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審判番号(事件番号) データベース 権利
平成20行ケ10388審決取消請求事件 判例 意匠
平成20行ケ10401審決取消請求事件 判例 意匠
平成21行ケ10051審決取消請求事件 判例 意匠
平成21行ケ10083審決取消請求事件 判例 意匠
平成20ワ5712損害賠償請求事件 判例 意匠
関連ワード 物品 /  形状 /  模様 /  部分意匠 /  意匠に係る物品 /  組物の意匠(8条) /  3条1項3号 /  願書の記載 /  登録意匠 /  無効審判 / 
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事件 平成 20年 (行ケ) 10402号 審決取消請求事件
原告有 限会 社鈴木人形
訴訟代理人弁理 士田村公總
同 山内淳三
被告有 限会社ティーエム
訴訟代理人弁理 士橋本克彦
同 松下浩二郎
裁判所 知的財産高等裁判所
判決言渡日 2009/03/25
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 1特許庁が無効2007−880017号事件について平成20年10月1日にした審決を取り消す。
2訴訟費用は,被告の負担とする。
事実及び理由
請求
主文同旨
争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯原告は,意匠に係る物品の名称を「人形」とする意匠登録第1310310号(平成18年12月24日出願,平成19年8月17日設定登録。以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
被告は,平成19年12月7日,特許庁に対し,本件登録意匠を無効にすることを求めて審判(無効2007-880017号事件。以下「本件審判」という。)を請求した。
特許庁は,平成20年10月1日,「登録第1310310号の登録を無効とする。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本を同年10月14日に原告に送達した。
2 本件審決の理由本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件登録意匠(別紙1「本件登録意匠」のとおり)は,平成19年11月の原告のホームページ(掲載頁のアドレスは,http://www.suzuki-ningyo.com/。以下「原告ホームページ」という。)に掲載された意匠(以下「引用意匠」という。別紙2「引用意匠画像」のとおり)に類似し,意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当し,同条の規定に違反して登録されたものであるから,その余について判断するまでもなく,意匠法48条1項の規定により,無効にすべきものである,というものである。
上記判断に際して本件審決が認定した本件登録意匠及び引用意匠の内容,両者の一致点及び差異点は,以下のとおりであり(審決書10頁10行から11頁24行),当該部分を引用する。
「2.本件登録意匠本件登録意匠は,平成18年12月24日に出願され,平成19年8月17日に意匠権の設定の登録がなされた,意匠登録第1310310号の意匠であって,願書の記載及び願書添付の図面によれば,意匠に係る物品を「人形」とし,その形態を願書及び同図面記載のとおりとし,実線で表された部分を,部分意匠として意匠登録を受けた部分(以下,「当該部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。
3.引用意匠引用意匠は,甲第12号証に記載の,被請求人会社ホームページ(掲載頁のアドレスhttp://www.suzuki-ningyo.com/)の中に掲載された,雛人形(甲第12号証第4頁)(掲載頁のアドレス http://www.suzuki-ningyo.com/catalogue/2007.htm )の本件登録意匠に相当する部分の意匠(以下,「引用意匠」という。)である(別紙第2参照)。
