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関連審決 不服2002-20408
関連ワード 物品 /  物品の形状 /  形状 /  模様 /  意匠に係る物品 /  先願 /  3条1項3号 /  意匠の属する分野 /  類似の意匠 /  部品 /  意匠の類否 /  全体観察 /  登録意匠 /  類似性(類否判断) /  混同を生じるおそれ(混同を生ずるおそれ) / 
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事件 平成 16年 (行ケ) 152号 審決取消請求事件
原告 株式会社オーイケ
訴訟代理人弁理士 今井彰
被告 特許庁長官小川洋
指定代理人 藤正明
同 内藤弘樹
同 伊藤三男
裁判所 東京高等裁判所
判決言渡日 2004/09/15
権利種別 意匠権
訴訟類型 行政訴訟
主文 原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
請求
特許庁が不服2002-20408号事件について平成16年3月10日にした審決を取り消す。
当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯 原告は,意匠に係る物品を「側溝用ブロック」,その形態を別添審決謄本写し別紙第1「本願の意匠」欄記載のとおりとする意匠(以下「本願意匠」という。)について,平成13年5月1日に意匠登録出願(意願2001-012695号,以下「本件意匠登録出願」という。)をしたが,平成14年9月20日に拒絶の査定を受けたので,同年10月21日,これに対する不服の審判の請求をした。
特許庁は,同請求を不服2002-20408号事件として審理した上,平成16年3月10日に「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本は,同月19日,原告に送達された。
2 審決の理由 審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本願意匠は,本件意匠登録出願前に頒布された特許庁発行の意匠公報(甲3)記載の意匠登録第793759号,意匠に係る物品を「側溝用ブロック」,その形態を別添審決謄本写し別紙第2「引用の意匠」欄記載のとおりとする意匠(以下「引用意匠」という。)と比較すると,意匠に係る物品が共通し,形態についても共通点が差異点をりょうがするものであるから,両意匠は類似するものであり,本願意匠は,意匠法3条1項3号に該当し,同項柱書の規定により意匠登録を受けることができないとした。
原告主張の審決取消事由
1 審決は,本願意匠と引用意匠の共通点の判断及び差異点の認定判断を誤った結果,類否判断を誤った(取消事由)ものであるから,違法として取り消されるべきである。
2 取消事由(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り) (1) 本願意匠と引用意匠の共通点の判断の誤り ア 審決は,本願意匠と引用意匠の共通点(1)として認定した,「両側壁の上端に天板を一体に形成して略倒立コ字状とした,いわゆる門型側溝ブロックであって,その天板の中央部に全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋体嵌入開口部を設け,天板上面の一方の側縁に沿って,小さな突条を設けている点」(審決謄本1頁[共通点](1),以下「共通点(1)」という。),共通点(2)として認定した,「両側壁の上方部について,内側を傾斜状に僅かに張り出し,外側を下方垂直面より傾斜面を介して内側よりも多く張り出すよう肉厚に形成している点」(同2頁[共通点](2),以下「共通点(2)」という。),及び共通点(3)として認定した,「突条部について,天板上面の一方の側縁から,側壁上端を上方に延設し立ち上がらせて形成したもので,当該突条部の断面を天板側が僅かな斜状の略台形状としている点」(同(3),以下「共通点(3)」という。)について,「両意匠の上記(1)及び(2)の共通点は,全体の基本的構成に係り,形態全体の大部分を占め,形態の主要なところを形成しているものであって,意匠全体の基調を醸成しているから,両意匠の類否判断を支配的に左右するものと認められる。また,(3)の共通点も両意匠の共通感を更に助長しているものである」(同頁下から第3段落)と判断したが,誤りである。
イ 共通点(1)の「小さな突条」という表現が何に対して小さいのか示されていないが,少なくとも天板よりも小さいということであれば,共通点(1)及び同(2)は,本願意匠及び引用意匠に共通するだけではなく,審決が引用する意匠登録第793712号の意匠(甲4参照,以下「甲4意匠」という。)及び同第1001279号の意匠(甲5参照,以下「甲5意匠」という。)にも共通し,さらに,意匠登録第579090号の意匠(甲9参照,以下「甲9意匠」という。),同号の類似1号の意匠(甲10参照,以下「甲10意匠」という。),同類似2号の意匠(甲11参照,以下「甲11意匠」という。),意匠登録第620130号の意匠(甲12参照,以下「甲12意匠」という。)及び同号の類似1号の意匠(甲13参照,以下「甲13意匠」という。),意匠登録第833499号の意匠(甲14参照,以下「甲14意匠」という。),並びに同793760号の意匠(甲15参照,以下「甲15意匠」という。)にも共通するものである(なお,甲9〜甲13意匠は,本件意匠登録出願前に公知の意匠であり,甲4意匠及び甲14意匠は,引用意匠の先願であり,甲15意匠は,引用意匠と同日付けで同一の出願人の出願に係るものであり,甲5意匠は,引用意匠の公開後に意匠登録出願されたものである。)。
したがって,共通点(1)及び同(2)は,引用意匠に特有のものではなく,本願意匠と引用意匠の類否を左右するほど重要なものということはできず,「意匠全体の基調を醸成しているから,両意匠の類否判断を支配的に左右するものと認められる」ということはできない。
ウ 共通点(3)は,本願意匠及び引用意匠のみならず,甲4意匠及び甲5意匠,さらに,甲10〜甲15意匠にも共通するものであるから,引用意匠に特有のものではなく,本願意匠と引用意匠の類否を左右するほど重要なものということはできず,「(3)の共通点も両意匠の共通感を更に助長しているものである」ということもできない。
エ このように,共通点(1)〜(3)が共通する,甲4意匠,甲10〜甲14意匠が存在する中で,引用意匠は,これらと非類似であるとして登録されているのであるから,引用意匠は,少なくとも登録時においては,共通点(1)〜(3)が共通する甲4意匠及び甲10〜甲14意匠に対し,一般の需要者,すなわち,側溝用ブロックを購入あるいは購入の指示を行う側溝の設計者,施工業者などが,普通の注意力をもって当該意匠に係る物品の購買を選択するに当たって,対比されるべき両意匠に係る物品形状,模様若しくは色彩又はそれらの結合から看取される美感により,両意匠について混同を生じるおそれがないと判断されたはずであって,共通点(1)〜(3)が共通するからといって,本願意匠と引用意匠について混同を生じると判断することは,不当である。
