面の先端縁部を埋設溝の底面に対して先下りの対地角度で異動させて,埋設溝の底面を平らに均したり,バケット先端装着具の背面たる底面を埋設溝の底面に対して平行に対面させ,この底面で埋設溝の底面を叩いて締圧していくというものである。 また,バケットの形態は,ショベルカーを製作する各建機メーカーにより異なり,この種のバケット装着具は,装着される様々なバケット形態の仕様並びにアダプターの仕様に応じて,その基本的形状及び構造は必然的に定まる。 バケット先端装着具の需要者は,ガス管,水道管の埋設工事等の工事業者といった専門的知識を有する者である。これら需要者は,その使用態様からして,バケット先端装着具の表面,あるいは裏面,若しくは,斜め上から,斜め下からというように,様々な角度で俯瞰してバケット先端装着具の全体形態を観察する。 (イ) 本件意匠の意匠登録出願前に頒布された刊行物である,乙4文献ないし乙10文献には,バケット先端装着具の意匠の記載がある。 また,原告と被告とは,昭和61年1月24日,被告を製造元,原告を総販売元とするツース盤(バケット先端装着具)の代理店販売契約を締結して,原告が,旧被告製品を被告から購入し,ユーザーに販売していたものであり,旧被告製品は,本件意匠の登録出願前に製造販売されていた。したがって,旧被告意匠は,本件意匠に対して公然実施された先行公知意匠に該当する。 旧被告意匠は,次の点において,本件意匠と共通する。 a歯板部は,鞘状の被嵌部を中心に置いて,同被嵌部の周囲からその左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部が形成されている。 b被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成し,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成されている。 c左辺側の歯板部をバケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が左辺側の歯板部の左端からはみ出る形態で,水平状に張り出して設けている。 d右辺の歯板部の横幅を左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 これらaないしdの構成態様は,本件意匠の登録出願前にありふれた構, 。 成となっていたのであるから 本件意匠の要部と認定することはできない(ウ) 本件意匠の要部は,次のとおりである。 a左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部の高さと略同じ寸法にして当該頂部より大きく上方に突出させて形成している点。 b左辺の歯板部の上辺部及び右辺の歯板部の上辺部の前面にはそれぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成されている点。 c正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケットへの装着時において,製品とバケットとの隙間をできる限り塞ぐように形成することにより,作業時の土砂漏れを防止できるような形状の被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の垂直状に大きく延びる内側辺及び右辺の歯板部の垂直状に大きく延びる内側辺により囲み形成された左右の溝状部が形成されている点。 d表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は同一平面たる平坦面に形成されている点。 e製品同士のがたつきを防止するための稍幅の狭い係合当接板を,上下の中間部寄りにして,水平状に設けている点。 f右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面はそれぞれ完全に何もない真っ平らな平坦面に形成されている点。 (エ) 本件意匠と被告意匠の類否上記の本件意匠の要部と被告意匠を比較すると,以下の点において顕著な差異が認められる。 a本件意匠にあっては,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部の高さと略同じ寸法にして当該頂部よ,, り大きく上方に突出させて形成しているのに対し 被告意匠にあっては左右辺の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部とほぼ同一線上になるように形成している点。 b本件意匠にあっては,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の垂直状に大きく延びる内側辺及び右辺の歯板部の垂直状に大きく延びる内側辺により囲み形成された左右の溝状部が形成されているのに対し,被告意匠にあっては,正面から見て,被嵌部の湾曲状部の左右部分に被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部が形成され,溝状部における左右辺の歯板部の各内側辺の下方部分は,内方に傾斜した状態に形成されている点。 