その雛人形は,「BELL'S KISS SERIES」と銘打たれた画像中に掲載されているが,当該画像は,「BELL'S KISS SERIES」の雛人形を示すものではなく,「BELL'S KISS SERIES」の雛人形頭部を示すためのものであり,頭部の発表のために,胴部を付けて同ホームページに掲載されたものである。そして,当該頁は,平成18年12月3日の同社ホームページリニューアル時点から現在に至るまで掲載されているものである。したがって,「BELL'S KISS SERIES」と銘打たれた画像中に掲載された雛人形の意匠は,本件登録意匠出願前に電気通信回線を通じて利用可能となった意匠である。
4.両意匠の対比本件登録意匠と引用意匠を対比すると,意匠に係る物品は,本件登録意匠は「人形」であり引用意匠は「雛人形」であるが,実質的に両意匠の物品は一致し,本件登録意匠の当該部分と引用意匠のそれに相当する部分(以下,「両意匠の部分」という。)は,重襟元の最内側のレース地による飾り部分であるから,両意匠の部分の用途及び機能,さらに全体の形態の中での位置,大きさ,範囲においても一致する。そして,両意匠の部分の形態については,以下の共通点及び差異点が認められる。
[共通点]両意匠の部分は,基本的構成態様を,(A)重襟元からさらに内側に襟を重ねるように,帯状レース地を配して飾り部としたもので,当該部分の全体を略V字状とし,具体的構成態様において,(B)レース地を,基部側を濃密な密度の編み地とし,先端側に円形模様を1個ずつ,周方向に連続して設けたものとし,(C)円形模様を,円形外輪の中央に,直径を円形外輪の約1/2とした円形部を形成し,円形外輪と中央円形部を多数の放射状細線で繋いだ,車輪様の花図形状とし,(D)先端側輪郭を,円形模様の円形外輪が,略半円状に突出して連なった形状とし,(E)円形模様の配置を,左右の襟が重なり合う略V字状の尖り部に1個が表れるよう配し,そこから正面視略左右対称に,連続して円形模様が表れるよう配した点が,共通する。
[差異点]両意匠の部分は,具体的構成態様において,(a)基部側編み地部を,本件登録意匠は縦横の糸が表れるメッシュ地としたのに対し,引用意匠は編み方まで視認できない点,(b)円形模様の略V字状の左右側の数を,本件登録意匠は2個ずつとしたのに対し,引用意匠は背に回っていく2個目は後方が半分隠れ,約1個半程度ずつとした点,(c)円形模様先端部までの幅(襟からの突出方向の長さ)について,本件登録意匠は襟元開口部左右幅の約1/4とし,円形模様先端部の略半円状突出部は人形の顔に当たっていないのに対し,引用意匠は同約1/3とし,同略半円状突出部が人形の顔に当たり,先端部が折れ曲がっている点に,差異が認められる。」
当事者の主張
1 取消事由に係る原告の主張本件審決には,以下のとおり,(1)引用意匠誤認による共通点及び差異点の認定の誤り(取消事由1),(2)引用意匠に基づかない認定の誤り(取消事由2),(3)意見書提出機会の看過の誤り(取消事由3)及び(4)本件審決の理由不備の誤り(取消事由4)がある。
(1) 取消事由1(引用意匠誤認による共通点及び差異点の認定の誤り)ア引用意匠の(A)基本的構成態様を「全体を略V字状」と認定した誤り本件審決は,引用意匠の基本的構成態様を,「重襟元からさらに内側に襟を重ねるように,帯状レース地を配して飾り部としたもので,当該部分の全体を略V字状」(審決書11頁5行〜7行)と認定し,その点で本件登録意匠の基本的構成態様と共通するとした。
しかし,引用意匠の襟飾りの形状は,(A)「全体を略V字状」とするものではなく,逆三角形の形状(上端を塞いだ形状)であるから,本件審決の上記(A)「全体を略V字状」とする認定は,誤りである。
イ不鮮明な画像から襟飾りの詳細を具体的に認定した誤り本件審決は,全体に極めて不鮮明にして曖昧模ことした人形の襟飾りの画像(甲12)から,引用意匠の襟飾りの意匠を具体的詳細に認定している(審決書11頁5行〜24行)。