(2) 本願意匠と引用意匠の差異点の認定判断の誤り ア 差異点(ア)の認定判断の誤り (ア) 審決は,本願意匠と引用意匠の差異点(ア)として,「両側壁上方の肉厚部の態様について,本願の意匠(注,本願意匠)は,左の方が右よりやや厚いのに対し,引用の意匠(注,引用意匠)は,ほぼ同様の肉厚としている点」(審決謄本2頁[差異点](ア),以下「差異点(ア)」という。)を認定した上,差異点(ア)について,「両側壁上方の肉厚部の態様の差異について,本願の意匠は,左右の肉厚が異なるが,その差は,天板上面の左方の側縁に設けた突条部の大きさに伴い,右方より僅かにより肉厚に形成したに過ぎないものであり,その左右の差は顕著なものといえず,両意匠の共通するとした両側壁上方部について傾斜面を介して内外両側に張り出すよう肉厚に形成している態様においての単なる肉厚の多少に係るものであるから,視覚的にさほど目立つものでもなく,また,この種意匠の属する分野において,本願の意匠のように当該部の左右の肉厚を変えることは,本願出願前より既に行われていることであり(例えば,意匠登録第793712号(注,甲4意匠),同第1001279号(注,甲5意匠),公開実用新案公報記載の実開昭57-31383号(注,甲6)の第1図参照),格別目新しい態様といえるものでもないことから,看者の注意を格別惹くものでなく,この差異は,微弱なものというほかない」(同頁最終段落〜3頁第1段落)と判断したが,誤りである。
(イ) 審決は,差異点(ア)において,「本願の意匠(注,本願意匠)は,左の方が右よりやや厚い」と認定したが,本願意匠に「左の方が右よりやや厚い」部分はない。すなわち,本願意匠の正面図によれば,両側壁下方に対する両側壁上方の張り出し量は,左側が右側の2倍程度であり,この2倍程度の視覚的に目立つ張り出しの差を,「やや厚い」とすることは誤りである。また,本願意匠のA-A′断面図によれば,両側壁上方の厚みは,左側が右側の2倍程度であり,2倍程度の厚みの差を「やや厚い」とすることも誤りである。さらに,いわゆる門型の側溝用ブロックにおいては,最も幅が狭いものであっても,幅は500mm程度である。したがって,A-A′断面図における左右の厚みの差は,100mm程度と50mm程度との差である50mm程度となり,一目で分かる顕著な差であり,この点においても,左右の厚みの差は「やや厚い」と称される程度ではない。したがって,審決の差異点(ア)の認定は誤りであり,これを前提にした,両意匠の類否判断も誤りである。
(ウ) 差異点(ア)について,審決は,「この種意匠の属する分野において,本願の意匠(注,本願意匠)のように当該部の左右の肉厚を変えることは,本願出願前より既に行われていることであり(例えば,意匠登録第793712号(注,甲4意匠),同第1001279号(注,甲5意匠),公開実用新案公報記載の実開昭57-31383号(注,甲6)の第1図参照),格別目新しい態様といえるものでもないことから,看者の注意を格別惹くものでなく,この差異は,微弱なものというほかない」(審決謄本2頁最終段落〜3頁第1段落)と判断したが,上記のとおり,引用意匠と共通点(1)ないし(3)が共通する引用意匠の先願意匠として甲4意匠及び甲10〜甲14意匠があり,これらに対し,引用意匠は,差異点(ア),すなわち,「両側壁上方の肉厚部の態様について,本願の意匠は,左の方が右よりやや厚いのに対し,引用の意匠(注,引用意匠)は,ほぼ同様の肉厚としている点」を有し,このため,引用意匠は,上記先願意匠に対して,非類似であると判断されたものというべきである。したがって,差異点(ア)が「格別目新しい態様といえるものでもない」としても,引用意匠との類否においては,看者の注意を格別ひくものであると判断されるべきである。
イ 差異点(イ)の認定判断の誤り (ア) 審決は,本願意匠と引用意匠の差異点(イ)として,「突条部の断面形状について,本願の意匠(注,本願意匠)は,幅より高さが低く,天板側上縁が緩やかな弧状となっているのに対し,引用の意匠(注,引用意匠)は,幅より高さが高いものである点」(審決謄本2頁[差異点](イ),以下「差異点(イ)」という。)を認定した上,差異点(イ)について,「突条部の断面形状の差異について,当該断面部位のみを観察した場合には,前記差異が認められるものではあるが,この突条部は,この種物品分野において,従来より微妙な変化を伴う種々の態様が見受けられるものであるところ,本願の意匠のような幅より高さが低く,かつ,天板側上縁を緩やかな弧状とした態様も,従来より普通に見受けられ(例えば,意匠登録第949983号〔注,甲7参照,以下「甲7意匠」という。〕,同第990381号〔注,甲8参照,以下「甲8意匠」という。〕,参照),本願の意匠独自の態様とはいえないから,意匠上格別評価することができず,形態全体から見れば,この差異は,共通点(3),すなわち,突条部の共通する態様に吸収される程度の微弱な差異といわざるを得ない」(同3頁第1段落)と判断したが,誤りである。
(イ) 本体部分に対する突条部(立ち上がり部分)のサイズを比較すれば,本願意匠と引用意匠との差は,単に,形状の差だけにとどまらない。すなわち,本願意匠における突条部の幅は,物品全体の幅の2/10(20%)程度を占めるのに対し,引用意匠における突条部の幅は,物品全体の幅の1/20(5%)程度にしかすぎない。さらに,高さを比較すると,本願意匠における突条部の高さは,物品全体の高さの1/10(10%)程度であるのに対し,引用意匠における突条部の高さは,本体部分の高さの1/20(5%)以下と本願意匠の半分以下にとどまる。本願意匠における突条部の比率と,引用意匠における突条部の比率との差は,引用意匠の全体を見たときに,突条部がほとんど目立たないという印象を与えるのに対し,本願意匠の全体を見たときには,突条部が目立つという印象を与えるものである。また,甲4意匠,甲5意匠及び甲10〜甲14意匠のように,突条のサイズの異なる多くの意匠が登録されている。したがって,本願意匠における意匠全体における突条部の比率と,引用意匠における意匠全体における突条部の比率との差は,本願意匠と引用意匠が看者に全体として異なった美感ないし美的印象を与える差異として評価されるべき要素であり,審決は,この差異点を看過したものである。特に,本願意匠における突条部の幅の割合が2/10(20%)程度であるのに対し,引用意匠における突条部の幅の割合が1/20(5%)程度であるという差は,双方の意匠の平面図において,開口が一方に片寄っているか,中央にあるかの差として表れるから,「突条部の肉厚変化に関連して平面視上の配置位置が必然的に片寄っているにすぎず」(審決謄本3頁第2段落)という理由で,上記片寄った態様が美感を起こさせるものではないということはできない。また,本願意匠において,開口の中心は,物品の中心に対して10%弱程度と,視覚的に目立つ程度片寄っており,さらに,上記ア(イ)のとおり,開口の両側の幅方向の厚みは2倍程度異なっているから,開口の片寄りは十分に目立ち,「その片寄りの程度も僅かなものであるから,両意匠の類否判断への影響は小さいものである」ということもできない。したがって,開口の片寄りの程度がわずかなものであるとした審決の認定は誤りである。