c本件意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左右の歯板部の背面はそれぞれ平坦面に形成されているのに対し,被告意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面は平坦面に形成され,被嵌部の背面上部には裏面側に大きく突出する傾斜隆起部,被嵌部の背面下部には凹部,及び,左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部が,それぞれ凸凹状に形成されている点。 以上によれば,本件意匠と被告意匠との前記共通点を考慮してもなお,全体として,その差異点が共通点を凌駕し,需要者の視覚を通じて起こさせる美感を全く異にするというべきである。 よって,本件意匠と被告意匠は類似しない。 ( ) ( ) 争点( ) 本件意匠の意匠登録に意匠法3条2項違反の無効理由があるか22(被告の主張)ア争点(1)について検討したとおり,本件登録意匠の出願前に公然実施されていた旧被告意匠は,本件意匠と共通する構成態様を有していた。 また,旧製品「22S (昭和62年6月4日付け製作図面。乙18 , 」 )同「18S (同年7月3日付け製作図面。乙19 ,同「18SN (同 」 )」日付け製作図面。乙20 ,同「35S(0.8(昭和61年7月22 ))」日付け製作図面。乙24 ,同「35S(0.7(同日付け製作図面。 ))」乙25 ,同「30S(0.4(同月28日付け製作図面。乙26 , ))」 )「(. )」(。), 「」 同 30S 0 4同月24日付け製作図面 乙27同 25S(同月29日付け製作図面。乙28 ,同「P25 (同日付け製作図面。 )」乙29)も公然実施されていた。これら被告の旧製品の意匠のうち,乙1, 。 8ないし乙20の各文献に記載されたものは 旧被告意匠と相似形である以上によれば,本件意匠と共通する旧被告意匠の構成態様は,本件登録, , 。 意匠出願前に 日本において広く知られた いわゆる周知意匠に該当するイ意匠が 「慣用手段による創作」及び「周知形状に基づく創作」に該当 ,する場合,かかる意匠については,当業者が容易に創作できたものであるから,意匠登録を受けることができない。 本件意匠の創作容易性の判断においては,出願前周知であった意匠と本件意匠の差異点を対比して抽出し,これらの差異点を創作容易性の判断対象とし,これらの差異点を考慮しつつ,総合的に判断することになる。 , ,。 そこで 旧被告意匠と本件意匠を対比すると 次の差異点が認められる(ア) 本件意匠にあっては,左右の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部の高さと略同じ寸法にして,当該頂部より大きく上方に突出させて形成しているのに対し,旧被告意匠にあっては,左右辺の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部とほぼ同一線上になるように形成した後に,外方に向いて当該頂部より低くして形成している点。(イ) 本件意匠にあっては,左辺の歯板部の上辺部及び右辺の歯板部の上辺部の前面には,それぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成されているのに対し,旧被告意匠にあっては,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部に隆起部分が形成され,右辺の歯板部の前面,底辺の歯板部の前面,左辺の歯板部の前面は,面一な平坦面に形成され,本件意匠に見られる隆起部分は存在せず,底辺の歯板部の隅部には,四角台地状の隅隆起部が形成されている点。(ウ) 本件意匠にあっては,被嵌部における湾曲状部の左右部分に左右辺の歯板部の上辺部より低い位置に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の垂直状に延びる内側辺及び右辺の歯板部の垂直状に延びる内側辺により囲み形成された,左右の溝状部が形成されているのに対し,旧被告意匠にあっては,被嵌部の湾曲状部の左右部分に左右辺の歯板部の隆起部分とほぼ同じ高さの位置に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の垂直状に延びる内側辺部及び右辺の歯板部の垂直状に延びる内側辺部により囲み形成された,左右の溝状部が形成されている点。(エ) 本件意匠にあっては,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,同一平面たる平坦面に形成されているのに対し,旧被告意匠にあっては,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,隅隆起部を除いて同一平面たる平坦面に形成されている点。(オ) 本件意匠にあっては,稍幅の狭い係合当接板を,上下の中間部寄りにして,水平状に設けているのに対し,旧被告意匠にあっては,本件意匠のものよりも幅広の係合当接板を,本件意匠のものの配設位置よりも上部にして 上下の中間部よりも上部寄りにして 水平状に設けている点。 , ,(カ) 本件意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面は,それぞれ平坦面に形成されているのに対し,旧被告意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面は,平坦面に形成され,被嵌部の背面には凹部が形成され,左辺の歯板部の背面には,四角台地状の背面隆起部が凸状に形成されている点。(キ) 本件意匠にあっては,被嵌部の前面には,何らの表示部も存在しないのに対し,旧被告意匠の被嵌部の前面には,PAT/5・12366/樋口ブランド/P18Nの文字からなる鋳出表示部が隆起して形成されている点。乙18ないし20,24ないし28の各文献に記載されたその余の旧製品意匠は,様々な具体的構成態様を創作し,これを共通点である基本的構成態様に付加している。すなわち,バケット先端装着具は,装着されるバケット形態の仕様及びバケットの先端縁に溶接固定され,鞘状の被嵌部の穴に挿入される部品であるアダプターの仕様に対応しており,その機能を確保するという要請から,その基本的構成態様は必然的に定まり,その上に具体的構成態様を付加するという創作過程を経て,意匠が創作される。 その創作過程において,?@歯板部の各上辺部を頂部より上方に突出させたり,隅隆起部を削除して上辺部に隆起部分を形成したり,?A左右の隆起部分とほぼ同じ高さに位置する頂部を上辺部より低い位置に持ってきたり,?B削除した隅隆起部の前面の部分も含めて平坦面に形成したり,?C幅広の係合当接板を稍幅の狭いものにし,係合当接板の配設位置を,上下の中間部よりも上部寄りから上下の中間部寄りに配置を変更したり,?D背面に形成された凹部及び背面隆起部を削除して,背面を単なる平坦面に形成したりして,本件意匠の構成を創作することは,その業界において,当業者が適宜なし得る慣用手段の範疇に属するものであり,当業者が容易になし得る創作であるから 「慣用手段による創作 「周知形状に基づく創作」に ,」該当する。 また,先願公知意匠である,乙4文献ないし乙10文献に記載された意匠においても,様々な具体的構成態様を採用している。特に,乙9文献及び乙10文献には,製品のバケットへの装着時において,バケットと製品との隙間をできる限り塞ぐように形成することにより,当該隙間部分から作業時の土砂漏れを防止できるような構成態様が記載されている。 ,,,,, 以上によれば 乙12文献記載の意匠に 乙9 10 18ないし2024ないし29の各文献に記載された意匠を組み合わせ,本件意匠を創作することは,当業者にとって容易であったといえる。 よって,本件意匠は,意匠法3条2項の規定に違反する明らかな無効理由が存在するので,原告は,被告に対し,その権利を行使することはできない(意匠法41条,特許法104条の3 。)(原告の主張)ア被告は,乙18ないし20,24ないし29の各文献に記載された意匠が,本件意匠の登録出願前に公然実施された先行公知意匠であり,周知意匠であると主張する。しかし,これらの意匠には,本件意匠の最大の要部である,左右辺の両歯板部の各上辺部の形状とあいまって,バケットへの装着時において,作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部が全く存在せず,本件意匠とは全く相違する形態,形状のものであるから,先行公知意匠,周知意匠ではない。 イ被告は,旧被告意匠に,乙9,10,18ないし20,24ないし29の各文献に記載された意匠を組み合わせ,本件意匠を創作することは,当業者にとって容易であったと主張する。しかし,これら意匠のいずれも,本件意匠の基本的形態?@を備えておらず,明らかに本件意匠とは非類似で, 。 あるから これらにより本件意匠の要部が創作容易であったとはいえない( ) 争点(3 (損害の額)3 )(原告の主張)被告は,遅くとも,平成18年1月24日から被告製品の販売を開始し,同年12月末日までの間,少なくとも合計2968万円を売上げたので,被告の得た利益は,合計1335万6000円を下らない。 そして,被告の得た利益は,原告が,被告の本件意匠権の侵害行為により被った損害と推定される(意匠法39条2項)から,原告の被った損害は,1335万6000円を下らない。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3争点についての判断1争点(1 (被告意匠が本件意匠と類似するか否か)について )( ) 本件意匠の構成1本件意匠の構成は,次のとおりであると認められる(甲2 。)ア鞘状の被嵌部を中心に置いて,被嵌部の周囲から,その左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設ける。 イ正面から見て,左右の両歯板部の各上辺部を,略円弧状の山形の湾曲状部の頂部より大きく上方に突出させて形成し,これにより,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,略円弧状の山形の湾曲状部と,左右の歯板部の各上辺部の内側辺部により囲み形成される,左右の溝状部を形成する。この構成により,バケットへの装着時において,バケットとの隙間をできる限り塞ぎ,作業時の土砂漏れを防止することができる。