しかし,引用意匠の襟飾りの画像からは,白色密度の高い部分と,白色の間に小さな黒点状ないし線状の輪郭で穴の開いたような密度の低い部分によって濃淡模様となっていることから,該襟飾りがレース地を用いたものであることは,判別できるとしても,本件審決がした具体的詳細な認定をすることはできない。
以下のとおり,(A)ないし(E)及び(a)ないし(c)の下線部分に係る本件審決の認定は,その根拠を欠き,誤りである。
(ア)本件審決は,基本的構成態様について,「重襟元からさらに内側に襟を重ねるように,」(A)「帯状レース地を配して飾り部としたもので,当該部分の全体を略V字状とする」ものであると認定した。
しかし,引用意匠の画像からは,引用意匠の襟飾りが,面状のレース地を切り取り使用したものではなく,帯状レース地を使用したものであると判別することはできないから,本件審決の上記(A)「帯状レース地」との認定は誤りである。
(イ)本件審決は,具体的構成態様について,(B)「レース地を,基部側を濃密な密度の編み地とし,先端側に円形模様を1個ずつ,周方向に連続して設けたもの」と認定した。
しかし,レース地に「基部」と「その先端側に円形模様」のあること,円形模様なるものが1個づつ周方向に連続していることは,引用意匠の画像から判別することはできないから,本件審決の上記認定(B)は,誤りである。なお,本件審決は,内襟を,レース地の基部と誤認している。
(ウ)本件審決は,(C)「円形模様を,円形外輪の中央に,直径を円形外輪の約1/2とした円形部を形成し,円形外輪と中央円形部を多数の放射状細線で繋いだ,車輪状の花図形状」と認定した。
しかし,レース地に存在するという円形模様なる円形外輪,中央の円形部,それも円形外輪の約1/2の径を有しているとする円形部,円形外輪と円形部を結ぶ放射状細線といったものの存在,これらによって円形模様なるものが車輪状の花図形状を形成することについて,引用意匠の画像から判別することはできないから,本件審決の上記認定(C)は誤りである。
(エ)本件審決は,(D)「先端側輪郭を,円形模様の円形外輪が,略半円状に突出して連なった形状」と認定した。
しかし,円形模様なるものの円形外輪,これが半円状に突出していること,該半円状に突出した円形外輪が先端側輪郭をなしていることを,引用意匠の画像から判別することはできないから,本件審決の上記認定(D)は誤りである。
(オ)本件審決は,(E)「円形模様の配置を,左右の襟が重なり合う略V字状の尖り部に1個が表れるよう配し,そこから正面視略左右対称に,連続して円形模様が表れるよう配した」ものと認定した。
しかし,円形模様なるものの配置態様について,中央に1つ,左右対称に2つ存在して,この円形模様なるものの配置に連続性があることは,引用意匠の画像から判別することはできないから,本件審決の上記認定(E)は,誤りである。
(カ)本件審決は,差異点について,(a)「基部側編み地部を,・・・引用意匠は編み方まで視認できない」と認定した。
しかし,本件審決が認定した濃密な密度の編み地であるとした基部なるものは,引用意匠に存在していないから,存在していないものを取り上げて,その編み方を云々する本件審決の上記認定(a)は,前提において誤りである。
(キ)本件審決は,(b)「円形模様の略V字状の左右側の数を,・・・背に回っていく2個目は後方が半分隠れ,約1個半程度ずつ」と認定した。
しかし,円形模様なるものの数,背中側に回る2個目,片側1個半づつという具体的態様は,引用意匠の画像から判別することができないから,本件審決の上記認定(b)は,誤りである。
(ク)本件審決が(c)「円形模様先端部までの幅(襟からの突出方向の長さ)について,・・・」「襟元開口部左右幅」の「約1/3とし,」,「円形模様先端部の略半円状突出部」が「人形の顔に当たり,先端部が折り曲がっている」と認定した。