需要者あるいは看者が類否を判断する流通過程においては,本願意匠全体が見られるものであるから,全体の高さと比較するのは相当でないとする被告の主張は,誤りである。
(ウ) 審決は,突条部の断面形状について,本願意匠は,幅より高さが低く,天板側上縁が緩やかな弧状となっているのに対し,引用意匠は,幅より高さが高いものであるとしたが,本願意匠の突条部の形状は,幅と高さの比率がほぼ3対2と,明確に幅より高さが低いと分かる比率になっているのに対し,引用意匠の突条部は,幅と高さの比率がほぼ1対2と,明確に幅より高さが高いと分かる比率になっている。したがって,本願意匠における突条部の形状は,引用意匠における突条部の形状と比較する際に,それらの幅と高さの関係があいまいに評価されるような形状ではない。
(エ) また,審決の「この突条部は,この種物品分野において,従来より微妙な変化を伴う種々の態様が見受けられるものである」(審決謄本3頁第1段落)の意味するところは不可解であるが,甲9〜甲14意匠が示すように,この種物品分野において,形状の異なる突条部を備えた側溝用ブロックの意匠が登録されており,突条部の態様の差異は,本願意匠と引用意匠が看者に全体として異なった美感ないし美的印象を与える差異として評価されるべき要素である。続いて,審決は,「本願の意匠(注,本願意匠)のような幅より高さが低く,かつ,天板側上縁を緩やかな弧状とした態様も,従来より普通に見受けられ(例えば,意匠登録第949983号〔注,甲7意匠〕,同第990381号〔注,甲8意匠〕参照),本願の意匠独自の態様とはいえないから,意匠上格別評価することができず」としたが,甲7意匠及び甲8意匠は,底があり,上面に開口のない,全体が筒状の,いわゆるカルバート(暗渠)型の側溝用ブロックの上面が突条に向かってへこむように傾斜した意匠であり,本願意匠の門型側溝用ブロックで上面が平らな意匠とは全体が異なり,そのような全体が異なる意匠のどの部分をもって従来より普通に見受けられると判断したのか不明である。甲7意匠の突条部は,高さと幅がほぼ一対一か,幅の方が若干大きい程度であり,甲8意匠の突条部は,高さと幅がほぼ一対一か,高さの方が若干大きい程度であり,これらの意匠を参照してみても,本願意匠のような幅より高さが低く,かつ,天板側上縁を緩やかな弧状とした態様が,従来より普通に見受けられる形状であるといい得るものではない。本願意匠における突条部の形状は,いわゆる門型の側溝用ブロックの一方の縁に,止水又は土留めのための十分な高さ,参考図に図示する車両が乗り越えられる程度の高さ及びそのときの加重に耐えられる断面積を確保するという要求を満足するようにデザインされたものであり,上記比率にすることにより,当業者に対して,突条部の高さが高すぎず,低すぎず,さらに,十分な強度を備えたものであるという印象を与えるデザインとなっている。このようなデザインの突条部は,甲9〜甲14意匠にも見られないものである。一方,引用意匠の突条部は,非常に小さく,ある程度の止水としては機能するかもしれないが,土留めとして機能することは考えられず,また,車両が乗り越える加重に耐えられると感じさせるようなデザインであるとはいえず,また,側壁から完全に外れた位置にあり,構造的に弱い印象を与える。したがって,本願意匠の突条部の形状と,引用意匠の突条部の形状の差は,当業者が本願意匠と引用意匠とを比較した場合に,本願意匠に係る物品の具体的な用途と,引用意匠に係る物品の具体的な用途との差として明確に看取できるものである。需要者である側溝の設計者あるいは施工業者などが,埋設されていない状態における側溝用ブロックを見るときは,突条部だけを見るのではなく,側溝用ブロック全体に加え,特に突条部の周囲も当然に注目するものであるから,上記突条部の形状は,審決において天板としている上面より上に突き出た部分と想定され,この部分は,側溝用ブロックを埋設したときに地表から立ち上がる部分となるために,この形状に対して,当業者,すなわち,看者の注意を格別ひくものである。したがって,両意匠について混同を生じるか否かにより判断するべきときに,当該物品の性質,目的,用途,使用態様などから,需要者の注意を強く引く部分の一つである。
(オ) 歩車道の境界については,平成12年11月15日から「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」が施行され,同法2条11項等において,「道路特定事業」について規定され,平成14年12月18日国土交通省道路局企画課発行の「『道路の移動円滑化整備ガイドライン』の策定について」(甲16,以下「甲16ガイドライン」という。)においては,歩車道の高さの差,境界の段差をcm単位で規定し,長野県公式ホームページ「チャンネルながの」の「変えたい『きまり』の検討状況」番号32(甲17,以下「甲17ホームページ」という。)においては,「県では,視覚障害者や車いす利用者の方々のご意見をお聞きしながら,交差点部におけるよりよい段差のあり方について,検討を進めております」との記載がある。このように,本願意匠に係る物品である側溝用ブロックにおいて,取引者,需要者が,段差の大きさ及び形状に注目しないわけがない。
ウ 差異点(ウ)の判断の誤り (ア) 審決は,本願意匠と引用意匠の差異点(ウ)として認定した,「両側壁の下端両端部において,引用の意匠(注,引用意匠)のみが,細幅長方形状の底板を有している点」(審決謄本2頁[差異点](ウ),以下「差異点(ウ)」という。)について,「両側壁の下端両端部の態様の差異について,引用の意匠のみが,細幅長方形状の底板を有しているが,その底板の底部全体に占める割合が小さいものであるから,視覚的には格別看者の注意を惹くほどのものとは認められず,また,本願の意匠(注,本願意匠)のように底板を有していないものの方がよりありふれた態様であることを考慮すると,この底板の有無の差異は,意匠上高く評価することができないから,微弱な差異というほかない」(同3頁第1段落)と判断したが,誤りである。
(イ) 引用意匠は,左側面図などから分かるように,「細幅長方形状の底板」が占める比率は,突条部よりもはるかに大きいから,底板について,「視覚的には格別看者の注意を惹くほどのものとは認められず」ということはできず,また,「本願の意匠のように底板を有していないものの方がよりありふれた態様である」としても,本願意匠と引用意匠とを比較する場合において,「この底板の有無の差異は,意匠上高く評価することができないから,微弱な差異というほかない」ということもできない。底板は引用意匠の外観として目立つ部分の一つであり,また,流通過程において,本願意匠の物品は底板が隠れてしまうものではないから,外観の特徴として目立つものである。