また,左右の歯板部の垂直状の内側辺部の横の上辺部の各前面にはそれぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成される。 ウ被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成したものであり,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する,連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成している。 エ左辺側の歯板部を,バケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が,左辺側の歯板部の左端からはみ出る状態で,水平状に張り出して設けている。 オ右辺の歯板部の横幅を,左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面は,同一平面たる平坦面に形成され,この右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面は,それぞれ平坦面に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された,隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 ( ) 被告意匠の構成2被告意匠の構成は,次のとおりであると認められる(乙30,34 。)ア鞘状の被嵌部を中心に置いて,被嵌部の周囲から,その左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設ける(争いがない 。)イ正面から見て,左右の両歯板部の各上辺部を,山形の湾曲状部の頂部とほぼ同一線上になるように形成し,これにより,略円弧状の山形の湾曲状部と,左右の歯板部の内側辺により囲み形成された,左右の溝状部が形成される。なお,溝状部における左右の歯板部の各内側辺の下方部分は,やや内方に傾斜した状態に形成され,被嵌部の前面には,樋口ブランド/Higuchi/P18N/Cの文字からなる鋳出表示部が隆起して形成されている。また,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部の, , 前面は 左辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面と面一な平坦面に形成され底辺の歯板部の右隅部には,四角台地状の隅隆起部が形成される (乙3。 0),, , ウ被嵌部は 正面から見て 頂部を有する山形の湾曲状に形成されていて側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成したものであり,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する,連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成されている(争いがない 。)エ左辺側の歯板部を,バケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が,左辺側の歯板部の左端からはみ出る状態で,水平状に張り出して設けている(乙30 。)オ右辺の歯板部の横幅を,左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の歯板部及び, , 右辺の歯板部の前面は 隅隆起部を除いて同一平面たる平坦面に形成されこの右辺の歯板部の背面の裏段差面は平坦面に形成される。また,被嵌部の背面上部には傾斜隆起部,被嵌部の背面下部には凹部及び左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部が,それぞれ凸凹状に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された,隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士, ()。 を 前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している 争いがない( ) 本件意匠と被告意匠は,次の基本的構成態様において共通する(争いがな3い 。)ア歯板部前面の基本的構成態様鞘状の被嵌部を中心に置いて,同被嵌部の周囲からその左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設ける。正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部が形成されている。 イ被嵌部の基本的構成態様被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成し,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成している。 