しかし,本件審決の上記認定(c)は,誤りである。すなわち,顔両側の下位に横向きの板状のものが,円形模様なるものの先端部の略半円状突出部であること,これが折り曲がったものであることを,判別することはできない。また,顔両側の下位に板状のものがあっても,その傾斜した部分は,直線をなす傾斜辺を形成しており,これが半円状突出部,すなわち円弧辺をなすものと判別することはできない。人形の顔に当たって折り曲がっているが,その曲がった部分の寸法は不明であるから,襟元開口部の左右幅に対して約1/3という比率を確定することはできない。本件審決は,襟飾りに内襟を加えた幅を「円形模様部先端部までの幅」と誤認し,重襟から内襟を除いた幅を「襟元開口部左右幅」と誤認し,この襟元開口部左右幅を,引用意匠に見られる黒色の襟の内側を基準としてその距離を把握したことになるが,内襟をレース地の基部であると誤解して,その比率が1/3であるとしても,それは根拠のない誤った比率にすぎない。
ウ 共通点と相違点の誤認が本件審決の結論に影響を及ぼすこと本件審決は,不鮮明な引用意匠による上記認定を前提として,本件登録意匠と引用意匠の差異点は,基部側の編み地部,円形模様なるものの数,円形模様先端部なるものまでの幅のみにあるとし,該円形模様なるものの幅の差異は,「人形の首元をどの程度に長く露出させるか」の差異にすぎないから,これらの差異点はいずれも微差にすぎないとして,本件登録意匠は引用意匠に類似すると判断した。
以上のように,本件審決は,引用意匠の認定を誤り,本件登録意匠と引用意匠の対比における共通点及び差異点の認定を誤ったものであり,その誤った共通点及び差異点の認定に基づいて,本件登録意匠を引用意匠に類似するとの判断をしたものであるから,上記誤りは本件審決の結論に影響を及ぼす。したがって,本件審決は,取り消されるべきである。
(2) 取消事由2(引用意匠に基づかない認定の誤り)本件訴訟の当事者間には,原告の有する意匠登録第1310309号(雛人形の袖飾りに係る部分意匠)について,被告が請求した別件無効審判請求事件(無効2007-880016号。以下「別件審判」という。)が係属している。
平成20年5月8日,別件審判において,本件審判を担当する審判官と同一の審判官2名が,原告の本社ショールームで展示されていた「BELL’S KISS SERIERS」の展示人形(立ち雛)を撮影した上,原告に対する平成20年7月2日付けの職権審理結果通知書(甲31)において,原告ホームページに掲載された「BELL’S KISS SERIERS」の人形の袖口に係る引用意匠を詳細かつ具体的に認定し,当該意匠が商標法3条1項3号に該当し,無効とすべきである旨の通知をした(甲31)。
ところで,甲32の写真は,上記職権審理結果通知書(甲31)添付の写真1及び2の前記展示人形(立ち雛)を改めて撮影したものである。本件審決において,引用意匠として認定した内容は,甲32の写真と詳細において一致する。
以上の経緯に照らすならば,別件審判の審判官と同一の審判官が,上記の原告ショールームにおいて撮影した写真(甲32類似の写真)を参考にして,本件審決における引用意匠の構成態様を認定したものと推認される。
そうすると,本件審決は,本件審決記載の引用意匠とは別の意匠(出願前公知のものではない。)に基づいて,引用意匠の具体的態様を認定したものであり,引用意匠に基づかない認定をしたものであるから,取り消されるべきである。
(3) 取消事由3(意見書提出機会の看過の誤り)本件審決において,別件審判における職権審理の結果を用いるのであれば,本件審判の審理に際しても,別件審判と同様の職権審理結果通知を行い,その襟飾りについての認定を明らかにした上で,原告に対して意見を述べる機会を与えるべきであったにもかかわらず,本件審判では,職権審理結果通知がされなかった。したがって,本件審判には,職権審理結果通知を欠き,原告に対して意見を述べる機会を与えなかった手続上の瑕疵があるから,本件審決は,取り消されるべきである。
(4) 取消事由4(本件審決の理由不備の誤り)本件審決は,別件審判の職権審理の過程で得た引用意匠を使用したにもかかわらず,その旨の理由記載を欠くから,理由不備として,取り消されるべきである。
2 被告の反論(1)取消事由1(引用意匠誤認による共通点及び差異点の認定の誤り)に対しア引用意匠の基本的構成態様について(A)「全体を略V字状」と認定した誤りに対し原告は,本件審決には,引用意匠の襟飾りの基本的構成態様について,逆三角形の形状(上端を塞いだ形状)であるのに,「全体を略V字状」と認定した点に誤りがあると主張する。