エ 差異点(エ)の判断の誤り (ア) 審決は,本願意匠と引用意匠の差異点(エ)として認定した,「両側壁部の高さ(深さ)について,本願の意匠(注,本願意匠)の方が引用の意匠(注,引用意匠)のそれより低い(浅い)ものとしている点」(審決謄本2頁[差異点](エ),以下「差異点(エ)」という。)について,「両側壁部の高さ(深さ)についての差異は,この種物品分野の意匠においては,その高さ(深さ)を適宜変更することは常套手段であり,本願の意匠の態様もその範囲内に属する」(同3頁第1段落)と判断したが,誤りである。
(イ) 引用意匠において,両側壁部の高さは,物品の高さの95%以上を占め,本願意匠において,両側壁部の高さは,物品の高さの90%以下ではあるが,その多くを占める。したがって,両意匠の全体を観察する際に,両物品の大半を占める両側壁部及びその形状を捨像して良いとする理由はない。例えば,引用意匠の正面図及び背面図においては,側壁部の下方80%程度は無地及び平面であり,コンクリートの平面あるいは壁という印象が引用意匠の主体である。これに対し,本願意匠では,右側面図及び左側面図に図示するように,側壁の中央やや上部に水平方向に走る大きな帯が見えており,コンクリートの平面あるいは単なる壁という印象は発生しないから,この差異点(エ)だけに注目したとしても,本願意匠と引用意匠とは美感を異にするということができる。
(3) 上記のとおり,審決は,本願意匠と引用意匠の共通点が看者の注意を強くひくものではないのに,その意匠的評価を誤り,かつ,差異点についても,差異点の認定を誤り,また,それが客観的に見る者の美感に訴える影響を不当に過小評価した結果,類否判断を誤ったものである。
被告の反論
1 審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。
2 取消事由(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について (1) 本願意匠と引用意匠の共通点の判断の誤りについて ア 審決は,共通点(1)の「小さな突条」について,天板より小さいのはいうまでもなく,基本となる両側壁及び天板から構成される本体を,立体物として,形態全体から見た場合に,突条の大きさを「小さい」と認定したものである(なお,甲12意匠の側溝に見られる突条部は,その高さ及び幅の大きさが,天板と側壁のそれに近いものであるから,形態全体として見た場合であっても「小さい突条」とはいえない。)。
イ 本願意匠と引用意匠の基本的構成に係る共通点が公知の形態であったとしても,その共通点は,意匠の類否判断に影響を与えるものである。すなわち,意匠の類否判断は,物品の外観の全体にわたって,その形態を観察する全体的,視覚的な判断であるから,共通する基本的構成が周知又は公知の態様であるとしても,他に格別評価すべき部分がない場合は,意匠全体に占める割合が大きく,意匠的なまとまりを成し,看者の注意をひくところが類否判断の要部となるものであり,本件の場合のように差異点に格別見るべき点がないときは,共通する基本的構成が両意匠の類否判断の要部となるのである。なぜなら,両意匠の共通する基本的構成態様が周知又は公知の態様である場合に,それらの類否判断の比重を小さいものとして判断すると,形態のほとんどが周知又は公知の構成態様からなる出願意匠(本願意匠もこのような意匠に該当する。)の場合は,引用意匠とのわずかな差異が評価されて登録されることになり,意匠的創作のほとんど認められない意匠が登録保護されることになって,意匠法の趣旨に反することになるからである。
ウ 共通点(3)は,共通点(1)及び同(2)に比べれば,類否判断に与える影響は,さほど大きいものとはいえないが,共通点(1)及び同(2)とともに,その態様は両意匠に共通する印象を与える要素となり得るものである。そして,共通点(3)が,本願意匠の出願前に公知あるいは周知の形態であったとしても,その類否判断の要部となり得ることは,上記イのとおりである。
エ 原告が引用する甲4意匠,甲10〜甲15意匠及び引用意匠中に,共通点(1)〜(3)が存在するとしても,本願意匠と種々異なる点が存在することは,図面上も明らかであり(甲4意匠は,蓋体嵌入開口部及び平板状脚部等,甲10意匠,甲11意匠及び甲13〜甲15意匠は,突条部,側壁外面,甲12意匠は,突条部等が,それぞれ,本願意匠と大きく異なる。),その類否判断もおのずから異なることは当然である。なお,甲4意匠及び甲12〜甲14意匠は,共通点(1)の「天板の中央部に全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋体嵌入開口部を設け」を満たしておらず,また,甲12意匠は,側壁に匹敵するような極端に長い突条を有しているから,共通点(1)の「小さな突条を設けている点」を満たしていない。
(2) 本願意匠と引用意匠の差異点の認定判断の誤りについて ア 本願意匠が属する分野の事情を考慮し,この種側溝用ブロックという物品の性質に照らせば,いずれもその差異は両意匠の類否判断を左右するほどのものとは認められない。なぜなら,本願意匠は,意匠に係る物品がコンクリート製ブロックであって,その用途は,車道と歩道等との境界を成し,道路上の雨水や流雪等を蓋体開口部より導いて下水として処理するための道路用品であり,不定形で,気象や振動等の影響により容易に変化しやすい土壌の中に埋め込んで使用することから,水に関する用具とはいえ,水も漏らさぬ精密設計やデザインを要する物とはいい得ない事情がある。本願意匠は,その形状の厳密さにおいて,わずかの誤差も許されない精密部品等と異なるばかりでなく,使用状態におけるその扱われ方においても,上面のみが露出し,車輪や土足によって踏みつけられるものであり,手近で親しく鑑賞し得る置物等とも大いに異なる。したがって,精密部品や鑑賞の対象となる置物等とは,その美感がおのずから異なってくることは当然のことであり,そのデザイン,意匠の要部は,その骨格的構成ともいうべき全体の基本構成にあるというべきである。