ウ左辺側の歯板部の基本的構成態様左辺側の歯板部をバケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が左辺側の歯板部の左端からはみ出る形態で,水平状に張り出して設けている。 エ両歯板部の前面及び背面の基本的構成態様右辺の歯板部の横幅を左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 ( ) 本件意匠の要部4ア意匠の類否を判断するに当たっては,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらには公知意匠にない新規な創作部分の存否等を参酌して,意匠に係る物品について需要者の注意を惹き付ける部分を意匠の要部として把握し,両意匠が要部において構成態様を共通にするか否かを中心に観察して,両意匠が全体として美感を共通にするか否かを判断すべきものである(意匠法24条2項参照 。)イ本件意匠に係る物品はバケット先端装着具であり,その需要者は,ガス管,水道管の埋設工事等の工事業者や,建設機械部品やアタッチメントの製造販売業者等である(争いがない 。バケット先端装着具の用途・使用 )態様は,例えば,ガス管,水道管の埋設工事等において,地面にガス管,水道管等を埋設するための埋設溝を掘削する際に用いられ,バケットの先端部で地面を掘り,バケット先端装着具の前面たる表面を介して,掘った土をバケット内に積み込み導入し,掘った土を地上に持ち上げ,バケット内の土をバケット先端装着具の前面たる表面を介して地上に排出し,これを繰り返して埋設溝を所定の深さまで掘り下げた後,バケット先端装着具の背面たる底面の先端縁部を埋設溝の底面に対して先下りの対地角度で移動させて埋設溝の底面を平らに均したり,バケット先端装着部の背面たる底面を埋設溝の底面に対して平行に対面させ,この底面で埋設溝の底面を叩いて締圧していくというものである(甲8,12,乙15,弁論の全趣)。,, ,, 旨なお 原告は バケット先端装着具の裏面形状の如何は 掘削効果掘削作用にはほとんど関係ないと主張する。しかし,日立建機株式会社のパンフレット(甲8 ,被告を製造元,原告を総販売元とするパンフレッ )ト(甲12,乙15)には,いずれも,バケットの底面の先端縁部,すなわち,バケット先端装着具の背面が地面に接するようにして,整地作業を行っているイラストが掲載されていることからも,バケット先端装着具の背面が整地作業等に用いられることは明らかであり,原告の主張は採用できない。 バケット先端装着具の上記のような用途,使用態様によれば,その需要, ,,, 者は バケット先端装着具を購入する際に その取付け 取外しの容易性使用時に抜け落ちにくく,隣り合う先端装着具相互の連結が確実であるか否か,同先端装着具の取付時にバケットとの間に隙間ができるか否か(隙間から土砂漏れが生じるか否か ,同先端装着具の裏面の形状は地均しや )締固め叩きに適する形状か否か,バケットの底面に対する先端装着具の取付角度は望ましい角度であるか否か,長期使用に耐え得る堅牢なものか否か,刃先部分が厚く頑丈なものか否か,メンテナンスが容易であるか否か等を重視して購入するものである(乙36の1ないし乙36の5 。これ)によれば,バケット先端装着具の需要者は,同装着具の正面のみならず,その裏面等も含め,バケット先端装着具全体を様々な角度から観察して購入するものと認められる。 原告は,需要者にとって,バケットとバケット先端装着具との間に隙間がなく,土砂漏れが防止できる形状であるか否かが最も重要であるから,正面の形状が最重要であり,裏面や側面の形状は重視されないと主張し,これに沿う原告代表者の陳述書(甲13)もある。しかし,前記認定の事実からすれば,バケット先端装着具において,その正面の形状が重要であるといえても,その裏面や側面の形状も看過し得ないものであるというべきであるから,かかる原告代表者の陳述は,上記認定のバケット先端装着具の用途,使用態様及び上記乙36の1ないし乙36の5(需要者の各陳述書)に沿わないものであり,採用することができない。 ウ本件意匠の意匠登録出願前の公知意匠として,次のものがある。 ,(,, (ア) 乙4文献等の公知の各文献には 以下の記載がある なお 乙8文献は本件意匠の出願日の後に発行されたものであり,同文献記載の意匠は,本件意匠に対して公知意匠とはなり得ない。。)乙4文献には,上部を開口した態様にして下方部分をすぼまり状のくさび形状に形成され,縦長透孔を設けた鞘状の被嵌部(第21図ないし第23図 ,略正方形の地均し板(歯板部。第19図 ,製品を左右横一列に ) )複数個バケット先端に装着する際に,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるため,左右辺の両歯板部の前後にそれぞれ形成された表段差面と裏段差面(第12図 ,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士 )のがたつきを防止するための係合当接板(第11図)が記載されている。 乙6文献には,上部を開口した態様にして下方部分をすぼまり状のくさ, (,), び形状に形成され 縦長透孔を設けた鞘状の端部装着部材 被嵌部 図4略正方形の左右の地均し板(歯板部,図5 ,製品を左右横一列に複数個 )バケット先端に装着する際に,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるため,() 左右辺の両歯板部の前後にそれぞれ形成された表段差面と裏段差面 図3が記載されている。 