しかし,引用意匠の飾り部は,全体が略V字状の重襟元から更に内側に襟を重ねたものであり,重襟に沿って形成されることからみて,略V字状であると認定できる。
イ 不鮮明な画像から襟飾りの詳細を具体的に認定した誤りに対し原告は,引用意匠について,襟元の飾り部分が密度変化の濃密模様を配置したレース地であること以外は,客観的に不明りょうであり,本件審決認定の前記(B)ないし(E)及び(a)ないし(c)の下線部分は,認定できないと主張する。
しかし,原告の上記主張は,次のとおり失当である。
(ア)すなわち,原告は,平成20年3月4日付けで提出した審判事件答弁書(2)(乙1,6頁22行〜8頁18行)において,引用意匠につき,以下のとおり認識している。
?@女雛が着用した十二単の正面にその重ね襟元(襟口)にレース地の飾りが配置してある。
?A正面にその重ね襟元から首までの間を埋めるように上向きに突出配置したメッシュ地にして面内のメッシュ密度を変化した濃密模様を配置したレース地の襟元飾り。
?B中央上端をやや凹陥状とするとともにその左右両側に同じくレース地によるヒレ状の小片を配置した。
したがって,襟元の飾り部分が密度変化の濃密模様を配置したレース地であること以外は客観的に不明りょうであるとする原告の主張は,理由がない。
(イ)本件審決における引用意匠は,インターネットにおける原告ホームページの画像中に掲載された雛人形の意匠であり,それを印刷した写真ではない。原告ホームページの画像自体(乙6)によれば,引用意匠について本件審決認定のとおりの共通点及び差異点を判別できる。乙3は,被告において印刷した引用意匠であるが,原告が引用意匠として提出した甲29と比較して,より鮮明である。
乙4は,引用意匠と同時期に原告ホームページに引用意匠である雛人形と同様の襟飾りを配した雛人形を示すものであり,引用意匠の画像を原告ホームページにて見た者は,この画像も同時に見ることができる。
また,引用意匠に用いられているような連続する車輪模様の帯状レースは,例えば過去の登録例(乙5)や市販のレース地(甲8レース地(J))として,本件意匠登録前から普通に見られ,需要者に広く知られている。よって,引用意匠を見る需要者は,このようなレース地の意匠が存在していることを認識した状態で意匠を認識することは通常行われていることであり,このことにより,多少なりとも不鮮明な意匠の部分を補って判断することは許される。
(2) 取消事由2(引用意匠に基づかない認定の誤り)に対し原告は,別件審判についての合議体が,本件審判の合議体と同一の構成であり,別件審判において実見した知識ないし撮影写真を,引用意匠に代えて又は引用意匠とともに使用して,引用意匠の認定を行ったと推認されると主張する。
しかし,別件審判における事実認定の結果が本件審決に影響を与えたことは有り得ない。
(3)取消事由3(意見書提出機会の看過の誤り)及び4(本件審決の理由不備の誤り)に対し原告主張の取消事由3(意見書提出機会の看過の誤り)及び4(本件審決の理由不備の誤り)については,争う。
当裁判所の判断
1 取消事由1(引用意匠誤認による共通点及び差異点の認定の誤り)当裁判所は,本件審決のした,引用意匠についてした認定部分(下線を引いた部分)は,いずれも「引用意匠」(甲12,4頁の画像)により確定することができず,何らの根拠に基づくことのない認定であるから,誤りがあると判断する。その理由は,以下のとおりである。
(1)本件審決は,本件登録意匠と引用意匠の対比において,次のとおり共通点及び差異点を認定した(審決書11頁4行目ないし24行目。ただし,下線部分は判決において表示した。)。
「[共通点]両意匠の部分は,基本的構成態様を,(A)重襟元からさらに内側に襟を重ねるように,帯状レース地を配して飾り部としたもので,当該部分の全体を略V字状とし,具体的構成態様において,(B)レース地を,基部側を濃密な密度の編み地とし,先端側に円形模様を1個ずつ,周方向に連続して設けたものとし,(C)円形模様を,円形外輪の中央に,直径を円形外輪の約1/2とした円形部を形成し,円形外輪と中央円形部を多数の放射状細線で繋いだ,車輪様の花図形状とし,(D)先端側輪郭を,円形模様の円形外輪が,略半円状に突出して連なった形状とし,(E)円形模様の配置を,左右の襟が重なり合う略V字状の尖り部に1個が表れるよう配し,そこから正面視略左右対称に,連続して円形模様が表れるよう配した点が,共通する。