上記のような観点に照らして,本願意匠と引用意匠の比較検討を行うと,両意匠は,形態上大きく分けた,カルバート(筒)型(甲8意匠),U字型(特開平6-200550号公報〔乙1,以下「乙1公報」という。〕の【図11】記載の意匠),門型(逆U字型)(乙1公報の【図12】記載の意匠)の中の門型に属し,さらに門型の中においても,上面蓋体開口部の態様(意匠登録第477262号の意匠〔乙2参照〕,同第527690号の意匠〔乙3参照〕,同第477263号の類似1号の意匠〔乙4参照〕及び同第793837号の意匠〔乙5参照〕),上面突条部の態様(甲12意匠及び甲14意匠),側壁外面の態様(甲9意匠,甲11意匠及び甲15意匠),側壁の厚みの態様(意匠登録第750589号の意匠〔乙6参照〕,同620618号の意匠〔乙7参照〕及び同703837号の意匠〔乙8参照〕)等にそれぞれ異なるものが見受けられる中で,基本構成において共通の態様を共有しているものである。なぜなら,両意匠は,蓋体開口部の態様,すなわち,全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状とした蓋体開口部を天板の中央部に設けている態様,天板上面の一方の側縁に沿って,小さな突条を設けている態様,凹凸のない平たん面とした側壁外面の態様,さらに,両側壁の上方部を傾斜面を介して肉厚に形成した態様が共通するものであって,その全体の基本構成に強い共通性が認められる。そして,上記したとおり,意匠的まとまりを成すところである全体の基本構成が類否判断を決する要素となるのであり,原告主張の差異点は,いずれも,基本構成に比べて小さい部分における差異であるから,共通する基本構成をしのいで両意匠を別異のものとするほど大きいものということができない。
イ 差異点(ア)の認定判断の誤りについて (ア) 確かに,両側壁上方の張り出し部分のみを比べれば,左の方が2倍程度張り出しているとしても,その張り出し部分は,分離独立しているわけではないから,当該部位を見た場合,下方の垂直状の側壁から張り出した部分のみを取り出して視認するものとは考え難く,下方側壁の厚みに張り出し部分を含めた,両側壁上方全体の厚みを視認するのが自然な見方である。そうすると,両側壁上方全体の最大幅,すなわち,本願意匠のA-A′断面図において,蓋体底部を受ける面の位置において左右幅の比は約8対6であり,原告主張のように約2倍の差はなく,さらに,左右両側壁とも傾斜面で漸次肉厚となっていることから,その差は側壁全体の厚みの中に希釈化され,目立たなくなるものである。したがって,「本願意匠は,左の方が右よりやや厚い」とした審決の認定に誤りはない。
そして,本願意匠も引用意匠も,その全体は横長の箱体状の側溝用ブロックであり,その端面形状は注目される部位の一つではあるとしても,端面に正対してこれを熟視することはさほど多いとは考えられず,むしろ,やや離れて上方から斜視的に見る場合の方がより多いと思われ(本願意匠の【参考斜視図】及び特開2000-303547号公報〔乙10〕の【図1】),また,使用状態では側溝用ブロック上面部が露出すること等を考慮すれば,左右側壁の幅の差異が極端に異なる場合はともかく,本願意匠と引用意匠の場合のように,横長の箱体状の側溝用ブロックの一部分である端面の左右側壁の幅の極端でない差異の視覚的効果は,全体から見て小さいといわざるを得ない。したがって,「視覚的にさほど目立つものでない」とした審決の判断にも誤りはない。
(イ) 本願意匠と原告が引用する先行登録意匠が,形態において酷似する関係にない以上,本願意匠と引用意匠の関係と引用意匠と先行意匠との関係を同列に論じられないことは,上記(1)エのとおりである。
ウ 差異点(イ)の認定判断の誤りについて (ア) 確かに,突条部の高さを物品の全体の高さと比較すれば,その比率に差はあるが,両側壁の高さは,後記オのとおり,同一のデザインのバリエーションとして,設置場所に応じて適宜変更されるものであり,意匠上格別重要視できないものである。また,設置状態(埋設した状態)において,地表に表れるのは,天板の上面と突条部であることから,直ちに全体の高さと比較するのは相当でなく,突条部の大きさは,使用状態等,ごく自然な状態における視野中の近接した天板の幅と比較するのが相当であり,突条部の高さには,ほとんど差は認められない。一方,幅に差は認められるが,その幅の差異を,審決は「本願意匠は,幅より高さが低く,引用意匠は,幅より高さが高い」として,具体的に数値で差を挙げていないが,幅と高さの相対的態様として認定しており,原告主張のような差異点の看過ではない。そして,突条部は,形態全体からみれば小さいものであることは上記のとおりであるから,両意匠の幅の差が認められるとしても,その小さい部分の中での差異にすぎないものであり,全体として別異の印象を与えるものとして評価することができないものである。さらに,この種側溝用ブロックにおいて,天板上面の一方の縁部に沿って形成する突条部の大きさ(幅及び高さ)は,各種見受けられるものの,その幅は,使用目的等からおのずと限度があり,両意匠共にその範囲内のものであり,本願意匠の突条部と同様の大きさ及び形状を有するものが,従来より普通に見受けられること(甲7意匠,意匠登録第630108号の意匠〔乙11参照,以下「乙11意匠」という。〕及び実開平4-57580号公報〔乙12〕記載の意匠参照)を考慮すると,「本願意匠独自の態様といえないから,意匠上格別評価することができず,形態全体から見れば,この差異は,共通点(3),すなわち,突条部の共通する態様に吸収される程度の微弱な差異といわざるを得ない」とした審決の判断に誤りはない。
(イ) 本願意匠の開口部の片寄りは,突条部の幅の大きさによって表されたものであって,その幅の差,及びその認定判断は,特に,形態全体として上面視から見た場合を含めて認定判断すべきものであるから,開口の片寄りの程度がわずかなものであるとした審決の認定に誤りがないことは,上記(ア)と同様である。
(ウ) 意匠の認定は,一般的に肉眼視をもってするものであるから,各部の構成要素を厳密に数値を用いて認定しなければならない理由はなく,必ずしも突条部の比率を数字で認定する必要はないものである。したがって,審決が,両意匠における突条部の幅と高さの比率差を認めて,「本願意匠は,幅より高さが低く,引用意匠は,幅より高さが高い」と認定したことに誤りはない。
(エ) 甲7意匠及び甲8意匠は,全体が暗渠ブロックであるが,暗渠ブロックは,道路用側溝用ブロックの一つのタイプであり,その上面より突出した部分は,本願意匠の突条部の用途,機能等が共通するものであるから,全体が異なるタイプの側溝用ブロックであっても,用途,機能等が共通する突条部の形状を例示とすることに何ら不合理はない。上記各意匠の突条部は,その高さと幅の比が,厳密に精査すればともかく,高さが幅に対してさほど高くないものとしてとらえることができ,本願意匠のものと近似するものである。そして,甲7意匠においては,本願意匠と同様,幅より高さの方がわずかに低いといえるものである。したがって,本願意匠の突条部が例示の突条部と全く異なるということはない。なお,その他に,道路用側溝用ブロックの一つのタイプであるU形側溝用ブロックではあるが,蓋を設置した状態での突条部のみに着目すれば,本願意匠と同様の突条部が,本件意匠登録出願前に頒布された意匠公報記載の乙11意匠にも見受けられる。本願意匠と引用意匠の突条部の高さはほぼ共通しているから,高さから見て止水又は土留め,あるいは車両の乗り越えの用途,機能に格別差があるとは認め難い。
仮に,そのような機能上の差異があったとしても,それは基本構成を共通にする中での強度等の要請に基づくわずかな差にすぎないものであること,また,本願意匠と同程度の幅及び高さのものが,本願意匠の出願前に見受けられることは上記のとおりであり,格別本願意匠独自の態様であるとはいえないことから,当業者が格別注目する差異とはいえず,類否判断を左右するほどのものではない。