乙7文献には,上部を開口した態様にして下方部分をすぼまり状のくさび形状に形成され,縦長透孔を設けた鞘状の被嵌部(中間土均し片の平面図 ,被嵌部の左右の両歯板部(中間土均し片の正面図 ,製品を左右横 ) )一列に複数個バケット先端に装着する際に,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるため,左右辺の両歯板部の前後にそれぞれ形成された表段差面と裏段差面(中間土均し片の平面図 ,表段差面を除く左辺の歯板部,底辺の )歯板部及び右辺の歯板部の前面は同一平面たる平坦面に形成され,この右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面はそれぞれ平坦面に形成され,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成するとの構成(正面図,背面図 ,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣 )接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板(正面図,中間土均し片の左側面図 ,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部,左辺の歯板 )部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部(中間土均し片の正面図)が記載されている。 乙9文献には,上部を開口した態様にして下方部分をすぼまり状のくさび形状に形成され,縦長透孔を設けた鞘状の被嵌部(第2図)とその左右の歯板部(第1図)から構成される中空体が記載されている。 乙10文献には,上部を開口した態様にして下方部分をすぼまり状のく, (,) さび形状に形成され 縦長透孔を設けた鞘状のポケット 被嵌部 第1図とその左右の掘削板(歯板部,第1図 ,被嵌部とその左辺の掘削板の内 )側辺部,右辺の掘削板の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部(第1図)が記載されている。 以上によれば,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成した被嵌部及び被嵌部の左右に左右の両歯板部を設ける構成が乙4文献,乙6文献,乙7文献,乙9文献,乙10文献に,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部の構成が乙7文献に,被嵌部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部の構成が乙7文献,乙10文献に,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるため,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面にそれぞれ形成した,表段差面及び裏段差面の構成が乙4文献,乙6文献,乙7文献に,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し,隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板の構成が乙4文献,乙7文献に,それぞれ現れていたことが認められる。 (イ) また,旧被告製品は,本件意匠登録出願前に,被告が製造し,原告が販売していたものであり(争いがない ,不特定の者に,秘密でないものと )して現実に知られている状態にあったと認められるから,公然実施されていたものである。 旧被告意匠は,次のとおりの構成態様のものである(乙12,31,32。ただし,各部の名称は,乙13記載の名称を採用した。。)a鞘状の被嵌部を中心に置いて,同被嵌部の周囲からその左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設ける。正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,被嵌部の頂部を有する略円弧状の山形の湾曲状部,左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部により囲み形成された左右の溝状部が形成されている。 b被嵌部は,正面から見て,頂部を有する山形の湾曲状に形成され,側面から見て,下方部分をすぼまり状のくさび形状とし,上部を開口した態様に形成し,その正面中心線上の上端寄り部から背面に貫通する連結具挿入用の縦長透孔を設け,同透孔の下縁周りを小台地状にやや盛り上げて形成されている。 c左辺側の歯板部をバケット先端の突部に被嵌してバケット先端縁に複数並列状態に装着する際,隣接する製品の右辺の歯板部に係合し隣接する製品同士のがたつきを防止するための係合当接板を,その先端部分が左辺側の歯板部の左端からはみ出る形態で,水平状に張り出して設けている。 