[差異点]両意匠の部分は,具体的構成態様において,(a)基部側編み地部を,本件登録意匠は縦横の糸が表れるメッシュ地としたのに対し,引用意匠は編み方まで視認できない点,(b)円形模様の略V字状の左右側の数を,本件登録意匠は2個ずつとしたのに対し,引用意匠は背に回っていく2個目は後方が半分隠れ,約1個半程度ずつとした点,(c)円形模様先端部までの幅(襟からの突出方向の長さ)について,本件登録意匠は襟元開口部左右幅の約1/4とし,円形模様先端部の略半円状突出部は人形の顔に当たっていないのに対し,引用意匠は同約1/3とし,同略半円状突出部が人形の顔に当たり,先端部が折れ曲がっている点に,差異が認められる。」。
(2)しかし,本件審決が,引用意匠の基礎的構成態様及び具体的構成態様として挙げた部分(上記下線を引いた部分)に係る認定内容は,いずれも,「引用意匠」(甲12,4頁の画像)により確定することはできない。
すなわち,引用意匠について,?@基本的構成態様において引用意匠が帯状レース地を配していること,?Aレース地を,基部側を濃密な密度の編み地とし,先端側に円形模様を1個ずつ,周方向に連続して設けたものとしていること,?B円形模様を,円形外輪の中央に,直径を円形外輪の約1/2とした円形部を形成し,円形外輪と中央円形部を多数の放射状細線で繋いだ,車輪様の花図形状としていること,?C先端側輪郭を,円形模様の円形外輪が,略半円状に突出して連なった形状としていること,?D円形模様の配置を,左右の襟が重なり合う略V字状の尖り部に1個が表れるよう配し,そこから正面視略左右対称に,連続して円形模様が表れるよう配していること,?E基部側編み地部であること,?F円形模様先端部までの幅(襟からの突出方向の長さ)について,引用意匠は同約1/3とし,同略半円状突出部が人形の顔に当たり,先端部が折れ曲がっていること,以上の各事実は,いずれも,引用意匠の襟元部の画像(甲12,4頁の画像)が不鮮明であるため,その形状,素材又は態様を確定することができない。この点は,同じホームページに掲載された画像又はその写真(甲29,乙3,乙6・別紙「引用意匠画像」)によっても,確定することはできない。
この点について,被告は,原告ホームページに引用意匠と同じ時期に掲載された雛人形の画像(乙4)を併せて見ることにより,本件意匠が審決の認定したとおりの内容及び態様であることを推認できる旨主張する。しかし,乙4の画像も不鮮明であって,同画像から審決の認定した引用意匠の内容を確定することは到底できない。
また,被告は,引用意匠を見る需要者は,過去の登録例(乙5)や市販のレース地(甲8レース地(J))によって,不鮮明な意匠の部分を補って判断をするから,本件審決が審決の認定したとおりの内容及び態様を確認できると主張する。しかし,多数存在する既存のレース地から乙5や甲8のレース模様を選択し,その形状を確定することは到底できない。
被告の上記主張はいずれも失当である。
以上によれば,本件審決が,引用意匠の基礎的構成態様及び具体的構成態様として挙げた部分(上記下線を引いた部分)の認定内容は,いずれも,「引用意匠」(甲12,4頁の画像)から確定することができず,何らの根拠に基づくことなく認定したものであって,誤りというべきである。
2 結論以上によれば,原告主張の取消事由1(引用意匠誤認による共通点及び差異点の認定の誤り)には理由があり,その余の点について判断するまでもなく,原告の本訴請求は理由があるから,本件審決を取り消すこととし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 飯村敏明
裁判官 齊木教朗
裁判官 嶋末和秀
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