エ 差異点(ウ)の判断の誤りについて 端面視のみを比較すればともかく,あくまで立体物として意匠全体から見ること,また,この種物品は通常上方から斜視的に見ることが多いこと,設置した状態で上面の突条部は露出して見えるが底板は見えなくなってしまうことを考慮すると,底板の評価は,上面に比べて相対的に低いものとして判断せざるを得ないものである。そして,引用意匠に見られる底板は,細幅板状で底部の両端部のみに形成し,底部全体において底板の占める割合が小さく,底部の大部分は,空いていることから,意匠全体として見た場合には,格別看者の注意をひくほどのものとはいえず,全体観察による類否判断に与える影響は,小さいものといわざるを得ない。原告は,底板は引用意匠の特徴であると主張するが,引用意匠の出願前に,引用意匠と同様に底部左右端部に細幅の底板を有するものが見受けられる(意匠登録第809114号〔乙13参照,以下「乙13意匠」という。〕)ことからすれば,引用意匠独自の態様であるとはいえないものであり,また,本願意匠のように底板のない方がより一般的な態様であることから,両意匠共にありふれた態様の中での差異にすぎないものであることにかんがみると,注意をひくものでなく,類否判断上格別評価することができない。
オ 差異点(エ)の判断の誤りについて この種側溝用ブロックの意匠は,両側壁の高さについては設置場所などに応じて,適宜変更することが,普通に行われているところであり,両意匠とも必要に応じて適宜される変更の範囲内にあるものである(平成9年藤村ヒューム管株式会社発行「FUJIMURA CATALOGUE」〔乙14,以下「乙14カタログ」という。〕,特開平6-264494号公報〔乙15,以下「乙15公報」という。〕の【図4】,【図9】及び【図14】,意匠登録第477263号の意匠〔乙16参照,以下「乙16意匠」という。〕並びに同類似8号の意匠〔乙17参照,以下「乙17意匠」という。〕)。また,この種物品の意匠において,その構成部分中の両側壁の高さを単に変更したとしても,それは同一デザインにおけるバリエーションの範囲にすぎないものであるから,その変更は類否判断の要部とはなり得ないものである。さらに,審決は,原告が主張するように両側壁の高さを捨象して判断しているのではなく,意匠全体として総合的に検討した結果,上記のとおり,高さの単なる変更は,類否判断の重要な要素とはなり得ないとして,この両側壁の高さの類否判断に及ぼす影響は微弱なものと判断しているものである。
当裁判所の判断
1 取消事由(本願意匠と引用意匠の類否判断の誤り)について (1) 本願意匠と引用意匠の共通点の判断の誤りについて ア 原告は,甲4意匠及び甲5意匠,甲9〜甲15意匠を引用し,審決が,共通点(1)として認定した「小さな突条」は,何に対して小さいのか示されていないが,少なくとも天板よりも小さいということであれば,共通点(1)〜(3)は,いずれも引用意匠に特有のものではなく,本件意匠登録出願前に公知の意匠に共通するものであり,本願意匠と引用意匠の類否を左右するほど重要なものということはできないとして,この点に関する審決の判断の誤りを主張する。
確かに,審決は,本願意匠と引用意匠とを対比して,共通点(1)として,「両側壁の上端に天板を一体に形成して略倒立コ字状とした,いわゆる門型側溝ブロックであって,その天板の中央部に全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋体嵌入開口部を設け,天板上面の一方の側縁に沿って,小さな突条を設けている点」(審決謄本1頁[共通点](1))を認定したが,上記「小さな突条」については,何に対して小さいのかを限定していない。また,審決が本願意匠と引用意匠の共通点(1)として認定した,「両側壁の上端に天板を一体に形成して略倒立コ字状とした,いわゆる門型側溝ブロックであって,その天板の中央部に全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋体嵌入開口部を設け,天板上面の一方の側縁に沿って,小さな突条を設けている点」(審決謄本1頁[共通点](1))は,甲5意匠,甲11意匠及び甲15意匠にも共通し,共通点(2)として認定した,「両側壁の上方部について,内側を傾斜状に僅かに張り出し,外側を下方垂直面より傾斜面を介して内側よりも多く張り出すよう肉厚に形成している点」(同2頁[共通点](2))は,甲4意匠,甲5意匠,甲10意匠,甲11意匠及び甲13意匠にも共通し,共通点(3)として認定した,「突条部について,天板上面の一方の側縁から,側壁上端を上方に延設し立ち上がらせて形成したもので,当該突条部の断面を天板側が僅かな斜状の略台形状としている点」(同(3))は,甲10意匠にも共通していることが認められる。
しかしながら,審決の説示に照らすと,審決は,共通点(1)における「小さな突条」については,基本となる両側壁及び天板から構成される本体を立体物として形態全体から見た場合に,突条の大きさを「小さい」と認定したものであると理解するのが相当である。また,審決が本願意匠と引用意匠の共通点として認定した上記共通点(1)〜(3)が公知の形態であったとしても,意匠の類否判断は,意匠に係る物品の外観の全体にわたって,その形態を観察する全体的,視覚的な判断であるから,当該意匠を全体的に観察した場合に,それが意匠全体の支配的部分を占め,意匠としてのまとまりを形成し,看者の注意をひくときは,なお当該公知の部分は意匠上の要部となり得るものといわなければならない。
そこで,この見地から,本願意匠と引用意匠を見ると,両意匠は,意匠に係る物品である側溝用ブロックの形態上,カルバート(筒)型(甲8意匠),U字型(乙1公報の【図11】記載の意匠),門型(逆U字型)(乙1公報の【図12】記載の意匠)のうち,いずれも門型に属し,さらに,門型の中においても,一般に,上面蓋体開口部の態様(乙2〜5),上面突条部の態様(甲12意匠及び甲14意匠),側壁外面の態様(甲9意匠,甲11意匠及び甲15意匠),側壁の厚みの態様(乙6〜8)等にそれぞれ異なるものが見受けられる中で,共通点(1)〜(3)を共通にしているものである。すなわち,両意匠は,上面蓋体開口部の態様が,全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状とした蓋体開口部を天板の中央部に設けている点,上面突条部の態様が,天板上面の一方の側縁に沿って,小さな突条を設けている点,側壁外面の態様が,凹凸のない平たん面とした側壁外面である点,さらに,側壁の厚みの態様が,両側壁の上方部を傾斜面を介して肉厚に形成した点において,いずれも共通するものであるから,その全体の基本的構成態様及び具体的構成態様に強い共通性が認められるというべきである。