d右辺の歯板部の横幅を左辺の歯板部のそれよりやや広いものとし,そして,左辺の歯板部の前面及び右辺の歯板部の背面に,それぞれ表段差面及び裏段差面を形成し,製品を左右横一列に複数個バケット先端に装着する際に,左右辺の両歯板部の前後面にそれぞれ形成された隣り合う歯板部の表段差面と裏段差面同士を,前後に互い違いに重ねて嵌め併せるように形成している。 この旧被告意匠の構成態様は,いずれも,上記の本件意匠と被告意匠とで共通する基本的構成態様と同一であり,本件意匠と共通するものである(争いがない。もっとも,原告は,旧被告意匠は 「被嵌部における湾曲 ,状部の左右部分に形成した溝状部」であるのに対し,本件意匠は 「左右,辺の両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部よりやや上方に突出させて形成し ,かつ 「正面から見て, 」,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,各製品のバケットへの装着時において作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部」であるから,旧被告意匠の溝状部の構成態様とは共通しているとはいえないと主張する。 しかし,本件意匠と旧被告意匠の溝状部の形態が異なるとしても,本件意匠が,被嵌部における湾曲状部の左右部分に形成した溝状部を備えていることは明らかであり,その限度で,本件意匠と旧被告意匠は共通しているというべきである。。)(ウ) 上記(ア)及び(イ)によれば,本件意匠と被告意匠とで共通する前記基本的構成態様については,すべて,本件意匠の出願前に公然知られていたものであるから,創作性の低いものであると認められ,これらについては,本件意匠の基本的構成態様ではあるものの,需要者の注意を惹き,本件意匠を特徴付ける構成であると認めることはできない。 エ前記イ認定のとおり,バケット先端装着具が,主としてバケットの先端に装着され,水道管やガス管の埋設溝等を掘削する際に使用されるものであることからすれば,その需要者は,例えば,その先端装着具の取付時にバケットとの間に隙間ができるか否か(隙間から土砂漏れが生じるか否か ,同先)端装着具の裏面の形状は地均しや締固め叩きに適する形状か否か,長期使用に耐え得る堅牢なものか否か等について注目し,バケット先端装着具の正面のみならず,その裏面等も含め,様々な角度から観察して購入するものであるから,本件意匠の構成態様中,少なくとも次の構成態様は,需要者の注意を惹き付ける特徴的な構成態様であると認められる。 (ア) 溝状部の具体的構成態様左右の両歯板部の各上辺部を,略円弧状の山形の湾曲状部の頂部より大きく上方に突出させて形成し,これにより,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,この略円弧状の山形の湾曲状部と,左右の歯板部の上辺部の垂直状の内側辺部により囲み形成された,左右の溝状部を形成し,この形状により,先端装着具のバケットへの装着時において,先端装着具とバケットとの隙間をできる限り塞ぐようにし,作業時の土砂漏れを防止することができるような形状とした構成態様。 (イ) 両歯板部の具体的構成態様左辺の歯板部の内側辺部及び右辺の歯板部の内側辺部の横の上辺部の各前面に,それぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成されている構成態様。 (ウ) 歯板部の前面の具体的構成態様, , 表段差面を除く左辺の歯板部 底辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面が同一平面たる平坦面に形成されている構成態様。 (エ) 歯板部の背面の具体的構成態様右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面が,それぞれ平坦面に形成されている構成態様。 ( ) 類否判断5ア本件意匠を,上記認定の各特徴部分(要部)において,被告意匠と比較すると,以下のような差異がある(甲2,乙30 。)(ア) 溝状部の具体的構成態様本件意匠にあっては,正面から見て,左右の両歯板部の各上辺部を,略円弧状の山形の湾曲状部の頂部より大きく上方に突出させて形成し,これにより,略円弧状の山形の湾曲状部と,左右の両歯板部の上辺部の垂直状の内側辺部により囲み形成された,左右の溝状部を形成する。この構成により,先端装着部のバケットへの装着時において,バケットとの隙間をできる限り塞ぎ,作業時の土砂漏れを防止することができるような形状となる。これに対し,被告意匠にあっては,正面から見て,左右の両歯板部の各上辺部を,山形の湾曲状部における頂部とほぼ同一線上になるように形成し,これにより,略円弧状の山形の湾曲状部,左右の両歯板部の上辺部のやや斜めに傾斜して形成された内側辺部により囲み形成された,左右の溝状部を形成する。この構成によっては,先端装着具のバケットへの装着時において,バケットとの間に隙間が生じるため,作業時の土砂漏れを防(,,,)。 