イ 原告は,共通点(1)〜(3)が共通する,甲4意匠,甲10〜甲14意匠が存在する中で,引用意匠は,これらと非類似であるとして登録されているのであるから,共通点(1)〜(3)が共通するからといって,本願意匠と引用意匠について混同を生じると判断することは,不当であるとも主張し,共通点(1)が,甲5意匠,甲11意匠及び甲15意匠にも共通し,共通点(2)が,甲4意匠,甲5意匠,甲10意匠,甲11意匠及び甲13意匠にも共通し,共通点(3)が,甲10意匠にも共通していることは上記のとおりである。
しかしながら,甲4意匠及び甲12〜甲14意匠は,共通点(1)の「天板の中央部に全長の約2分の1の長さを有し,天板幅よりやや幅狭とする長方形状の蓋体嵌入開口部を設け」との形態を満たしておらず,また,甲12意匠は,側壁に匹敵するような極端に長い突条を有しているから,共通点(1)の「小さな突条を設けている点」を満たしていない。さらに,甲4意匠は,蓋体嵌入開口部及び平板状脚部等,甲10意匠,甲11意匠,甲13意匠及び甲14意匠は,突条部及び側壁外面,甲12意匠は,突条部等が,それぞれ本願意匠の形態と大きく異なるものである。したがって,その類否判断もおのずから異なることは当然というべきであり,引用意匠が登録されたことを理由に,本願意匠と引用意匠について混同を生じると判断することが不当であるということはできない。
(2) 本願意匠と引用意匠の差異点の認定判断の誤りについて ア 差異点(ア)の認定判断の誤りについて (ア) 原告は,本願意匠の正面図によれば,両側壁下方に対する両側壁上方の張り出し量は,左側が右側の2倍程度であり,この2倍程度の視覚的に目立つ張り出しの差を,「やや厚い」とすることは誤りであり,差異点(ア)において,「本願の意匠(注,本願意匠)は,左の方が右よりやや厚い」(審決謄本2頁[差異点](ア))とした審決の認定は誤りであると主張する。
確かに,本願意匠の正面図によれば,両側壁下方に対する両側壁上方の張り出し量は,左側が右側の2倍程度であることが認められる。しかしながら,上記張り出し部分は,分離独立しているわけではないから,当該部位を見た場合,下方の垂直状の側壁から張り出した部分のみを取り出して視認するよりは,下方側壁の厚みに張り出し部分を含め両側壁上方全体の厚みとして視認するというべきであり,そうとすれば,両側壁上方全体の最大幅,すなわち,本願意匠のA-A′断面図において,蓋体底部を受ける面の位置において左右幅の比は約8対6であると認められる。したがって,「本願意匠は,左の方が右よりやや厚い」とした審決の認定を誤りということはできない。
(イ) 原告は,引用意匠は,先願意匠である甲4意匠及び甲10〜甲14意匠に対して,非類似であると判断されたものというべきであるから,差異点(ア)が「格別目新しい態様といえるものでもない」としても,引用意匠との類否においては,看者の注意を格別ひくものであると判断されるべきであると主張する。
しかしながら,本願意匠及び引用意匠は,いずれも意匠に係る物品を「側溝用ブロック」とするものであり,その取引者,需要者は,原告の主張するとおり,側溝用ブロックを購入あるいは購入の指示を行う側溝の設計者,施工業者などであると認められるところ,側溝用ブロックは,車道と歩道等の境界を成し,道路上の雨水や流雪等を蓋体開口部より導いて下水として処理するための道路用品であり,土壌の中に埋め込んで使用するものであって,使用状態では側溝用ブロック上面部が露出すること等を考慮すれば,その端面形状は注目される部位の一つではあるとしても,端面に正対してこれを熟視することはさほど多いとは考えられず,むしろ,やや離れて上方から斜視的に見た外観が重視されるものというべきである。したがって,本願意匠と引用意匠の場合のように,横長の箱体状の側溝用ブロックの一部分である端面の左右側壁の幅の極端でない差異の視覚的効果は,全体から見て小さいといわざるを得ず,看者の注意を格別ひくものであるということはできない。したがって,原告の上記主張は採用することができない。
イ 差異点(イ)の認定判断の誤りについて (ア) 原告は,本願意匠における突条部の幅は,物品全体の幅の2/10(20%)程度を占めるのに対し,引用意匠における突条部の幅は,物品全体の幅の1/20(5%)程度にしかすぎず,本願意匠における突条部の高さは,物品全体の高さの1/10(10%)程度であるのに対し,引用意匠における突条部の高さは,本体部分の高さの1/20(5%)以下と本願意匠の半分以下にとどまり,本願意匠における突条部の比率と,引用意匠における突条部の比率との差は,引用意匠の全体を見たときに,突条部がほとんど目立たないという印象を与えるのに対し,本願意匠の全体を見たときには,突条部が目立つという印象を与えるものであるのに,審決はこの差異点を看過したものであり,また,双方の意匠の平面図において,開口が一方に片寄っているか,中央にあるかの差として表れるから,開口の片寄りの程度がわずかなものであるとした審決の認定も誤りであると主張する。
しかしながら,側溝用ブロックは,上記のとおり,土壌の中に埋め込んで使用するものであって,使用状態では側溝用ブロック上面部が露出すること,その取引者,需要者において,端面に正対してこれを熟視することはさほど多いとは考えられず,むしろ,やや離れて上方から斜視的に見た外観が重視されるものというべきであることは上記のとおりである。そうすると,設置状態(埋設した状態)において,地表に表れるのは,天板の上面と突条部であることから,突条部の幅及び高さを,直ちに全体の高さと比較するのは相当でなく,やや離れて上方から斜視的に見た外観における,視野中の近接した天板の幅と比較するのが相当であり,この場合,本願意匠と引用意匠の突条部の高さには,ほとんど差は認められない。一方,突条部の幅について,本願意匠と引用意匠との差異は認められるが,この差異について,審決は,「本願意匠は,幅より高さが低く,引用意匠は,幅より高さが高い」(審決謄本2頁[差異点](イ))とし,具体的に数値で差を挙げていないものの,幅と高さの相対的態様として認定しているから,審決に原告が主張する差異点の看過はない。また,双方の意匠の平面図において,開口が一方に片寄っているか,中央にあるかの差として表れるとしても,開口の片寄りの程度がわずかなものであることは明らかであるから,この点についても,審決に原告が主張する認定の誤りがあるということはできない。
(イ) 原告は,本願意匠の突条部の形状は,幅と高さの比率がほぼ3対2と,明確に幅より高さが低いと分かる比率になっているのに対し,引用意匠の突条部は,幅と高さの比率がほぼ1対2と,明確に幅より高さが高いと分かる比率になっていると主張するが,審決は,この点について,「本願意匠は,幅より高さが低く,引用意匠は,幅より高さが高い」(審決謄本2頁[差異点](イ))と認定していることは上記のとおりであるところ,意匠の認定は,一般的に肉眼視をもってするものであるから,各部の構成要素を厳密に数値を用いて認定しなければならないものではなく,審決の上記認定に誤りはない。
(ウ) さらに,原告は,本願意匠における突条部の形状は,いわゆる門型の側溝用ブロックの一方の縁に,止水又は土留めのための十分な高さ,参考図に図示する車両が乗り越えられる程度の高さ及びそのときの加重に耐えられる断面積を確保するという要求を満足するようにデザインされたものであり,上記比率にすることにより,当業者に対して,突条部の高さが高すぎず,低すぎず,さらに,十分な強度を備えたものであるという印象を与えるデザインとなっているのに対し,引用意匠の突条部は,非常に小さく,ある程度の止水としては機能するかもしれないが,土留めとして機能することは考えられず,また,車両が乗り越える加重に耐えられると感じさせるようなデザインであるとはいえず,また,側壁から完全に外れた位置にあり,構造的に弱い印象を与え,この突条部の形状の差は,当業者が,本願意匠に係る物品の具体的な用途の差として明確に看取できると主張する。
しかしながら,本願意匠に係る物品である側溝用ブロックにおいて幅より高さの方が低い突条部は,本件意匠登録出願前に公知の意匠である甲7意匠及び甲8意匠にも見られるものである上,本願意匠と引用意匠の突条部の高さにほとんど差は認められないことは上記のとおりであり,その用途及び機能に差異があるとは認め難く,仮に差異があったとしても,それは基本的構成態様及び具体的構成態様を共通する中での強度等の要請に基づくわずかなものにすぎないから,両意匠の類否判断を左右するほどのものではないというべきである。
(エ) 原告は,「高齢者,身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」,甲16ガイドライン及び甲17ホームページを引用して,本願意匠に係る物品である側溝用ブロックにおいて,取引者,需要者が,段差の大きさ及び形状に注目しないわけがないとも主張する。しかしながら,本願意匠と引用意匠は,共に突条部を有し,これが段差を形成するものであるところ,両意匠とも,当該段差の大きさ,すなわち,突条部の絶対的な大きさを,長さの単位をもって規定するものではないから,原告の上記主張は,上記判断を左右するものではない。
ウ 差異点(ウ)の判断の誤りについて 原告は,底板は引用意匠の外観として目立つ部分の一つであり,また,流通過程において,本願意匠の物品は底板が隠れてしまうものではないから,外観の特徴として目立つものであり,引用意匠は,「細幅長方形状の底板」が占める比率は,突条部よりもはるかに大きいから,底板について,「視覚的には格別看者の注意を惹くほどのものとは認められず」ということはできず,また,本願意匠と引用意匠とを比較する場合において,「この底板の有無の差異は,意匠上高く評価することができないから,微弱な差異というほかない」ということもできないと主張する。
しかしながら,本件意匠登録出願前公知の意匠である乙13意匠は,引用意匠と同様に底部左右端部に細幅の底板を有しており,「細幅長方形状の底板」は,引用意匠独自の態様であるとはいえず,また,甲4意匠,甲9〜甲14意匠及び乙2〜10によれば,本願意匠のように底板のない態様は,周知であることが認められることからすると,両意匠共にありふれた態様の中での差異にすぎないものである。加えて,側溝用ブロックは,土壌の中に埋め込んで使用するものであり,使用状態では側溝用ブロック上面部が露出すること,やや離れて上方から斜視的に見た外観が重視されるものというべきであることは上記のとおりであるから,意匠全体として見た場合には,格別看者の注意をひくほどのものとはいえず,全体観察による類否判断に与える影響は,小さいものといわざるを得ない。
したがって,差異点(ウ)について,「両側壁の下端両端部の態様の差異について,引用の意匠(注,引用意匠)のみが,細幅長方形状の底板を有しているが,その底板の底部全体に占める割合が小さいものであるから,視覚的には格別看者の注意を惹くほどのものとは認められず,また,本願の意匠(注,本願意匠)のように底板を有していないものの方がよりありふれた態様であることを考慮すると,この底板の有無の差異は,意匠上高く評価することができないから,微弱な差異というほかない」(審決謄本3頁第1段落)とした審決の判断に誤りはない。
エ 差異点(エ)の判断の誤りについて 原告は,引用意匠において,両側壁部の高さは,物品の高さの95%以上を占め,本願意匠において,両側壁部の高さは,物品の高さの90%以下ではあるが,その多くを占め,引用意匠の正面図及び背面図においては,コンクリートの平面あるいは壁という印象が主体であるのに対し,本願意匠では,右側面図及び左側面図に図示するように,側壁の中央やや上部に水平方向に走る大きな帯が見えており,コンクリートの平面あるいは単なる壁という印象は発生しないから,この差異点(エ)だけに注目したとしても,本願意匠と引用意匠とは美感を異にすると主張する。
しかしながら,乙14カタログ,乙15公報の【図4】,【図9】及び【図14】並びに乙16意匠とその類似8号の乙17意匠によれば,本件意匠登録出願前に,側溝用ブロックの意匠において,両側壁の高さについては,設置場所などに応じて適宜変更することが普通に行われているところであると認められるから,その構成部分中の両側壁の高さを単に変更したとしても,それは同一デザインにおけるバリエーションの範囲にすぎないというべきところ,本願意匠と引用意匠の側壁部の高さは,いずれも必要に応じて適宜される変更の範囲内にあるものと認められる。また,原告主張の本願意匠の側壁の中央やや上部に水平方向に走る大きな帯は,側壁上方の傾斜が開始する線と天板を支持する面の側縁が左右側面図に表れたにすぎず,しかも,使用状態では天板により見えない部分であるから,いずれも,類否判断に及ぼす影響は微弱なものというべきである。
したがって,差異点(エ)について,「両側壁部の高さ(深さ)についての差異は,この種物品分野の意匠においては,その高さ(深さ)を適宜変更することは常套手段であり,本願の意匠の態様もその範囲内に属する」(審決謄本3頁第1段落)とした審決の判断に誤りはない。
(3) 以上を前提に,本願意匠と引用意匠の類否について検討すると,本願意匠と引用意匠は,意匠に係る物品が共通し,その形態も,共通点(1)〜(3)を共通にするものであって,その全体の基本的構成態様及び具体的構成態様に強い共通性が認められるところ,差異点については,いずれも,意匠の要部とはいえない小さい部分における差異であって,共通する基本的構成態様及び具体的構成態様をしのぐものではなく,両意匠の構成を全体的に観察するときは,看者に異なる美感ないし美的印象を与えるものではないから,両意匠は類似の意匠と認めるべきであり,これと同旨をいう審決の判断に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。
2 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。
裁判長裁判官 篠原勝美
裁判官 岡本岳
裁判官 早田尚貴
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