止することができるような形状とはいえない 甲5 14 乙37 38(イ) 両歯板部の具体的構成態様本件意匠にあっては,左右の歯板部の各内側辺部横の各上辺部の前面にそれぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成されており,また,上辺部以外の右辺及び底辺の歯板部は平坦面に構成されている。これに対し,被告意, , 匠にあっては 左辺の歯板部の上辺部及び右辺の歯板部の上辺部の前面は左辺の歯板部及び右辺の歯板部の前面と面一な平坦面に形成されており,また,底辺の歯板部の右隅部には,四角台地状の隅隆起部が形成されている。 (ウ) 歯板部の背面の具体的構成態様本件意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面,被嵌部及び左辺の歯板部の背面は,それぞれ平坦面に形成されている。これに対し,被告意匠にあっては,右辺の歯板部の背面の裏段差面は平坦面に形成されてい, , , るものの 被嵌部の背面上部には傾斜隆起部 被嵌部の背面下部には凹部及び,左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部が,それぞれ凸凹状に形成されている。 イ以上のとおり,本件意匠と被告意匠とは,本件意匠において需要者の注意を惹き付ける要部において明らかな差異がある。 すなわち,本件意匠にあっては,左右の両歯板部の上辺部の位置と比べて被嵌部の頂部がかなり低くなっており,バケットに装着したときに,バケットとの間の隙間をできる限り塞ぎ,作業時の土砂漏れを防止することができる形状となっているのに対し,被告意匠にあっては,山形の湾曲状部における頂部の高さが,左右辺の両歯板部の各上辺部とほぼ同じであるため,バケットに装着したときに,バケットとの間に隙間が生じてしまい,土砂漏れが生じ得る点で,需要者の注意を惹き付ける構成態様において,本件意匠と異なる形状のものとなっているのである。また,本件意匠では,溝状部を構成する左右辺の歯板部の内側辺が垂直状であり,両歯板部の内側辺部横の上辺部の前面にそれぞれ略長四角台地状の隆起部分が形成されているため,正面から見た被嵌部の形状は,上記隆起部と垂直な内側辺部により角張った印象を受けるものである。これに対し,被告意匠にあっては,被嵌部の頂部を有する略円弧状の湾曲状部と,左辺の歯板部,右辺の歯板部が平坦であり,その上辺部に角張った隆起部がないこと,下方がやや内側に傾斜している内側辺部が存在することにより,正面から見て,溝状部の形状が円みを帯びた印象を受ける点でも異なるものである。このように,正面の美感はかなり異なっている。 さらに,背面についても,本件意匠にあっては,裏段差面がある以外は平坦であるのに対し,被告意匠は,被嵌部の背面下部には凹部,左辺の歯板部の背面には四角台地状の背面隆起部があって,凸凹状になっている上,被嵌部の背面上部は,後方に傾斜して隆起しており,全体として立体的な印象を与えるものとなっている。 これらの差異は,本件意匠において,需要者の注意を惹き付ける構成態様における差異であり,微少な差異ということはできないから,被告意匠は,全体として見ても,本件意匠とその美感を異にするというべきである。 ウ原告は,本件意匠の要部は 「鞘状の被嵌部を中心に置いて,同被嵌部の ,周囲からその左右両辺外方と底辺外方に延出させた態様の歯板部を設け,左右辺両歯板部の各上辺部を,被嵌部の頂部を有する山形の湾曲状部における当該頂部よりやや上方に突出させて形成し,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケット装着時において作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を形成した点 ,すなわち 「左右辺の両歯 」,板部の各上辺部の形状とあいまって,正面から見て,被嵌部における湾曲状部の左右部分に,製品のバケット装着時において作業時の土砂漏れを防止できるような形状の溝状部を形成した点」にあり,本件意匠と被告意匠とは,要部において類似していると主張する。 しかし,本件意匠の要部は,この点に限られるものではないことは前記のとおりである。また,この点についても,本件意匠と被告意匠とでは,左右の両歯板部の上辺部と被嵌部の頂部の位置関係も異なっており,被告意匠においては,左右の歯板部の上辺部が山形の湾曲状部の頂部より上方に突出していないため,被告製品をバケットに取り付けたときに,バケットとの間に隙間が生じ,土砂漏れを防止することができない構成態様のものであり,その点は,バケット先端装着具の用途,使用態様に照らすと,需要者が注視する構成態様上の差異であるとみるべきことは前記のとおりである。 ウよって,被告意匠は,本件意匠に類似しているとはいえない。 第3結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求は,いずれも理由がないので,これらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 |
裁判長裁判官 | 設樂隆一 |
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裁判官 | 中島基至 |
裁判官 | 関根澄子 |